ネットの話題
偶然見つけた〝ハートの桜〟 桜守が語る「剪定しているのは…」
「ハートに〝ヒビ〟が入らないように」

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「ハートに〝ヒビ〟が入らないように」
桜の名所として毎年大勢の人が訪れる青森・弘前公園。その中に、SNSで例年話題になる「ハートの桜」があります。今年も見ごろを迎え、多くの人たちがカメラを向けています。そもそもハートの桜はいつから見られたのでしょうか。桜の手入れをしている「桜守」に誕生のきっかけを聞きました。大型連休(GW)の見どころも紹介します。(朝日新聞青森総局・野田佑介)
弘前はこの冬、これまでで最も多い160センチの雪が積もりました。弘前市によると、大雪の影響で園内にある松の木が50本ほど折れてしまったそうです。
桜の木にも影響がありました。松の下敷きになった2本は切らざるを得なくなり、他に1本が積もった雪の重みで幹から折れてしまいました。
園内には52種類およそ2600本の桜の木があります。そのうちソメイヨシノは約1700本。弘前市公園緑地課の職員で、桜の世話を担当する「桜守」の橋場真紀子さんは「心配しましたが、影響が少なくてほっとしました」と胸をなで下ろしました。
ハートの桜も、昨年と変わらず空にハートマークを描いていました。昼と夜で全く違った表情を見せてくれます。
昨年も撮影に行った記者としては、夜のほうがおすすめ。ライトアップされた桜が幻想的で、ハートがくっきりと浮かび上がるからです。
ところで、このハートはどうやってできているのでしょうか。気になった記者は橋場さんに話を聞きました。
手間ひまをかけてハートの形を作り出したのだろうと思いきや、「実は偶然見つけたんです」。
橋場さんがハートを見つけたのは、2015年の夏のことでした。
当時、全国各地に残る城の石垣で「ハート形」が見つかって話題になっていたことから、橋場さんの上司が「ここにもハートの何かないかな~」と話していたそうです。
弘前公園には弘前城があり、今でも天守が残っています。同じ城のつながりから、公園の売りになるような、「ハートの何か」を探していたのでした。
そのとき、橋場さんが見つけたのが2本のソメイヨシノの木が寄り添い、枝が重なり合ったすき間にできたハートマークでした。
「これならいける!」。橋場さんは胸を躍らせました。
それまでにもハートの桜をいくつか見つけていましたが、上司から合格点は得られませんでした。
「右から見ても左から見ても、背の高い人が見ても低い人が見てもハートの形に見えないといけない」。そう思って探し続け、ようやく見つけたのがこの桜なのです。
驚いたのはハートの作り方でした。
「自然の形を大切にしたかったので、剪定(せんてい)はほとんどしていません」と橋場さん。
そのなかでも剪定するとしたら、ハート部分の真ん中に伸びてきた枝だそうです。
「ハートに〝ヒビ〟が入ったように見えてしまうのはよくないので」
剪定は年に2回、夏と冬に行いますが、切る枝はそれぞれ2~3本ほどだそうです。ハートの桜は、自然が作り出した「偶然の産物」でした。
大勢の人たちがハートの桜を眺めている光景を見ると、橋場さん自身も「幸せな気持ちになる」と言います。
ハートを作り出す2本の桜は樹齢が80年を超えているそうですが、「ハートの桜は(七つの見どころの)『弘前桜七景』の一つ。少しでも長く楽しんでもらえるように手入れを続けていきたいです」と力を込めました。
園内のソメイヨシノは4月23日に満開を迎えました。「ハートはこれから、もっとふっくらした感じになってきますよ」
橋場さんによると、28日ごろまではハートの桜が見られるそうです。
ただ、場所は「秘密」。橋場さんはその理由を「公園のいろいろな場所を歩いて、お気に入りの桜のスポットを探してほしい」からだと話してくれました。
花吹雪や、散った桜の花びらが堀の水面を覆う「花いかだ」は26~30日ごろが見ごろです。
ソメイヨシノに続いて咲き始める八重紅枝垂(やえべにしだれ)や弘前雪明かりなどの「弘前七桜」は26日以降に満開になる予報で、最も遅咲きの桜だとGWが終わった後も楽しめるそうです。
弘前公園では5月5日まで、「弘前さくらまつり」が開催されていて、日没から午後10時まで桜のライトアップが行われています。
橋場さんによると、桜が散ってもハートマークは見られるそう。「夏、秋、冬と、春とは違ったハートが見られます」
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