お金と仕事
漠然とした〝子育て〟を「強みに」…専業主婦、先を見据える資格取得
自信を持って「子育てをしてきた」と言いたい。

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自信を持って「子育てをしてきた」と言いたい。
「『専業主婦の期間は充実していた』と自分にも言い聞かせたい気持ちもありました」
専業主婦になり、家族の転勤に帯同して数年。ようやく「転勤が落ち着いてきた」頃に、我が身を振り返ると――。そんなときにヒヤッとしないように、できる範囲での「準備」を進めている女性に話を聞きました。
現在34歳の女性は、2016年に夫と結婚をした後、妊娠を機にコスメ商品を販売する会社を退職しました。
「商品や一緒に働いている人が好きだった」と仕事への思いを振り返りますが、当時の勤め先が夫の勤務先とは離れていたことから、「とりあえずは子育てに専念して、落ち着いてから次のことを考えてもいいのかな」と、専業主婦になることを決めました。
「退職時は、『同じような職種での復帰をしたいな』と考えていましたが、実際は難しかった」
第1子が生まれたのは、夫の転勤先。知らない土地で、夫婦二人での子育ては思った以上に大変だったといいます。
「知り合いもいないし、冬は雪がすごく、夏はとても暑い土地柄。外に出るにも出られない気候で、いま思えばそれで良かったかどうかはわからないけど、家の中で子どもにつきっきりの日々でした」
その後、2歳違いで下の子がうまれましたが、その頃から「ちょっとずつなにかやりたい」という気持ちがふつふつとわいてきたといいます。
「一人目の育児のときには、せっかく転勤先に帯同できているのだから、好きなことをして、育児を楽しもうと考えていました」という女性。
一人目の幼稚園生活が軌道に乗り、二人目の幼稚園入園も間近に迫ってきた頃に「育児以外の場所がほしい」ということと、「育児をする中で得てきた、子どもの食生活や健康に関する知見を、家族以外にも知ってもらいたい」という気持ちが高まっていったといいます。
それに加え、「育児中やってきたことが『片付け』だった」と気付いた女性は、それをかたちあるものにしようと「整理収納アドバイザー」の資格も取得しました。
それらの知見を発信するため、女性はインスタグラムを始めました「インフルエンサーとしての収入を得ようということはそのときは考えていなくて、『誰かの役に立てたら』という気持ちでした」
その頃、「整理収納アドバイザーの資格を持っていれば、インスタで発信する以外にも、仕事にもつなげられるのでは?」と、就労の意欲が高まっていた女性でしたが、このタイミングで夫の転勤が重なってしまいました。
当時女性が住んでいた自治体の幼稚園では、子どもが3歳になる年度からの入園が可能で、下の子の入園準備も整っていました。ところが、転勤先で希望した幼稚園の入園は4月時点で3歳を迎えていないと入園できませんでした。そのため、自宅保育の期間が1年延びてしまったのです。
「一気にモチベーションが崩れてしまいました。転勤先では、また一から生活を整えなくてはならず、子どもたちも環境変化から熱を出しがちでした」
それでもインスタでの発信は続けようと踏ん張った女性。収入とまではいえないものの、インスタグラムを通じ、企業からのPR案件などの話があるなど、「居場所にはなったかな」。
これまでの専業主婦期間は10年弱。「今思うと、あっという間でした」。
ただ、周りを見てみると、「バリバリ働いている同世代」ばかりが目立ちます。専業主婦の数も年々減っている時代、「一人だけ取り残されている感覚」がぬぐえないといいます。
でも、「この10年なにをやってきた?」と聞かれた時には、自信を持って「子育てをしてきた」と言いたい。
そんなときに、女性は「子育て」だけでは漠然としてしまうものを、形に示して「強みにしたい」と考えたといいます。
「子育てをしてきたからこそ、『家を整える』ということを自分はしっかりしてきたと強く主張するため、そして『下に見られないため』の資格でもありました」。整理収納アドバイザーの資格や、勉強した内容はどこに行っても生かすことができ、仕事につなげることもできると考えます。「『専業主婦の期間は充実していた』と自分にも言い聞かせたい気持ちもありました」
現在は、転勤先での生活も落ち着き、「どのタイミングでもっと積極的にやっていこうか迷っているところ」という女性。ただ、夫の仕事内容を鑑みると、子どもの突然の体調不良に対応するのはいまは難しそうだと判断したといいます。
夫婦間の話し合いの結果、「いますぐには外に働きに行くのは無理かも知れないけど、いつでも働けるように準備だけはしっかりしておこう」という結論が出ているといいます。
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