健康ブームを背景に、コンビニやスーパーで見かける機会が多くなった無糖炭酸水。砂糖を含む清涼飲料水を飲むよりもカロリーを低く抑えられるなど、ダイエット効果もあると言えますが、炭酸には飲みすぎると「骨が溶ける」といった言説もあります。無糖炭酸水の健康への影響を考えます。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
6月、マーケティング会社の富士経済が最新の市場調査結果「2024年 清涼飲料マーケティング要覧」を発表。その中には近年、健康志向で低カロリーなドリンクが選ばれるようになったことを背景に、普及の進む「無糖炭酸水」についての項目もありました。
この調査は「ウィルキンソン」(アサヒ飲料)や「伊賀の天然水強炭酸水」(日本サンガリア)などの無糖炭酸飲料と、「サントリー天然水」(サントリー食品インターナショナル)などの炭酸入り国産ミネラルウォーター類を対象としたもの。
もともとはアルコールの割り材として市場が形成されましたが、「2010年以降に飲用需要が定着し、消費者の甘さ離れなどもあって順調に拡大してきた」と分析されています。
この調査では、2023年は「猛暑の影響で飲用需要が高まった」「人流回復で業務用の割り材需要が高まった」こと、また、値上げの影響もあり市場は前年比7.2%増の1513億円となりました。
2024年は引き続き安価な商品の需要が伸び、前年比1.5%増の1536億円が見込まれるということです。近年は右肩上がりで市場規模の拡大が続いています。
ただし、消費者の甘さ離れには揺り戻しもみられ、一部では有糖飲料を選ぶ消費者も現れているとして、「今後、メーカーは有糖と無糖のバランスを考慮した商品展開が必要になるとみられる」と予想されています。
では、無糖炭酸水は健康に良いのでしょうか。例えばダイエットに取り組む人にとっては、水分補給のつもりで砂糖を含む清涼飲料水を飲みすぎるよりは、目的に適い、健康に良いと言えるでしょう。
炭酸で物理的に胃が膨れることで、食べすぎなくて済むようになることを、無糖炭酸水を選ぶ理由にする人もいます。
一方、炭酸には「飲むと骨が溶ける」という言説も古くからあります。聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
骨や歯の主成分であるリン酸カルシウムが、酸に溶ける性質を持っているのは事実です。そして、炭酸は弱酸です。したがって、骨や歯を長時間、炭酸を含んだ液体に漬けておくと、カルシウムやマグネシウムが溶け出します。
しかし、炭酸を含んだ飲み物が、人間の体内で骨に直接、触れることはありません。口に含んだときも、普通の飲み方をしていれば、口の中をすぐに通り過ぎてしまい、歯に触れている時間は長くないでしょう。残った炭酸も、唾液により希釈、中和されます。
そのため、「普通の飲み方をしていれば大丈夫」だと考えられます。ただし、気をつけなければいけないこともあります。それが、一部の清涼飲料水に含まれるリン酸です。
このうちリンは多く摂りすぎるとカルシウムの吸収を阻害することがわかっています。つまり、直接的に溶けることはなくても、骨が弱くなることは起こり得るというわけです。
とはいえ、これも飲みすぎなければ問題にはなりません。どこまでも「普通の飲み方をしていれば大丈夫」に尽きると言えそうです。