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お笑い×農業で新しいネタ 「ひとつに絞らず正解」農家を継いだ芸人
世田谷区で農業 芸人のハヤブサマンさん
都内で江戸時代から続くという家業を継ぎながら、「農家芸人」としても活動するお笑い芸人・ハヤブサマンさん。「野菜」と「農業」をかけたネタもあるそうで…。どんな日々なのか、話を聞いてみました。(ライター・安倍季実子)
「農家になるからといって、芸人を諦める必要はないと思っていました」
そう話すハヤブサマンさんは芸歴5年目。世田谷区で江戸時代から続く農家「池田農園」に生まれました。
いわゆる都市農園で多品種少量栽培制を採用し、年間で約50種類の野菜を育てています。
「安全で安心して食べられる野菜を作るためというのはもちろんですが、味にも違いが出るような気がするので、農薬は必要な分だけ使うようにしています」と話します。
「キャベツの時期になるとモンシロチョウがたくさん集まるので、父と二人で虫取り網を持って追いかけ回っていますが、決して遊んでいるわけではありませんよ(笑)」
一人っ子ということもあり、中学生のときに農家を継ぐと決め、東京農業大学へ進学したハヤブサマンさん。お笑いを目指したのは、高校時代です。
「高校の文化祭で友人とコンビを組んで漫才をしたことをきっかけに、芸人に興味を持ちました。農家になっても芸人を諦める必要はないと思って、両親の許可をもらった上で、大学卒業後にNSCへ入学しました」
現在はSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ内のお笑い芸人プロジェクト)に所属しています。芸歴も農家歴も5年目を迎え、昼間は農家として野菜を育て、夜は芸人としてライブに出ています。
「農家は朝が早く、芸人は夜が遅いので、生活サイクルに関してはツライこともあります(苦笑)。でも、どちらも楽しいですし、どちらかひとつに絞らずに正解でした」
季節によっても違いがありますが、夏ごろは7時ぐらいに起きて畑の野菜を収穫し、「ファーマーズマーケット 二子玉川」に出荷。その後、無人販売分の野菜を準備します。
「午後は日差しが落ち着いてから農作業を再開しますが、『百姓は100の作業をする』といわれているように、水やり、種まき、苗植えなど、作業内容は日によってバラバラです。ライブがない日は日が暮れるまで、いろいろな作業をします」
ライブが入っている日は、午後からライブハウスへ向かいます。お父さんと二人で協力しながら畑仕事をしているため、農家と芸人がうまく両立できているそうです。
「出荷するのは、その日の朝にとれたばかりの新鮮な野菜です。無人販売の方では、形がそろっていないものをセットにして販売しているので、見た目にこだわらない人にはお得だと思います」
野菜を並べているとお客さんと出くわすことも。そのときは、だいたいお礼を言われるのだそう。
「一般的なお店では、店員がお客さんにお礼を言うのが普通ですが、うちの場合はお客さんの方からお礼を言われます。『いつも、おいしい野菜をありがとう』とか『安くておいしいです』とか。芸人としてライブに出ているときも思うのですが、お客さんの反応を直接受けられるのはサイコーです!」と話します。
農業でも芸人でも、やりがいを感じているハヤブサマンさんですが、つい最近、お父さんから「あと4年で売れなかったら、家の仕事に腰を据えてほしい」と告げられたそうです。
「父は高齢ですし、僕自身も家業を継ぐつもりだったので、いつかやって来る話が今来ただけなのですが……。つい最近コンビを解消してピン芸人になったばかりですし、お笑い芸人としてやりたいこともまだまだあるので、内心めちゃくちゃ焦ってます」
目指すのは、芸人として売れること、お笑いを通して農業を多くの人に知ってもらうこと――。
「もともとは東京にも畑がたくさんありましたが、都市化に伴って税制も変わり、仕方なく畑を手放す農家が増えました」
「今、全国的に一次産業を守ろうという動きもありますし、都市農家の継続を図る制度(都市農業振興基本法)も整備されています。でも、それだけでは高度経済成長期に受けた負担を拭えないほど、農家は弱くなってしまいました。23区内で専業農家としてやっていくのは、かなりハードルが高いんです」
このままだと、23区内で農家がなくなってしまうかもしれない。それを止めるためにも、芸人として笑いだけじゃなく、都市農家の置かれた状況などを発信したいと考えています。
「コンビを解消したばかりなので、今後の事はまだきちんと決まっていませんが、相方探しと並行しながら、今月開催される『第1回野菜-1グランプリ』にピンで出る予定です。野菜にまつわるネタなら漫才でもコントでも何でも大丈夫という大会なので、ここで優勝しなきゃと思ってます」
今は、大会に向けて野菜ネタ・農業ネタを考え中。
「これまでは、月に10本ぐらいのライブに出ていましたが、これからの4年はとにかくガムシャラにやっていこうと思います。そして、芸人としての知名度を高めながら、少しでも農業に興味を持つ人を増やしていけたらいいなと思います」
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