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#4 水の事故を防ぐ

「イカポンチョ」はイカが? 「イカ泳ぎ」を広める救助のプロが開発

SNSに投稿された動画は100万回近く再生されています

ウェットスーツ生地の「イカポンチョ」
ウェットスーツ生地の「イカポンチョ」 出典: 公益社団法人日本水難救済会提供

目次

浮力があって日焼けも防げる。海難救助のプロたちが開発した、ウェットスーツ生地の「イカポンチョ」がSNSで話題になりました。イカポンチョを着て海で泳ぐ動画は、SNSで100万回近く再生されています。ユニークなグッズを作った背景を聞きました。

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ウェットスーツ素材で作った遊泳補助具

イカポンチョを作ったのは、海難救助や洋上救急に取り組む公益社団法人・日本水難救済会(水救会)です。

X(旧Twitter)にイカポンチョを着て泳ぐ動画を投稿すると、「ちゃめっけあふれるデザイン」「イカしてます!」「ほしい」「どこで買えますか?!」といったコメントが寄せられ、注目を集めました。

イカポンチョはウェットスーツの素材で作った遊泳補助具で、大中小の3種類があります。「ほしい」という声もありましたが、今のところ商品化の予定はないそうです。

では、なぜこんなユニークなグッズを作ったのでしょうか?

命を守る「イカ泳ぎ」とは

動画で泳いでいた「イカ親父」こと水救会の常務理事・江口圭三さんは、「子ども向けの講習会で、『イカ泳ぎ』を広めるため」と話します。

「イカ泳ぎ」の正式名称は「エレメンタリー・バックストローク」。おなかを上にしてあごを引き、手足をゆっくりあおって泳ぎます。水難事故での被害防止のため、水救会が勧める新たな手段です。

「イカ泳ぎ」(エレメンタリー・バックストローク)の説明
「イカ泳ぎ」(エレメンタリー・バックストローク)の説明 出典:公益社団法人日本水難救済会【公式】のXより

海や川、プールで溺れそうになったときや流されたとき、これまでは大の字で背浮きをして、救助が来るまで「浮いて待て」とする方法が推奨されてきました。

しかし、水救会などによる実証実験では、「大の字背浮き」の場合、波風のある状況では水が顔にかかって呼吸困難になるという結果が出ました。また、助けを求めようと大声を出すと水を飲みこんでしまったり、肺から空気が出て沈んでしまったりするリスクが分かったそうです。

一方、「イカ泳ぎ」のメリットは、顔を上げていられるため呼吸をしやすい▽声を出したり、片手を振ったりして助けを求められる▽着衣でもライフジャケットを着けていても負担が少ない▽疲れにくい▽習得しやすいーーといったことが上げられるといいます。

「海は怖いけれど、楽しい」

水救会は「イカ泳ぎ」を知ってもらうために、小学校や幼稚園などで子どもたちに向けた講習会を開いています。

「イカ泳ぎ」に興味を持ってもらうためにはどうしたらいいのか。江口さんたちは当初、イカの着ぐるみやマントを考えたそうです。

しかし、着ぐるみでは水に入れないため断念。マントにしようかと考えていたところ、より子どもたちに受け入れてもらえるようなインパクトを重視してポンチョにしたといいます。

イカポンチョは「イカ泳ぎ」に最適な浮力をもち、フードをかぶれば日光も防げます。胴体部分の素材は厚めになっており、腕は薄めに作られています。

筆者も大きいサイズを着させてもらいましたが、およそ1.5キロと想像よりも重くしっかりしていて、フードをかぶると顔周りがほとんど隠れました。

「イカ泳ぎ」を知ってもらうために作られた「イカポンチョ」
「イカ泳ぎ」を知ってもらうために作られた「イカポンチョ」

江口さんが実際に着て学校で披露すると、子どもたちからはクスッと笑いが起きるそうです。

現時点で販売予定はありません。水救会理事長の遠山純司さんは 「イカポンチョが子どもたちにイカ泳ぎを知ってもらうきっかけになれば」と話します。

海や川へ行くことが多いシーズン。イカ泳ぎは万能ではなく、あくまでも万が一の事態に対応するための手段です。

水救会は事前の備えが重要だとして、「天気予報のチェック」や「十分な睡眠と体調維持」「海の危険を理解する」ことなどを発信しています。

遠山さんは、「備えた上で安全に楽しんでほしい」と話しています。

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