ネットの話題
「もう、そうめんにしか見えない」 一日で散ってしまう花が話題
夜に咲き始めて、1日で散ってしまうーー。そんな珍しい熱帯植物がSNSで話題になっています。注目されたのはその見た目。完全に「そうめん」なのです。この花の正体を聞きました。
《一日で散ってしまう素麺のような花が姿を見せました》
大温室にある「パナマソウ」の開花を知らせる投稿でした。
その画像には、白くて細長い糸のようなものが、波打ちながら、固まっています。
この投稿には「これがお花…!?」「ゆでるのに失敗したそうめんみたい」「珍しいお花なのに、もうそうめんにしか見えない」「めんつゆと薬味持ってきて!」とコメントが付き、画像は110万件以上表示されました。
16時過ぎの #パナマソウ の様子です!
— 神代植物公園 ニュース (@ParksJindai) July 10, 2024
一日で散ってしまう素麺のような花が姿を見せました。
Flowers look like somen noodles! (広報係) #神代植物公園 #温室 #JindaiBotanicalGardens
▽Carludovica palmata https://t.co/NQg4o2ucVd pic.twitter.com/1OIlrH1CIR
神代植物公園に話を聞きました。
まず気になるこの「そうめん」のようなもの。一体なんなのでしょうか。
「糸状のものは(花粉をつくらない)不稔のおしべです」
おしべの1本の長さは約20センチもあるそうです。
花粉をつくらないとなると、どのように受粉するのか、なぜあんな形になったのか、謎は深まりますが、「開花時に強い香りを出して、昆虫を誘い受粉をさせていることは知られています」「ただ、それだけの役割ではないと考えられるため、より詳しく不稔のおしべについて調べましたが、明確な情報が記載されている資料が見つかりませんでした」とのこと。
「パナマソウ」の様子は、Xで、7月10日から次々と発信されました。
同日午前9時ごろには、苞(ほう=葉が変化したもので花を保護したり花びらの代わりをするなどの役割がある)が少しずつはがれ始めました。
同日午後3時には苞の中におしべがだいぶ見えてきました。
そして午後4時ごろに、片面側の苞が完全にはがれて、「そうめん」のようなおしべが姿を現しました。
開花すると、糸状の不稔のおしべは徐々にほぐれて、垂れ下がるそうです。「撮影した時にも、フルーティーでしつこくない、さわやかな良い香りがしました」
夜にほぐれて、翌朝には落ちてしまうそうです。
投稿は続きます。
翌7月11日には、おしべはすっかり伸びて、〝白いそうめん〟は地面に落ちてしまいました。
さらに7月12日の投稿では、「そうめんのように真っ白だったおしべが、まるでソース焼きそばのような色に変化していました」。おしべは茶色く変色。
そうめんから、ソース焼きそばに、めまぐるしい変化を遂げたパナマソウは、この後、雌花が少しずつ開花していくそうです。
果実が熟すと表面が裂けて、赤い果肉が現れ、目立つとのこと。
うれしいことに、神代植物公園のパナマソウは、あと4つつぼみが残っています。「ひとつは近日中に開花しそうです。他の3つも、7月中には開花するのではないかと思われます」
パナマソウは聞きなじみがありませんでしたが、「葉はパナマ帽の材料に利用されたりします」と聞いてびっくり。
「パナマ帽」は、実はパナマではなくエクアドルの発祥で、日本では戦前から紳士用の正装として愛されてきて、今でも根強い人気があります。
パナマソウの原産は中央アメリカのボリビアで、神代植物公園には2019年度に「日本新薬株式会社 山科植物資料館」から2株導入されました。
待ちに待って、昨年、初めて開花したそうです。
タイミングが合えば、夜に咲き始める「パナマソウ」のほか、夜に咲き始めて朝にはしぼんでしまう「ゲッカビジン」や「サガリバナ」など、珍しい熱帯の夜の花を、間近で見られるかもしれません。
1/9枚