連載
#172 ○○の世論
国・自治体の少子化対策、世論の評価は?出生率1を割った東京都では
1人の女性が生涯に産むとみられる子どもの数を示す「合計特殊出生率」が昨年、1.20と過去最低になりました。これが発表された10日ほど後の6月15、16日に朝日新聞社が実施した全国世論調査(電話)では、国や自治体の今後の対策で、出生率低下に歯止めがかかることを「期待する」という回答は39%。「期待しない」というほうが57%と多い結果でした。(朝日新聞記者・磯田和昭)
出生率のデータは6月5日に厚生労働省が発表しました。同じ日には、改正子ども・子育て支援法が成立。この法律には、児童手当の所得制限の撤廃のほか、就労要件を問わず保育所を利用できる制度などが盛り込まれています。
最寄り駅から数駅のところの民間施設に子どもを預けにいくなど、子育てには記者も苦労しました。
それだけに、この法律による支援は「自分の子育て期に、こうだったら……」と、正直言ってかなりうらやましいものになっています。
ところが、今回の調査では「国や自治体の今後の対策」で少子化に歯止めがかかることは、「期待しない」という回答のほうが多い結果になりました。
質問の中で、出生率が最低になったと示したことが影響した可能性もあります。いまの少子化は対策でどうにかなるような次元ではない、といった受け止めがあるのかもしれません。
もしかしたら、年代別なら回答傾向に違いがあるのではと思い、見てみました。すると、18~29歳で「期待する」割合がやや低く、「期待しない」という割合が高めなほかは、ほぼ同じ傾向でした。
合計特殊出生率を都道府県別に見ると、最も低いのは東京都で0.99でした。
おりしも東京都では7月7日に投開票される知事選で、少子化対策が大きな焦点になっています。
そこで、今回の世論の結果を都内の回答者に絞って見てみました。
すると、「国や自治体の対策」で出生率低下に歯止めがかかることを「期待する」という割合は34%で、全国の39%より低くなっています。
子育てをしにくい環境だという思いが強く、対策による歯止め効果への期待感が薄いのかもしれません。
子ども・子育て支援の法改正案が国会で審議中の5月の世論調査では、岸田文雄首相の少子化対策への取り組みをどの程度評価するか4択で質問しました。
「大いに評価する」が1%、「ある程度評価する」が27%の一方、「あまり評価しない」48%、「全く評価しない」21%と否定的な回答のほうが多い結果でした。
子育て世代でもある40代で、「評価する」が計16%と低いのが目立ちます。
岸田首相が「異次元の少子化対策」と銘打ってから1年以上がたちますが、キャッチフレーズ先行で、対策の中身が見えにくいことも、取り組み評価の低さにつながっている気がします。
支援法が成立し、今後、支援策が目に見える形で浸透していくなかで、出生率低下に歯止めがかかるのかどうか。
若年人口が急激に減る2030年代に入るまでが「少子化反転のラストチャンス」だという国の本気度が問われます。
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