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「こんな電車が走る世界に住みたい」 1日限りの「未来列車」に反響
荷物棚に驚きの活用術「気持ち良いなぁ」
未来の電車は、どんなものだったらうれしいですか? 阪急電鉄のイベントで、一日限定で走った「未来の車両」が、Xで話題です。300万超表示された画像には、文字通りの「グリーン車」が写っていました。制作者に話を聞きました。
《阪急電車の中に植栽させていただいた。
こんな尖ったこと。させてくださった阪急電車さんにリスペクト。
これがほんとのグリーン車》
画像には、車両の荷物棚にずらりと、植物が並んでいます。大きな葉っぱも茂り、まるで植物園のようです。
この投稿に、「めっちゃ良い!こんな電車が走る世界に住みたい」「マイナスイオン出てそう」「車両でグリーンとお花を楽しむ心の余裕ができて、ギスギスした世の中が良くなりそう」などとコメントがつき、4万超のいいねがつきました。
阪急電車の中に植栽させていただいた。
— タニー@南アフリカ🇿🇦TANI LIFE (@tanny_landscape) April 19, 2024
こんな尖ったこと。させてくださった阪急電車さんにリスペクト。
これがほんとのグリーン車🟩 pic.twitter.com/BuZsspbTeV
話題になった車両は、大阪・関西万博の開催1年前を記念して、阪急電鉄が4月13日に走らせた列車「EXPO TRAIN 阪急号」の1車両でした。
「列車全体を舞台に『過去』『現在』『未来』のタイムトラベル体験が味わえる体験型演劇」と銘打ち、車内の内装もその設定に合わせて模様替え。抽選で100人の乗客が、演劇や音楽、マルシェなどを楽しんだそうです。
その列車で「未来の車両」の一部だったのが、今回の「グリーン車」。手がけたのはタニーさん、こと大阪府池田市の植木屋、谷向(たにさき)俊樹さん(30歳)でした。
もともと、沿線の池田市が「植木の日本四大産地」として有名なことから、物販で参加予定だった谷向さん。そこへ「未来の車両の装飾に植物を使えないか」と演出担当の儀間建太さんから声がかかりました。
「未来の列車」というお題に、植木屋「緑向ガーデン」5代目を継ぐ谷向さんの腕が鳴りました。
「まだ見たことがないような植物の組み合わせができたらいいな」
大学時代、旅先のタイで見た風景。日本では室内でしか育たない観葉植物が、路上ですくすくと育ち、日本にない景色を作り出していました。
日本と海外、両方の造園を学びたいーー。感性にほれ込んだ造園師が暮らす南アフリカに渡り、弟子入りします。そこで2年半、広大なアフリカの大地でたくましく育つ、ユニークな植物を見てきました。
世界を知って考えた、谷向さんの「未来の大阪を走る電車」は、こうでした。
「地球温暖化で、今は室内でなければ育たない植物が外でも育っているはず」
頭に浮かんだのは「『風の谷のナウシカ』の地下室の感じ」でした。
飾る場所は、荷物棚の上の高さ20センチのスペースと限られていました。
そこに収まるように、葉につやがあるものや、ぷくっと肉厚なもの、色みや形がユニークなものを選びました。
ヤツデ、クロマツ、アスパラガス・ナナス、ユーフォルビア、オニヤブソテツ、アロエ、バニラなど20~30種類。
「未来の列車」が走る日。
荷物棚の上にしっかりと固定された植栽が揺れ、壁やつり革には広告もなく、座面の色も相まって緑一色の車内。そこでは、普段はうつむいてスマホを見ることが多い乗客たちも顔を上げ、植栽やダンスなどを見ながら楽しそうに乗っていました。
「気持ちよかったなぁと思います」と谷向さんは思い出します。
投稿を見て、「こんな電車に乗りたい。実際は無理ですか?」というコメントもつきました。
もし、〝今の形状の電車〟に植栽をすることを考えてみると、谷向さんは「給水・排水が難しいですよね」「水やりや植物の維持には、人件費もかかります」と様々な困難を挙げます。
でももし〝今の形状〟にとらわれなければどうでしょうか。これからの時代、今あるものの目的や発想は大きく変わるかもしれません。
〝理想〟を聞くと、谷向さんは「電車内に植物があったら、やっぱり良いですよね。気になる植物をQRコードで見て、買ったりできる……発想がちょっと大阪人っぽいですかね」と笑います。
将来は南アフリカと、大阪の2拠点で、ランドスケープデザイナー(造園師)として活躍する夢を持っている谷向さん。
まずは1年後に迫る万博で、ドイツ館のパビリオンの植栽工事が待っています。
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