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熟慮した結果「デザイン変更しません」 ツバメノートの新年度の投稿

万年筆ユーザーのなかには、ノートの印刷方法にこだわる人も多いそうです
万年筆ユーザーのなかには、ノートの印刷方法にこだわる人も多いそうです 出典: ツバメノート株式会社提供

目次

熟慮した結果、今年度もデザインを変更しません――。大学ノートで有名な文具メーカー、ツバメノートのこんなSNS投稿が話題になっています。新年度をきっかけに「変わらないこと」を宣言した投稿でしたが、〝仕様を変えない努力〟も簡単ではないそうです。担当者に話を聞きました。(デジタル企画報道部・武田啓亮)

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「新年度あるある」の逆を狙った投稿

話題になったのは、ツバメノートの公式アカウントによるXへの投稿です。

「新年度のお知らせ」という文言で始まる投稿は、こう続きます。

「創業より変わらぬツバメノートの意匠ですが、当社で熟考を重ねた結果、来年度もデザイン変更しないこととなりましたので、ここにお知らせ致します」

この投稿に「一瞬デザイン変更のお知らせかと思った」「不滅のデザインですよね」といった反応が寄せられました。

ツバメノートが販売しているノートは、シンプルで落ち着いたデザインのものが多くあります
ツバメノートが販売しているノートは、シンプルで落ち着いたデザインのものが多くあります 出典: ツバメノート株式会社提供

この投稿をした担当者に取材すると「新年度によくある『リニューアルのお知らせ』に似せて、逆に、変わらないことをアピールしてみました」とのこと。

「ノートを新調する機会も多い新年度というタイミングに、選択肢の一つとして注目してもらえたらいいなという思いがありました」と話します。

「ツバメ」の由来は

ツバメノートは、1947年に発売。表紙のデザインはその当初から変わっていないそうです。

終戦後間もない当時の日本では、物資不足のため、粗悪な紙を使ったノートが多く出回っていました。

ツバメノートの担当者は「この状況を憂いた創業者の渡邊初三郎が『世界に伍するノートを創る』という信念を持って、ノート製造に乗り出したといわれています」と話します。

書き心地がいい、文字がにじみにくいといった特長を持つ「フールス紙」を使い、糸で綴じて製本することで耐久力にも優れるノートは、たちまち評判になりました。

左の「昭和40年モデル」の年季の入ったビジュアルに圧倒されますが、デザインは変わっていないことが分かります
左の「昭和40年モデル」の年季の入ったビジュアルに圧倒されますが、デザインは変わっていないことが分かります 出典: ツバメノート株式会社提供

なぜノートの名前は「ツバメノート」なのでしょうか。この頃、同社には「燕さん」という凄腕の営業担当者がいたそうです。

「取引先から『燕さん、ノート頂戴』とよく呼ばれていたのと、当時、特急燕号が人気だったことから、『ツバメという名前はいいな』となりました。ノート発売の翌年、社名も『渡邊初三郎商店』から現在の『ツバメノート』に変更され、現在に至っています」

変わらないための努力

担当者は「デザインや使い心地を気に入ってくれているお客様のためにも、なるべく商品の仕様を変えないように努力しています」と話します。

ただ、それも決して簡単なことではないようです。

「実は弊社が使用している印刷機は、日本では最後の1台で、替えが効かないんです」

ツバメノートが製造・販売している商品の多くは「罫引き(けいびき)印刷機」を使って印刷されています。

ツバメノートで使っている印刷機は、日本国内では最後の1台だそうです
ツバメノートで使っている印刷機は、日本国内では最後の1台だそうです 出典: ツバメノート株式会社提供

現在主流となっている「オフセット印刷」との大きな違いは、水性インクを使っていること。

「油性インクで印刷されたノートの場合、罫線が水性インクを弾き、文字がにじんだり書き心地が悪くなったりすることがあります。そのため、水性インクを使う万年筆ユーザーのなかには、罫引き印刷にこだわる方も多いです」

「水性インクの罫線は目に優しい」「罫線をまたいでもペンが引っかからない」

SNS上でも、そんなユーザーからの評価が目立ちます。

「今ある機械をメンテナンスしながら大事に使っていますが、罫引き印刷をいつまで続けられるかは分かりません」

今回、SNSで話題になったことについて「小さな会社で、宣伝にお金をかけられないこともあり、とてもありがたいです。今後も、弊社の製品を愛用しているユーザーの期待に応えていきたいです」と話しています。

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