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光る君へ、衝撃の展開…大河オリジナルキャラ「直秀」の果たした役割

鳥辺野で〝遠くの国〟に旅立った、大河ドラマ「光る君へ」のオリジナルキャラ「直秀」が果たした役割とは…。たらればさんも以前、鳥辺野を訪ねたといいます
鳥辺野で〝遠くの国〟に旅立った、大河ドラマ「光る君へ」のオリジナルキャラ「直秀」が果たした役割とは…。たらればさんも以前、鳥辺野を訪ねたといいます 出典: たらればさんポストより

目次

紫式部を主人公にした大河ドラマ「光る君へ」。編集者のたらればさんは、「貴族しか登場しない『源氏物語』では語ることができなかった〝決定的な身分差〟を、今回の大河ドラマではオリジナルキャラ・直秀を通して描いた」と語ります。直秀が果たしてきた役割を、たらればさんとともに語り合いました。(withnews編集部・水野梓)

この記事は、大河ドラマ「光る君へ」第9回「遠くの国」の放送後、3月3日にXで開催されたスペースの内容を編集して配信しています。ドラマの内容にふれています

鳥辺野に連れていかれた一座は

紫式部を主人公にした大河ドラマ「光る君へ」では、奈良時代に中国にもたらされ、平安時代には路上で庶民に披露されるようになった芸能「散楽(さんがく)」の一座が登場します。

そのうちのひとりが、毎熊克哉さん演じる「直秀」です。貴族ながら盗賊だったという伝説の「藤原保輔」がモデルではないかとも指摘されており、庶民たちに貴族を皮肉った芸を披露し、まひろや道長にも影響を与えていきます。

貴族の家から盗んだものを庶民に分け与える「義賊」の一面もあったため、屋敷へ盗みに入ったところを道長たちに捕らえられてしまいます。

第9回「遠くの国」では葬送の地〝鳥辺野(とりべの)〟に連れていかれ、一座のメンバー全員が検非違使に殺されてしまいます。

編集者のたらればさんは「史実にないオリジナルキャラなので、いつどうなってしまうのか分からないと心配はしていましたが、まさかこんなに早く…」と声を落とします。

「現代版源氏物語」必要なカギ

水野梓(withnews編集長):たらればさんは「直秀」というキャラクターをどうとらえていましたか?

たらればさん:直秀は「現代版源氏物語」に必要なカギだったと思っています。

源氏物語の登場人物や対象読者は当時の貴族たちで、だから「決定的な身分差」や「貴族社会の外」を描けなかったんですね。

だから当然、僕たち令和の世の人間がそのまま源氏物語を読むと、ひっかかるところがあります。
たらればさん:いっぽうで、今の時代に紫式部の生涯を描くのであれば、やはり身分制度や男女差にまつわる理不尽さについては触れざるをえないだろうとも思います。

これは「(現代と当時で)どちらの社会がいいか」という話ではなく、根本的な価値基準が違う。だからこそ、いま紫式部の人生を描くなら、直秀というキャラクターが必要だったんだろうなと思いました。
水野:第8回では「都の向こうへ行く」と話す直秀が、まひろを誘ったあと「行かねぇよな」と寂しそうに言うシーンも印象的でしたね。

たらればさん:まさにまさに。まひろの(直秀とともに貴族社会の「外」へ)「行っちゃおう…かな…」というセリフは、平安時代に生きた紫式部には書けなかった。

大和和紀先生の「あさきゆめみし」というマンガでは、源氏物語に登場する「近江の君」というキャラクターが、貴族の身分を捨てて庶民に戻るというオリジナルのシーンがあるんです。

【関連記事】「あさきゆめみし」に隠された…同業者も気づかなかったトリック
https://withnews.jp/article/f0220211001qq000000000000000W02c11001qq000024267A

早口でだじゃれやゲーム(すごろく)が好きといった近江の君のキャラクター自体は、源氏物語と似ているんですが、「元の庶民の暮らしに戻ります」と退場するシーンは、「大和先生が、今の視線を盛り込んで描いたこと」です。

今回の大河ドラマでは、毎熊さん演じる直秀が貴族たちの身分や、貴族たちにはできない「都を捨てて遠くへ行く」ことを表現する役割を果たしてくれていました。

今後も、西洋の物語で王様の隣にいるピエロみたいに、あるいは少女マンガで主人公カップルのそばにいる不良の友人みたいに、物語をかき回して動かしてほしいと思っていたら…こんなに早く退場してしまうとは…あと20話ぐらいいてほしかったです……。

現代とは違う身分制度

水野:今回は、道長の従者の百舌彦と、まひろの従者の乙丸のふたりのやりとりや、猫の小麻呂ぐらいしか、癒やしがありませんでした…。

たらればさん:百舌彦や乙丸こそ、身分制度を最も端的に表す存在ではありますよね。

この時代の貴族は、誰と恋愛をしているか、誰とどんな「文」のやりとりをしているか、従者には筒抜けです。

極端な話、貴族にとっては裸を見られても恥ずかしくない存在というか、「かわいい」とかそういう感情はあるかもしれませんが、同じ「人間」としてはカウントしていないわけです。

水野:ハッキリ身分が違うと互いに分かっているわけですね。

たらればさん:そういう上級貴族のメンタルは、どんなに想像力を働かせても現代に生きるわれわれにはなかなか実感できませんよね。

たとえば源氏物語の宇治十帖では匂宮と薫が浮舟のことを取り合うわけですけど、どっちも没落して東国で育った姫君である浮舟のことを「自分と対等の存在」とは決して思っていないんです。当時の読者も「それが当然」と読んでいる。

そういうこともあって、源氏物語の現代語訳を読むときは、なるべく近い時代の訳を読むのがいいと思っています。

現代との意識の違い、前提とされる理念や考え方を、どう現代語訳するかが最大のポイントであり、どう無理なく現代につなげられるかが、作家としての力量が試されるところなんじゃないかと思います。

「死」を描いて物語を動かした紫式部

<直秀が命を落とした「鳥辺野(鳥部野・鳥戸野)」は、今の京都市東山区にあります。清少納言が仕えた藤原定子や、藤原道長もここに葬られました>
たらればさん:鳥辺野は平安時代に幅広く貴族から庶民まで埋葬される場所として有名で、「源氏物語」でも光源氏の母の桐壺更衣や正妻の葵の上、紫の上たちが葬られた地でもあります。

紫式部という作家は「死」の描き方がとても印象的です。光源氏は母(桐壺更衣)や葵の上、藤壺など、大切な人を何度も失い、紫の上にも先立たれます。そのたびに物語がちょっとずつ動く。誰かが死ぬと物語に「空洞」が生まれて、その空洞を埋めるように周囲の状況が動き出すんです。

この先、そんなふうに大河ドラマが動いていくのだとしたら、視聴者はどんどんメンタルが削られますよね…(苦笑)。
水野:たらればさんの〝最推し〟の清少納言(ファーストサマーウイカさん)が仕えた藤原定子さま(高畑充希さん)も鳥辺野に葬られるんですね。

たらればさん:はい。定子さまも鳥辺野に霊屋を建てられてそこに安置されたという記録があります。「栄華物語」には、定子さまが運ばれたのは旧暦十二月、雪の降る日だったと記録されていますね。

定子さまが葬られた正確な場所は分かっていなくて、後年に作られたんでしょうけど、定子さまが祀られている廟(鳥辺野稜)にも一度行ったことがあります。

草がぼうぼうと生えている山道を歩いていくと、ひっそりと廟があって、お参りができます。

水野:今回の回を見て、訪れてみたくなりました。

たらればさん:亡き定子を想って清少納言もここへ何度もお参りしたのかなとか思いながら、手を合わせました。小高い丘になっていて、京都市街が見渡せて、静かでいいところです。
一条天皇が愛した藤原定子さまの廟。鳥辺野でお参りすることができます
一条天皇が愛した藤原定子さまの廟。鳥辺野でお参りすることができます 出典:たらればさんのポストより

「男だったらなぁ」のその後

水野:直秀が亡くなった後、父の為時から「お前が男だったらなぁ」と言われたまひろが「私もそう思います。男だったら勉学に励んで内裏に上がって世をただしたい」と引き受けるシーンも印象的でしたね。

たらればさん:今後、まひろの歩む道はさらに厳しくなってくるわけですけど、今回の出来事を踏まえての言葉は重いですね。

これは優れた物語の「あるある」なのかもしれないんですけど、源氏物語を読むと、その時々の(読者側が生きている)社会の一番の問題点が浮き上がって、その物語に色濃く反映しているように読めることがあります。

現代ですと、身分制度(格差)やジェンダー(男女の文化的、制度的な違い)が意識されるんだろうなと感じます。

だからこそ、この先も、同じ人間なのに「生まれ」で社会からの境遇が大きく異なったり、「男であること」「女であること」の違い(の理不尽さ)が、このドラマでも強く出てくるのでしょう。

この「おまえが男だったらな」という、「紫式部日記」にも出てくる言葉を、どう処理していくかが楽しみでもありますよね。
水野:確かにそうですね。は~、それにつけても直秀ロスですね…。

たらればさん:とにかく直秀には、あの世できれいな海を見ながら打毬(だきゅう)でも楽しんでいてほしいなと思います…。あと、ドラマの後半で、直秀にそっくりな双子の弟とか、息子とかが出てくれねぇかなと……。
◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から。
 次の採録記事は、「源氏物語」の楽しみ方について、来週日曜に配信予定です。

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