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IT・科学

献血、毎日呼びかける理由 体験して知った「輸血」だけじゃない用途

およそ半数が「薬」の原料に

記者が初めてやってみた成分献血。採血自体は40分ほどでしたが、血行促進のために温かい湯たんぽを握り、うとうとしていたらあっという間に感じました(画像の一部を加工しています)=2024年1月
記者が初めてやってみた成分献血。採血自体は40分ほどでしたが、血行促進のために温かい湯たんぽを握り、うとうとしていたらあっという間に感じました(画像の一部を加工しています)=2024年1月

目次

献血にご協力お願いします――。ターミナル駅などで呼びかけられている献血。交通事故や手術での大量出血などで使われるイメージが強いですが、実は約半数が「薬」の原料になって役立っているのだそうです。なぜ毎日のように献血を呼びかけているの? 献血すると「いいこと」ってある? 記者が献血をしながら、現状を取材しました。(withnews編集部・水野梓)

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若い世代の献血者数、減少傾向

日本骨髄バンクのドナーが10年以内に22万人も減ってしまい、若い世代の登録が喫緊の課題になっている……という問題を、昨年から取材してきた記者。自身も「ドナー登録がしたい」と献血ルームに取材を申し込みました。

【関連記事】「ぼく、しむ」ドナーを待つ息子のために父は… 骨髄バンクのピンチ

実は「若い世代の協力が必要」という課題感は、献血も同じだといいます。

2022年度の献血者は、全国で500.9万人。そのうち50歳以上が42.6%、30~49歳が39.2%、16~29歳は18.2%です。少子高齢化が進み、10~30代の献血者数は減少傾向にあるといいます。

せっかくなら献血もしようと考えた記者も、献血は学生時代ぶり。事前検査で血色素量が低く、献血ができなかった記憶があり、「自分には難しいかな」と感じていたことも足が遠のいていた理由のひとつです。

秋葉原の献血者は30~40代の男性が多く、若い世代が多いのは新宿や池袋の献血ルームだといいます
秋葉原の献血者は30~40代の男性が多く、若い世代が多いのは新宿や池袋の献血ルームだといいます

東京都赤十字血液センターの広報担当者・平柳美月さんは、「自分にはできないかも、と考えている方も多いんですが、赤血球を体内に戻す成分献血であれば、全血献血よりも血色素量の基準が低く、体への負担も少なく、できる場合もあります」と話します。

全血ができなくても、成分なら…

全血400ミリリットル献血の基準は、血色素量が男性13.0g/dL以上、女性12.5g/dL以上です。

記者の事前検査の結果は、12.2g/dL。しかし12.0g/dL以上あれば、赤血球などを体に戻す「成分献血」はできます。

過去に献血ができなかった経験から、今回は血色素量の基準値が低い「成分献血」で予約を取ってもらっていました。

もし基準を満たせば全血400ミリリットルで、と考えていましたが、基準に及ばず。しかし、実は「成分献血」も非常に重要なのだといいます。

出典:日本赤十字社の「献血基準」

成分献血は、採血装置で血液を分離して「血漿」や「血小板」を集め、赤血球・白血球などを体に戻します。

この「血漿」は、いったい何の役に立っているのでしょう。

平柳さんは「献血というと、事故に遭った時の大量出血用など輸血で使われるイメージがあるかもしれませんが、実はそのまま輸血に使われるだけでなく、感染症・やけどなどの治療の薬にも使われています」と話します。

需要が増加「血漿分画製剤」の原料

献血で提供された血漿のなかにあるたんぱく質がもとになった薬を「血漿分画(けっしょうぶんかく)製剤」と呼びます。

アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固第Ⅷ因子製剤などがあり、それぞれショックや重いやけど、重症感染症や川崎病、血友病などの病気に使われます。

特に近年、免疫グロブリン製剤の需要が高まっており、原料となる血漿の必要量がおよそ1.3倍増えているそうです。

出典:日本赤十字社会のサイト

献血された血液のうち、2023年度は45.3%が輸血用として使われ、54.7%が血漿分画製剤用として使われることが見込まれています。

出典:日本赤十字社のサイト
平柳さんは「血漿成分献血の受け入れ環境の整備と拡充のため、国内3都市には血漿成分献血専用の献血ルームが設置されています」と話します。

都内では、2023年5月にオープンした八重洲の献血ルームが、血漿成分献血の専用ルーム(https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/tokyo/place/m1_01_17_room.html)です。

ここにはコワーキングスペースも設置されており、ビジネスパーソンも仕事の合間にフラッと寄れそうです。

2週間後には再び献血OK

初めての成分献血に緊張していた記者ですが、針の太さは全血献血とあまり変わらないとのこと。刺すときにも大きな痛みはありませんでした。

スタッフの皆さんも「寒くないですか?」「定期的に脚を動かしてくださいね」などと声をかけてくださり、あたたかい湯たんぽをおなかに抱えて、相撲中継を見ているうちに40分ほどで終わりました。

集まった血漿。色は人それぞれ個人差があるそうです(画像の一部を加工しています)
集まった血漿。色は人それぞれ個人差があるそうです(画像の一部を加工しています)

その後は、休憩エリアで水分をとって、最低でも20分は休みます。

受付からこの休憩まで、全血献血では60分ほど、成分献血では90~120分ほどかかるそうです。

出典:日本赤十字社のサイト

全血よりも時間がかかってしまうものの、赤血球などを戻す成分献血は体の負担が少ないとのこと。

年間の採血回数に制限はありますが、2週間後にはまた献血ができるようになるそうです。

1日平均1.4万人が協力

駅のターミナルなどで呼びかけられている献血ですが、いつも「協力を」と訴えているイメージがあります。

平柳さんは「定期的な献血のご協力が必要です」と話します。

人工的につくることができない血液。最も有効期間の短い血小板は、なんと4日しか保存できません。

成分献血で使う採血装置
成分献血で使う採血装置

2022年は、1日におよそ1万4000人が献血に協力したそうです。

災害などが起きると、「自分にできることを」と献血に来る人が増えるそうですが、それでは同じ時期に有効期間を過ぎてしまいます。大切なのは「定期的な献血」だと考えさせられます。

平柳さんは「個人情報を守るため、採血中の輸血用血液製剤の撮影は禁止となっていますが、献血したことはぜひSNSなどでも発信していただきたいです」と話します。

献血で「健康チェック」も

記者の場合、献血の翌日には、赤血球や白血球数・コレステロール値やγ-GTP(肝機能の指標)といった自身の血液の詳細がサイト上で確認できました。

献血Web会員サービス「ラブラッド」に登録すると、献血後数日でウェブやアプリで結果が確認でき、次回の献血の予約や、献血回数などに応じたポイントの確認もできます。

平柳さんは「スポーツをしている人や自営業・フリーランスの方などは、定期的な献血で自分の健康チェックに役立てている人もいます」と話します。

「ラブラッド」に登録してアプリをダウンロードしたところ、かわいい献血グッズももらえました。

血液バッグのかたちをしたキーホルダー。血液型も選べました
血液バッグのかたちをしたキーホルダー。血液型も選べました

ふらっと時間つぶしでも、健康チェックを兼ねてでも……。記者も、今後は定期的に献血へいこうと感じた取材でした。

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