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命の危険につながるトイレ問題 備えは「3日で1人15個」の携帯トイレ
1日に発生した能登半島地震によって、被災地の避難所や断水している自宅で生活を送る人たちにとって「トイレ問題」は深刻だといいます。災害時の課題や対策、備えについて、日本トイレ研究所に聞きました。
1日に発生した能登半島地震によって、停電や断水が続いている地域がまだ多くあります。水が流れずトイレが使えない、という厳しい状況になっています。災害時のトイレ問題について、日本トイレ研究所代表の加藤篤さんに聞きました。
加藤さんはトイレ問題を「設備的な問題としてではなく、命に関わる緊急の課題として位置づけることが必要です」と話します。
不衛生なトイレを使うことで感染症のリスクが高まり、多くの被災者が避難する避難所ではより深刻な集団感染につながる恐れもあります。
また、被災者が水分摂取を控えようとすることが、脱水症やエコノミークラス症候群(同じ姿勢を長時間続けることで足の血管に血の塊ができる病気)などを引き起こし、命の危険につながるといいます。
被災地の水洗トイレが使えなくなり、汚物が悪臭を放ち、使用禁止になったところもあります。
「行政などが指揮をとり、衛生的に携帯トイレや簡易トイレを使えるようにすることが必要です」と加藤さんは指摘します。
「自宅では、家の排水設備の状況を把握して、汚水が流せるかどうかを確認してからトイレを使用してください」と呼びかけます。
加藤さんは、避難所などに設置される「屋外の仮設トイレ」のデメリットも指摘します。
屋外の仮設トイレは、夜間は寒い、暗くて怖いといった理由で使用を避ける声が上がります。
地震発生後からSNSでは、性暴力の被害を防ぐため、夜間のトイレにひとりで行かないように呼びかける投稿もありました。
また、加藤さんは「仮設トイレは和便器が多く、しゃがむことが難しい高齢者や子どものなかには使うことができない人もいる」といいます。
「洋便器を徹底するとともに、トイレや、トイレまでの道に照明を設置して、女性や子どもが安心して行ける環境をつくらなければいけません。これは犯罪防止としても重要です」
さらに、避難生活が続くと疲労やストレスがたまっていきます。設置したトイレにも質の改善が求められ、できるだけ日常のトイレに近づけていく必要があるといいます。
そこで大切なのは、「子どもや女性、障害者、高齢者など、被災者の意見を聴きながら改善することです。支援側の目線ではなく、利用する側の評価です」と話しています。
災害大国の日本。日頃から災害時のトイレの備えをしておく大切さについても聞きました。
加藤さんはまず、断水時でも建物内のトイレを活用できる「携帯トイレ」を準備することをすすめます。
携帯トイレは、住宅や建物内のトイレが壊れていないかを確認し、1枚目のポリ袋をセットします。便座を覆うように携帯トイレの袋をかぶせ、凝固剤を入れてトイレとして使うものです。
発災後、最低3日分(推奨は7日分)を備えるとした場合、1日5回トイレに行くとして、大人ひとりあたり15個を目安に準備しておくといいそうです。
加藤さんは「排泄(はいせつ)に関しては、日常で話題にすることがないので、困ったときに一人で抱え込みがちです。何かあったときのために、家族や友人と話しておきましょう」と呼びかけています。
日本トイレ研究所のサイトでは、携帯トイレの使い方などをイラストで紹介しています。
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