連載
#17 イーハトーブの空を見上げて
「50年以上、畑をやってるけど…」 農家もびっくりの巨大な大根
規格外の大根が掘り出されたと聞いて、一関市の農家に電話をかけた。
「なんでまた、こんなに大きい大根ができたんだか……。見てみっぺか?」
掘り出したのは一関市花泉町で農業を営む千葉トシコさん。82歳。
地域の野菜市に出荷しようと畑で大根を収穫したところ、通常の5倍以上の重さの大根が「ボコッと抜けた」のだという。
「もう不思議で、不思議で。50年以上も農業やってるが、こんな大きな大根は初めてだ」
「どうやって食べるのですか?」と尋ねると、「自分で食べるのはもったいないので、もしよかったら、市民センターで子どもたちに見てもらった後、地域のみんなで食べてほしい」とうれしそうに笑う。
「大根と一緒にぜひ記念写真を」と頼むと、「せっかくだから、お爺さんも一緒に」と言ってきかない。
家の中で休んでいたお爺さんを無理やり軒先に引っ張り出して座らせ、巨大な大根を抱えさせた後、トシコさんはその横にちょこんと腰掛けた。
「もっと笑った方がいいべよ。ほら、ちゃんと大根さ持って……」
お爺さんに色々と注文をつけた後、隣でトシコさんが日差しの中でにっこりと笑う。
「はい、チーズ」
世の中を明るく照らすのは、秋の夕日とお年寄りの笑顔だ。
(2021年11月取材)
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