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#17 イーハトーブの空を見上げて

「50年以上、畑をやってるけど…」 農家もびっくりの巨大な大根

夫と大きな大根を抱えて喜ぶ千葉トシコさん
夫と大きな大根を抱えて喜ぶ千葉トシコさん
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。
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イーハトーブの空を見上げて

「もう不思議で、不思議で」

規格外の大根が掘り出されたと聞いて、一関市の農家に電話をかけた。

「なんでまた、こんなに大きい大根ができたんだか……。見てみっぺか?」

掘り出したのは一関市花泉町で農業を営む千葉トシコさん。82歳。

地域の野菜市に出荷しようと畑で大根を収穫したところ、通常の5倍以上の重さの大根が「ボコッと抜けた」のだという。

「もう不思議で、不思議で。50年以上も農業やってるが、こんな大きな大根は初めてだ」

地域のみなさんと一緒に…

「どうやって食べるのですか?」と尋ねると、「自分で食べるのはもったいないので、もしよかったら、市民センターで子どもたちに見てもらった後、地域のみんなで食べてほしい」とうれしそうに笑う。

「大根と一緒にぜひ記念写真を」と頼むと、「せっかくだから、お爺さんも一緒に」と言ってきかない。

家の中で休んでいたお爺さんを無理やり軒先に引っ張り出して座らせ、巨大な大根を抱えさせた後、トシコさんはその横にちょこんと腰掛けた。

「もっと笑った方がいいべよ。ほら、ちゃんと大根さ持って……」

お爺さんに色々と注文をつけた後、隣でトシコさんが日差しの中でにっこりと笑う。

「はい、チーズ」

世の中を明るく照らすのは、秋の夕日とお年寄りの笑顔だ。

(2021年11月取材)

三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。
書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。
withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した
 

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。

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