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豊洲市場の寿司屋でバイト 「芸人として最高の修行の場かも」の理由

与太郎・じゃくそんさん

豊洲市場のお寿司屋さんでバイトをする与太郎のじゃくそんさん=本人提供
豊洲市場のお寿司屋さんでバイトをする与太郎のじゃくそんさん=本人提供

外国人観光客がたくさん訪れる豊洲市場。実はここでバイトするお笑い芸人が多いことを知っていましたか? 人気のお寿司屋さんでバイトするお笑いコンビ「与太郎」のじゃくそんさんに話を聞くと、意外と芸の道につながることがあるそうです。(ライター・安倍季実子)

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与太郎・じゃくそん:愛媛県出身。本名は片井若尊(かたい じゃくそん)。実家がお寺のため、仏教系の高校に進学。高校1年生で相方の苅田昇さんと出会い、お笑いの虜になって学園祭などで漫才を披露するように。高校2年の時に、担任から勧められた高校生のお笑い大会で地区優勝し、芸人になることを決意する。2012年、大学中退後に上京してワタナベコメディスクール(16期生)へ。卒業後は、解散、再結成、活動休止(修行のため)を経て、現在はライブを中心に活動している

僧侶から芸人へ…大幅変更

新型コロナウイルスが第5類感染症に移行し、街中には海外観光客の姿も戻ってきました。

メディアでは、訪日外国人旅行者が5カ月連続で200万人を超え、さらに月別では新型コロナ前を上回るというニュースも流れました。

そんなインバウンド消費の回復を感じられる場所のひとつが、2018年に築地から移設された豊洲市場です。

場内にある人気のお寿司屋さん「大和寿司」でバイトをするお笑いコンビ「与太郎」のじゃくそんさんは、「曜日や時間帯にもよりますが、店内の8割が海外観光客という時もあります」と話します。

与太郎のじゃくそんさん(左)、苅田昇さん(右)=ケイダッシュステージ提供
与太郎のじゃくそんさん(左)、苅田昇さん(右)=ケイダッシュステージ提供

じゃくそんさんは、芸歴11年目。実家はお寺で僧侶を目指して仏教系の高校に進みましたが、相方・苅田昇さんとの出会いをきっかけにお笑いに魅了され、現在はバイトをしながら「芸人ときどき僧侶」をしています。

バイトする豊洲市場内の「大和寿司」は、場内で仕入れた新鮮な魚を使ったお寿司が人気です。

開店待ちの列ができるのは当たり前で、営業時間の朝6時~昼13時まで行列が途絶えません。

「職人さんも優しくて明るくて、たまに賄いで寿司を握らせてもらうこともあるんですよ。それくらい仲いいです」=筆者撮影
「職人さんも優しくて明るくて、たまに賄いで寿司を握らせてもらうこともあるんですよ。それくらい仲いいです」=筆者撮影

「先輩やまわりの芸人から紹介されて、場内でバイトをする芸人は多いんです。僕の場合は、定食屋でバイトを始め、塩屋も経験しました。コロナで一時は場内のバイトがなくなったんですが、2年前にまた声をかけてもらい、今は寿司屋でバイトをしています」

場内にあるお店の中でも、大和寿司の歴代バイトには芸人が多く、中には賞レースでチャンピオンになった人も。

「社長がお笑い好きなので、芸人の活動を色々と応援してくれますし、融通も利きますし、めちゃくちゃ働きやすいです」と笑顔で話します。

観光客から学んだ「芸人的おもてなし」

大和寿司のバイトは週3~4日、勤務時間は朝6時から昼14時まで。月の平均的なバイト代は20万円前後です。

ライブがある日は、一度自宅に戻ってからライブハウスに向かい、ライブがなければ、自宅でネタやギャグを考えたり、相方とネタ合わせをしたり、趣味を楽しんだりしているそう。

シフトは前の週にバイト同士で会議をして決めます。

「日曜は市場が休みなんで、土曜はめちゃくちゃ忙しくて、出勤するバイトも多いんです。『この日は、前日の夜が遅いから休みたい』とか、みんなで話し合って決めます」

急な予定変更があった時は、代わりのバイトを探す必要がありますが、「オーディションは昼からが多いんで、早上がりさせてもらうという方法もあります。意外と芸人と両立しやすいんですよ」と笑います。

味噌汁を入れるじゃくそんさん=本人提供
味噌汁を入れるじゃくそんさん=本人提供

大和寿司は、寿司ネタはカウンターで直接板前に注文するスタイル。じゃくそんさんの仕事内容は、接客や店の前の行列整理です。

「お茶やお味噌汁を運んだり、ドリンクの注文を聞いたり、片付けたりといったことがメインです。あとは、お客さんの行列の整理です。行列を作るのは日本独特の文化なんで、たまに地べたに座り込んでる外国人観光客もいるんです。ほかにも文化の違いを感じることはちょくちょくありますが、けっこう楽しいです」

アメリカ、韓国、中国、ドイツ、フランスなど、様々な国の観光客が来店するため、各国の文化の違いが新鮮なのだそう。また、ちょっとした国際交流ができるのも、このバイトのいいところです。

「僕は英語がそんなに得意じゃないんですが、ジェスチャーを交えれば大体伝わります。たまに、お客さんの注文する魚や料理名がわからないこともありますが、ほかのバイトにも声をかけて一緒に考えて、『あ、赤貝がほしいのか!』とか、通じ合った時はめちゃくちゃ嬉しいですね!」

「お寿司を食べて、笑顔で帰っていく姿を見るのは、やっぱり嬉しいです」=本人提供
「お寿司を食べて、笑顔で帰っていく姿を見るのは、やっぱり嬉しいです」=本人提供

また、常に笑顔でいることの大切さを学んだとじゃくそんさん。

「特に海外観光客とのコミュニケーションでは、笑顔の大事さが身に沁みます。海外の方って初対面でも、すごくフレンドリーに接してくれる方が多いんです」

「だからお茶や味噌汁を出す時は『ベリーベリーホット!プリーズビーケアフル、オーケー?』とか言うようにしています。お客さんも笑って、『オッケー!』って返してくれます。一言つけるだけで皆さん笑顔になりますし、お寿司もより美味しそうに食べてくれてる気がします」

来年の目標はネタ番組への出演

もともと、ライブ中にお客さんが笑っているのを見るのが好きなこともあり、バイト中も笑顔を絶やさず、楽しい雰囲気作りをすることの大切さをすんなり理解できたそう。背景には、実家のお仕事が関係していると分析します。

「お寺って、あまり楽しい気分で行く場所じゃないですし、修行中は『新到三年 皓歯を見せず』っていう3年間は白い歯を見せずに無我夢中でやるという教えを意識しながら行うので、笑いとはかけ離れています」

もちろん、僧侶として働く時は、気持ちを引き締めて仕事と向き合いますが、その反動が芸人の一面として出ているのかもしれないと話します。

「笑顔の力はすさまじく、まわりにも伝染していくんですよね。ライブで芸人が楽しそうに笑ってたら、見てる人もリラックスできますし、自然と会場の雰囲気もよくなっていきます。すると、芸人側もノッてきてネタに力が入るし、お客さんも楽しい気分になります」とじゃくそんさん。

とはいえ、これを実現するのは決して簡単ではありません。

「完成度の高いネタを披露するのも、楽しい雰囲気を作ることも、普段からしていないと舞台上でもできません。そう考えると、今のバイト先は芸人として最高の修行場かもしれません」と笑います。

「賄いの寿司が美味しすぎて、舌が肥えてしまったのが悩みです。これも早く売れたい理由の一つですね(苦笑)」=本人提供
「賄いの寿司が美味しすぎて、舌が肥えてしまったのが悩みです。これも早く売れたい理由の一つですね(苦笑)」=本人提供

現在、与太郎が目指しているのは、テレビ番組の出演。来年はライブを大切にしつつも、テレビに出られるチャンスを意識して作ることが目標です。

「ライブも賞レースも大事なのですが、まずは僕たちのことを知っていただかないと。なので理想は、『ネタパレ』『あらびき団』などのネタ番組に出ることです。そのためにも、来年はコンビのYouTubeチャンネルなど、ネットの方も充実させたいですね。あと、個人的にはSNSやライブで、ギャガー(ギャグを得意とする芸人)としての一面も広めていきたいです」

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