連載
#5 火事に遭ったら?
「モコモコ服で台所、注意」作家が呼びかけ 着衣着火で年100人死亡
消費者庁「火に直接あたらなくても、火がつくこともあるので注意が必要」
「モコモコの服で台所に立つのは気をつけて」――。漫画作品の科学監修や、サイエンス作家として人気の「くられ」さんがXで注意喚起をしました。着衣着火での年間死者数はおよそ100人。注意点などをまとめました。
「これからのシーズン、モコモコの服を着て台所にたつ人がいるかもしれませんが、まじで自殺行為なので気をつけましょう。気をつけていた自分でさえ、一度は死にかけました」
12月初旬、サイエンス作家であり、科学実験の様子などを配信するYouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」のチャンネル登録者が約30万人にのぼる「くられ」さんがXでこう呼びかけました。
このツイートには4万以上の「いいね」がつき、実際に着衣に火がついてしまった経験を持つ人などから「気をつけましょう」「知識があればそんなことはしない」と、危険性を知ることの大切さに賛同するコメントが付きました。
また、くられさんはこの投稿につなげる形で、「フワフワの服のやばいところは、ガスコンロのような裸火が存在する場合、空気中のチリやゴミ、頭からおちてきた髪の毛(長い髪の人ならなおさら)なんかがフワっと燃えたときに、火の粉が飛び散るのですが、それが絶妙に乾いたフカフカに着弾すると、2、3秒で全身が燃えるというすごい着衣着火がまぁまぁな確率で起こる点です」と解説。「別に火から離れていたら大丈夫でしょ……という甘えから最悪死に至るので本気で注意してほしいです」と重ねて注意を呼びかけます。
着衣着火の注意喚起は、2021年に消費者庁でも行っています。
消費者庁の呼びかけによると、消防庁の消防統計では、着衣着火による死者は2015年から2020年の6年で572人。そのうち約8割が65歳以上の高齢者です。
2018年から2020年の間に東京消防庁管内で発生した住宅内での着衣着火の出火原因はコンロが約8割、ろうそくが約1割だったといいます。
消費者庁は、こんろ使用中の着衣着火の主な事例をこのように挙げています。
・上半身をかがめた際にこんろの火が衣服に引火
・こんろの奥にある鍋をとろうとした際に衣服の脇の下に引火
・料理中にブラウスのひらひらした袖に引火
さらに同庁は「火に直接あたらなくても、火から放射される熱で衣服に火がつくこともあるので注意が必要です」としています。
消費者庁の呼びかけの中でも、「くられ」さんが注意喚起をしていた「モコモコの服」と同様、着衣の素材についての言及もあります。
呼びかけでは「衣類の生地の表面に、細かい繊維が毛羽立っていると、わずかな炎が接触しただけで毛羽部分に火がつき、一瞬のうちに表面に火が走る」とし、これを「表面フラッシュ」というそう。
「衣類上を火が一気に広がるため、髪の毛に燃え移ったり、炎の速度が大きいことから慌ててパニックになるおそれがあり危険です」としています。
表面フラッシュが起きやすい素材などについては「パイル・タオル地」「表面を起毛した生地」などを挙げ、さらには「着古して表面が毛羽立っている衣服」にも注意が必要だそうです。
着衣着火を防ぐためのポイントとしては4つを挙げます。
一つ目は「火に近づきすぎないようにする」こと。二つ目は火力の調整とこまめな消火。「調理の際は炎が鍋底からはみ出さないように気をつけてください」「『ながら掃除』などはせず、火のそばで作業をするときは一度消火しましょう」としています。
三つ目は表面フラッシュを防ぐためにも「服装に注意」。袖口やすそが広がっているもの、ストールなど垂れ下がるものへの注意も呼びかけます。
最後に「火の周囲にも注意」。「引火しやすい液体などが付着したままの服で火に近づかないで」としています。
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