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「夢を見る」に疲れた人に、有名キャラの〝挫折〟が教えてくれること

ティモシー・シャラメが演じるイギリスの国民的な児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場する人物「ウィリー・ウォンカ」
ティモシー・シャラメが演じるイギリスの国民的な児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場する人物「ウィリー・ウォンカ」 出典: (c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

目次

映画『チャーリーとチョコレート工場』で日本でも人気のキャラクターであるウィリー・ウォンカのオリジンを描く映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が12月8日に公開されました。テーマは「夢を見ること」ですが、現代社会に生きる私たちには難しいことでもあります。こうしたメッセージに疲れてしまった人は、どうすれば気持ちを前向きにできるのでしょうか。本作のメインプロデューサーであり、『ハリー・ポッター』シリーズなど有名映画のプロデューサーとして知られるデイビッド・ヘイマンさんと、本作のプロデューサーで、『パディントン』シリーズでもヘイマンさんとタッグを組んだアレクサンドラ・ダビーシャーさんに話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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プロデューサーのデイビッド・ヘイマン(右)とアレクサンドラ・ダビーシャー© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
プロデューサーのデイビッド・ヘイマン(右)とアレクサンドラ・ダビーシャー© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』:世界中を虜にした映画『チャーリーとチョコレート工場』で有名な工場長ウィリー・ウォンカの若き日の物語を、完全オリジナルストーリーで描く作品(記者注:『チャーリーとチョコレート工場』の原作となった児童小説をベースにしており、続編ではない)。主人公ウォンカ役は今ハリウッドを牽引している若手俳優ティモシー・シャラメ、ウンパルンパを名優ヒュー・グラントが快演。監督は『パディントン』のポール・キング、プロデューサーは『ハリー・ポッター』シリーズのデイビット・ヘイマンら。

あのキャラクターはどこから来たか

――なぜイギリスの国民的な児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場する人物「ウィリー・ウォンカ」を、今回オリジナルストーリーで映画化しようとしたのでしょうか。

ヘイマン:本作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』については、実は5、6年前から、ワーナーと相談を始めていました。今回のオリジナルストーリーのもとになっているのは、私たちが愛するロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』です。

日本でも、この本を原作とした2005年の映画『チャーリーとチョコレート工場』、その中でジョニー・デップが演じたウィリー・ウォンカが人気だと聞いています。

『チョコレート工場の秘密』や、関連する作品に触れたとき、私たちが知りたいと思うのは「ウィリー・ウォンカはどこから来たのか」ということではないでしょうか。

作品の世界観を象徴する、チョコレート工場に引きこもった、ちょっとシニカルな魔術師。私たちはそんな彼が「いかにしてウィリー・ウォンカになったのか」を描きたかったのです。

――「夢を見る」という本作のメッセージと現代社会に関係はありますか。

ヘイマン:多くの子どもたちにとって『チョコレート工場の秘密』は「最初に自分だけで読めるようになる本」の一つでしょう。こうした児童小説には「夢を見ること」へのメッセージがあります。本作のウィリー・ウォンカもそんな無邪気な面を持っていて、楽観主義で寛大です。

一方で、私自身もそうですが、ティーンエイジャー、大人になっていくにつれ、人は児童小説から離れていきます。本作でウィリー・ウォンカは周囲の冷ややかな視線に晒され、貪欲なチョコレート組合と対立します。それは人の成長の過程や、複雑な現代社会の一部を反映しているとも言えます。

しかし、それはこの映画の本質ではありません。本作ではウィリーは頼もしい仲間を得て、そうした経験を乗り越えていく。そこに注目してほしいですね。

アレクサンドラ:頼もしい仲間というより……おかしい仲間かも(笑)。本作はもちろん原作とは異なるオリジナルストーリーですが、同じ精神性を持っています。例えば「厳しい状況に置かれても人を信頼するということ」というような。

「夢を見ること」自体が嫌いですか?

――私たちは厳しい状況に置かれすぎて、「夢を見ること」自体が難しくなっています。本作のウィリー・ウォンカは私たちにどんな魔法をかけてくれるのでしょうか。

ハイマン:本作のウィリー・ウォンカはまだ若く、チョコレート工場を立ち上げておらず、原作にあるような彼の心を傷つけた裏切りも経験していない、私たちがよく知るウィリー・ウォンカになる前の彼です。

ちょっと純粋すぎて、夢見がちで甘いところがありますが……あなたは「夢を見ること」が嫌いですか。きっと、そうではないですよね。「夢を見ること」が難しくなっているだけで、本当は私たちは夢を見たいのです。

私は、いい映画は人を前向きにさせるものだと信じています。そして、これがこの映画の大事なところですが、本作では「コミュニティ」と(誰かと何かを共有する)「シェアリング」が一つの救いをもたらしています。

ウィリー・ウォンカは何度も挫折を繰り返しますが、彼は自分一人でそれをなんとかしようとはしません。あまり世間を知らない彼は、だからこそ何度、失敗しても他人を信じ、仲間を作っていきます。

そして、彼が作るチョコレートがそうであるように、その成果は仲間に共有される。そうすることで、仲間からさらなる協力が得られ、自分一人ではできなかった成功に近づいていく。このアイデアは今の私たちにこそ必要なものです。

アレクサンドラ:本作のウィリー・ウォンカは私たちのオリジナルですが、もちろんみなさんがよく知る彼につながり、過去から未来へ、未来から過去へと見比べても矛盾がないことを強く意識しています。その上で今、製作された作品として、現代社会の要素もいくつか取り入れられています。

その一つの側面は、本作が新しい家族の形を提示しているところです。従来の家族像が崩壊しつつある中、ウィリー・ウォンカは思わぬきっかけで新しい形の家族を得て、そのメンバーたちが彼の夢を大きく実現に近づけさせてくれる。これはまさに前向きなことです。

もう一つ、重要なのは、ウィリー・ウォンカの救いになった「コミュニティ」と「シェアリング」という概念が、彼の親切で優しい母親からもたらされたものであるということ。そしてそれは作中で別のキャラクターにも引き継がれていったことです。

これらは時代や属性を超えて、人から人に思いやりと共に受け継がれる一つの解決策なのです。

「できないことがある」同じ人間

――本作はファンタジー映画ですが、結局、ウィリー・ウォンカとはどんな人だったのでしょうか。魔術師なのか、それとも魔法のような現象を引き起こせる、いちチョコレート職人なのか……。

ヘイマン:彼は「普通じゃない人」ですね(一同笑)。この映画はリアリズムに基づいて作られたものではありません。だって、ウンパルンパ(作中に登場するこびと)が出てくるんですからね。

でも、これは私が手がける映画すべてに言えることですが、映画は誰かの可能性を広げて、救いになるようなものであってほしいと思っています。だから、彼は普通じゃないけれど、非常に人間的です。

友だちがいて、家族がいても、それでもどこかで孤独を感じてしまう、そんな私たちと同じ人間です。チョコレートに関しては魔法のような驚くべきことができるけれど、決してそれだけでは上手く生きていけないし、それ以外のことは失敗ばかりで常に葛藤を抱えている、実は私たちとよく似た人なんですよ。

アレクサンドラ:この映画のファンタジー性について説明するとき、「ウンパルンパ」は便利な答えですね(笑)。

ウィリー・ウォンカも私たちも、同じように、切実に人とのつながりを探しています。その結果、彼が何を見つけたのか、ぜひ本作でみなさんにも確認してほしいと思います。

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