連載
#168 ○○の世論
大阪万博まで500日…開催どう思う? 近畿でも3分の1が「反対」
総入場者が6400万人にのぼったという1970年の大阪万博。小学校の卒業文集で将来の夢を「宇宙飛行士」と書いた私は、展示の目玉「月の石」を見たかったのですが、かないませんでした。それから半世紀あまり。開幕まで500日となった2025年の大阪・関西万博で、かつてのような熱狂の渦が巻き起こるでしょうか。朝日新聞の世論調査(電話)で聞くと、ちょっと厳しいかもしれません。(朝日新聞記者・磯田和昭)
1970年の大阪万博は、「人類の進歩と調和」をテーマに3月から約半年間、開かれました。
閉幕直後の9月の世論調査(面接)で、「家族や仲間の間で最近特に話題になったこと」を自由回答で聞いています。結果は、「万博」と「仕事や身の回りのこと」がともに22%で、一番多い状況でした。
一方で、今回の万博のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。万博をめぐり、今のところ話題になっているのは、会場建設費が当初見込みの約1.9倍の2350億円にふくらむ見通しになったことや、パビリオンの出展を見送る国が出たことなど、機運盛り上げには、つながりそうにないことばかり。
そんな中、今回の調査は全国の有権者を対象に、11月18、19日に実施しました。大阪・関西万博について開催の賛否をたずねると、「賛成」45%、「反対」46%と真っ二つに割れました。
地域別に見てみると 大阪を含む近畿では「賛成」が60%と全体より多く、「反対」は36%。「賛成」が目立って少ないのは関東で、36%です。
会場建設費が、千億単位で言われてもピンとこないかもしれませんが、調査直前の11月15日には、大阪市議会で大阪市民1人あたり1万9000円を負担することになるという試算が明らかにされました。こうした報道も水を差した可能性があります。
支持政党別に開催賛否を見ると、自民支持層で「賛成」が61%と多めです。
大阪の府政や市政を握っている日本維新の会の支持層では「賛成」が5割強、「反対」が4割でした。
維新は、「大阪経済の起爆剤になる」などと言って熱心に万博開催に向けた音頭をとってきましたが、大阪市民の負担増の試算が公表されたことなどもあり、ここにきて少し腰が引けた感も否めません。
会場の施設で論議の的になっているのが、建設費が350億円かかるといわれる木造リング状の大屋根です。
国は「夏場の日よけにもなる」などと説明していますが、国会審議で立憲民主党からは「三日月の形に設計変更したら、100億円ぐらい節約できるのでは」といった提案もありました。
今回の調査でも、岸田文雄内閣の不支持層で、開催反対が54%と過半数を占めています。万博をめぐる問題の扱いは、とみに失速気味の岸田首相にとって悩ましいテーマかもしれません。
開催に対する賛否を年代別に見ると、違いがくっきり出ました。
30代より若い世代では、「賛成」が「反対」の倍近い多さです。これが40代、50代になると賛否が拮抗(きっこう)。60代より上では「反対」の方が多くなっています。
この理由は今回の調査だけでは定かではないのですが、一つ考えられるのは、70年万博の記憶があるかどうかの違いです。今年60歳の人は1970年当時に6、7歳で、万博のことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
テレビ電話とか、リニアモーターカーとか、夢あふれる未来社会をかいまみせてくれた万博の再現は、今の時代、とてもできないのではないか――。
万博経験世代の、そんな気分が感じられる結果です。
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