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#18 #就活しんどかったけど…
夏のインターンが「スタンプラリー」? 地方に住む学生の就活の悩み
大学3年生向けの夏のインターンが選考につながるなど、多くの企業で採用活動が年々早期化しています。一方で、東京など大都市圏の大学と地方の大学では、学生の意識や大学側のサポートに温度差があるケースもあるようです。いま各社のインターンに応募する日々を送っている地方国立大学の3年生が、率直な思いを語ってくれました。(デジタル企画報道部・武田啓亮)
「今年の4月に3年生向けインターンの合同説明会に参加し、夏ごろから本格的に各社を回り始めました。都市部の就活生にとっては当たり前になっている日程ですが、学内では少数派だと思います」
地方国立大学で人文系の学部に通う3年の女性は現状をこう分析します。
女性は4月末ごろに住宅メーカーなどを中心に志望度の高い50社をリストアップし、夏のインターンに参加するための準備を始めました。
ゼミの教授から「福利厚生や自己実現を考えるなら、大手への就職を目指した方が近道だ」と勧められたことがきっかけだったといいます。「うちのゼミに限って言えば、学生の就活へのサポートは手厚いと思います」と言います。
ゼミでは、過去にインターンや選考活動で企業から出された課題などの情報がOB・OGを通じて蓄積されており、「仕事の進め方についてのグループディスカッションがあった」といった具体的な情報を参考に、後輩たちは対策を立てているそうです。
就活支援が充実しているように思えますが、女性は「うちのゼミは例外の一つで、3年生の夏前から就職活動をしている人は少ない」と話します。
公務員や地元企業などを志望する学生が多いこともあり、東京で就活する学生自体がそこまで多くはないのだと言います。
「大学全体の傾向として、東京の学生と比べて動き出しが遅かったり、同じ業界を志望している学生が少ないので情報量で負けていたりする部分はあると思います」
女性は情報を収集しようと、インターンなどで出会った東京の学生と連絡先を交換しているそうですが、「ライバルなので、やはり手の内は見せない。お互い、本当に有用な情報は学内やゼミの仲間とだけ共有しているみたいです」と話します。
大学側も就職支援の一環として、面接やグループディスカッションなどの対策講座を開いてくれているそうです。
ただ、その多くが4年生向けのものだといいます。
3年生の夏のインターンで、すでに実質的な選考を行っている企業も多いとされ、女性は「3年生向けの支援が薄い」と感じているようです。
就活と学生生活の両立も大変だと言います。
インターンの日程が平日だったため、講義を休まなければならないことも珍しくないそうです。
また、インターンそのものは土日開催でも、金曜日に前日入りする必要があったり、帰りが月曜の朝になったりすることも多いと言います。
「就活の早期化で大学生活の時間が浸食されている」「学生の本分は学業であるべきだ」といった理由で、学生生活が就活中心になることに難色を示す教授もいるそうです。
「大学でしっかり学んでほしいという先生たちの意見も分かるし、それは正しいと思います。けれど、私たちにも就きたい仕事やかなえたい夢があります」とジレンマも感じています。
また、地方在住の学生にとっては、交通費や宿泊費などの負担も都内在住の学生と比べると大きいそうです。
「ある企業のインターンは、複数開催されている日程に多く参加するほど早期選考のルートに乗れると言われていて、学生の間では『スタンプラリー』と呼ばれていました」
女性にとって志望度が高かった企業ですが、交通費や宿泊費の支給はありませんでした。
全て参加しようと考えると、10万円以上お金がかかります。
「地方の学生のことはあまり眼中にないのかなとか、会社の経営的にそこまでお金をかけられないのかな、とか考えてしまいます」
逆に、交通費を全額補助してくれる会社もあり、当初は高くなかった志望度が上がったといいます。
「私たちのことも見てくれているんだと、好印象でした。遠方の就活生に配慮してくれるなら、そうでない会社よりも社員を大切にしている可能性も高くなりますし、現金かもしれませんが、志望度は上がりますよね」
女性は夏のインターンの経験を元に就活戦略を練り直し、冬のインターンにも挑戦するつもりだと話しています。
「長期戦でお金もかかるし、しんどいと思うこともあります。でも、少しでもチャンスが増えるなら、やれることは全てやっておきたいんです」
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