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#166 ○○の世論
「税収の伸びを国民に還元」岸田首相の経済対策 期待できる?世論は
「還元」といわれると、スーパーの還元祭などのイメージがあって、わくわくするのは私だけでしょうか。岸田文雄首相は10月中にまとめる経済対策で、昨年度に税収が大幅に伸びた分を国民に「還元」すると言っています。その具体的な中身は10月前半の時点では、はっきりしていません。ですが、何か得をするような気分にさせる、この言葉づかい。きっと練りに練ったにちがいありません。ならばと、朝日新聞の世論調査(10月14、15日)で経済対策への期待感を聞いてみました。(朝日新聞記者・磯田和昭)
世論調査は、岸田首相をがっかりさせる結果になりました。「期待できない」が69%と多く、「期待できる」という人は24%しかいないのです。
年代別に見ると、「期待できない」という割合が多いのは30代と40代で、いずれも80%にのぼっています。
増収分を「還元」するというなら、普通それは給付金といった形の財政出動か、減税になります。
自民党や公明党の幹部ら岸田首相の周りには、その両方をやるべきだという声さえあがっています。
自分の懐具合にからむ話には敏感に反応するのが、世論の常です。なのに、経済対策への期待感のこの低さ。いったい、なぜなのでしょう。
岸田首相はおりにふれ、「信なくば、立たず」と強調します。国民から信頼されないと、政治は立ちゆかないといった意味です。
10月で岸田さんが首相に就いて2年。節目だと考え、首相としての仕事ぶりを見て、岸田さんのことを信頼できるかどうか聞きました。
すると、「信頼できない」が62%で、「信頼できる」(30%)より多い状況です。
「信頼できない」と答えた割合は、年代別に見ると、ここでも30代、40代で7割を超えて多くなっています。
岸田首相への信頼の有無が、経済対策への期待感にどう関係しているか、見てみました。
岸田首相のことを「信頼できる」人は、経済対策を「期待できる」という割合が55%で、全体で見た場合(24%)の倍以上の多さです。
一方、岸田さんを「信頼できない」人では、経済対策に「期待できない」という割合が88%にのぼっています。
いくら期待を抱かせるような、甘い言葉を聞かされても、その人に対して「信」がなければ、響かない――。結果から、そんな意識が浮かびます。
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