連載
#3 #わたしと学校
「間違えるのが怖かった」中学時代 高校への一歩を変えたネット空間
「自分が行く場所は選べる」作者が伝えたかったこと
「何をするのも しゃべるのも 笑うことさえも 間違えるのが ただ怖かった」。SNSなどでマンガを発表しているみりこさん(31)は、周りの目を気にし、クラスメートと打ち解けるのも苦手な中学生でした。
しかし、インターネットと出会ったことで世界が広がり、高校では新たな一歩を踏み出すことに。
「自分が行く場所は選べる」と話します。
「先生や親の言うことを聞いていれば 『いい子』でいられた はずだった」。みりこさんは、中学校の頃の自分をマンガに描いて振り返りました。
周囲の目を気にしていた中学時代。「大人」に認められればよかった小学生の頃とは違い、評価の基準が「クラスの誰かに認めてもらうこと」になっていると感じました。
「親がうるさくてさぁ」
「あの先生ムカつくー」
「あいつ真面目かよ ウケる」
クラスメートの会話は「いい子」からかけ離れていき、「いい子」であることは「ウザい」と煙たがられる対象になりました。
みりこさんは、「クラスの誰か」に認めてもらうためには「今までの『私』を捨てないと」と思ったそうです。
しかし、正解は見つかりません。
何かが引き金になって〝認めてもらえない立場〟になることも考えられました。
「何をするのも しゃべるのも 笑うことさえも 間違えるのが ただ怖かった」と振り返ります。
「学校に行きたくないな」と思うみりこさんですが、「でも行かなきゃ 私は『いい子』だから」と葛藤がありました。
「いい子」だったがゆえに、「親や先生に心配かけるのもよくない」と思っていたそうです。
「ここから逃げるなんてできない」
みりこさんは、自身の中での「いい子」像と「中学のクラスメイト」とに挟まれて、身の置き所がないように感じていました。
そんな息苦しさを変えてくれたのは、ある日家にやってきたパソコンでした。
インターネットで「イラスト」と検索すると、「お絵描き掲示板」や「小説投稿サイト」、「お悩み相談BBS」などがヒットしました。
その空間にいたのは、絵を描く人や物語を書く人など、リアルな世界ではあまり出会ってこなかった人々です。
好きなことを前面に語る投稿を見たり、掲示板内で絵を描くときの相談をしたりできたことで、「私らしい私でもいられるし 私じゃない私にもなれる」と思ったみりこさん。
リアルな自分を知る人がいないネット空間は、これまでの閉鎖的な考え方を変えるきっかけになりました。
そこでみりこさんはハッとします。
「じゃあ 誰も私を知らない高校に行ったら?」
「私は私のままでも 変えられるかもしれない」
電車で1時間かかる高校へ進学し、地元の知り合いがいない状況でゼロから人間関係を作りました。
みりこさんは、高校で「環境や友達に恵まれた」と振り返ります。
「新しい環境に身を置いたことで、呪縛が解けたように自然と変わっていくことができました」
中学時代は同級生とどうコミュニケーションを取ればいいか分かりませんでしたが、高校では自分の趣味からコミュニケーションが始まることも学んだそうです。
「当時のインターネットの匿名性や、広い世界へアクセスできたことは、私にとっては背中を押してもらうきっかけになりました」
一方で、「今の時代はSNSなどが日常の一部として入り込んでおり、個人が特定されるような使い方に関しては注意すべき」とも考えます。「インターネットは自分の世界を広げられるツールですが、うまく付き合うことが大切です」
漫画に込めた思いを尋ねると、次のように語ってくれました。
「いま学校や狭いコミュニティから逃げられなかったり、変われなかったりしていても、決して悪いことではありません。いじめなど深刻なものでなければ、やり過ごした方が楽だと感じる人や状況も、きっとあると思います」
「でも、その日々が終われば自分が行く場所は選べます。選んだ先で、何かしらが変わることもあるので、少しでも希望になるとうれしいです」
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