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1週間の始まりは日曜?月曜? 手帳とカレンダーで異なる多数派
秋の訪れとともに、書店や文具店に新しい手帳やカレンダーが並び始めました。様々なデザインの製品がありますが、あなたは月曜始まりと日曜始まり、どちらを使っていますか。業界関係者に取材すると、実は手帳とカレンダーでは異なる傾向があることや、ライフスタイルの多様化による需要の変化など、曜日をめぐる諸事情が見えてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
月曜始まりと日曜始まり、どちらが多く使われているのか。
手帳やカレンダーで有名な高橋書店の担当者に聞いてみました。
「弊社の製品を調べたところ、手帳や日記では約7割強が月曜始まり、3割弱が日曜始まりでした。カレンダーでは月曜始まりは2割弱、日曜始まりが8割強ですね」
日曜始まりと月曜始まりの「シェア」には大きな開きがあり、しかも手帳とカレンダーで逆転しているそうです。
「『日曜始まりの手帳は3割弱しかないのか』と驚かれるかもしれませんが、実は最近増えているんです。昔は今よりもっと月曜始まりの手帳が多かったはずです」
なぜ手帳に月曜始まりが多いのか。なぜ最近は日曜始まりが増えているのか――。
はっきりした理由は分からないながらも、担当者はある「傾向」について教えてくれました。
「手帳を仕事中心で使う人は多くの企業で仕事が始まる月曜始まり、家庭やプライベートの用事と合わせて使う人は日曜始まりを選ぶことが多いようです」
高橋書店で扱っている手帳と日記は303点。毎年、これらがどのくらい売れたか、どんな人に買われたかなどを分析し、商品開発に役立てているそうです。
これまでは、始業日に合わせて月曜始まりの手帳が選ばれることが多かったと言います。
ところが、近年は働き方の多様化やコロナ禍でのリモートワークの推進などで、必ずしも月曜始まりにこだわらない人が増えているそうです。
また、子どもがいる家庭など、職場以外での予定が多く入る人は、仕事でしか手帳を使わない人よりも、日曜始まりの手帳を選びやすい傾向があるそうです。
性別や年代などによっても好みが分かれ、年々多様化しているそうです。
高橋書店のホームページでは、予算やデザイン、どんな目的で使うかなど、細かく条件を設定して手帳や日記を探すことができます。もちろん、日曜始まりか月曜始まりかも選べます。
この検索条件には年代や性別によってどんな手帳が人気なのかという項目もあります。
「女性に人気」の手帳を見てみると、月曜始まりが60件、日曜始まりが68件と拮抗しています。
対して、「男性に人気」の手帳では月曜始まりが56件、日曜始まりが2件と月曜始まりが支持されている様子がうかがえます。
「自分の好みだけでなく、スケジュールが一目で分かるように家族や周囲の人が使っているものに合わせるという場合もあるようです。『子どもが通う学校の行事予定表に合わせて、日曜始まりの手帳を選んだ』というお客さまもいらっしゃいました」と担当者は語ります。
手帳が月曜始まりの理由は分かりましたが、カレンダーではなぜ日曜始まりが多いのでしょうか。
日本カレンダー暦文化振興協会の担当者によると、日本が太陽暦を採用したのは
1872年(明治5年)。それまでは月の満ち欠けを基準にした太陰暦が使われていました。太陰暦では現在の曜日の代わりに「大安」「友引」などの六曜が使われていました。
「日本よりも早くに太陽暦を導入していたキリスト教やユダヤ教圏の国では、週の始まりは日曜日とされていました。このため、日本でも太陽暦の導入とともに日曜日が週の始まりとされ、今でもカレンダーの多くが日曜始まりになっています」
ところが、キリスト教の国が多いはずのヨーロッパのカレンダーは、現在では月曜日始まりが多いといいます。
これは、1971年のISO(国際標準化機構)の勧告で、官公庁や多くの企業の始業に合わせて実務上、週の始まりは月曜からにするという規定ができたためだそうです。
ルーツは同じでも、現在ではアメリカや日本では日曜始まり、ヨーロッパでは月曜始まりが主流となっているそうです。
協会によると、日本で売られているカレンダーの約9割は日曜始まりだそう。担当者は「日曜始まりにしなければいけないという決まりや規格はないが、みんな日曜始まりに慣れている。今後もこの傾向は変わらないのではないか」と話します。
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