連載
#255 #withyou ～きみとともに～
望んだ進学先で不登校、「秋冬がない」撮りためた写真で伝えるエール
夏祭りの提灯、さわやかな入道雲、夕焼けの街……。自身が撮りためた写真にメッセージを載せた動画をTikTokに公開している高校2年生のRUTAさん（16）。その中に秋と冬の写真はありません。受験して合格を勝ち取った学校に入ったものの、学校に行きづらくなり家から出られない5カ月間がありました。作った動画のテロップには「頑張り屋さんのあなたへ」。作品に込めた思いを聞きました。（朝日新聞デジタル企画報道部・高室杏子）
勉強に部活に、友人関係に…頑張ったけど
高校の途中までは勉強も、友人関係にも困りごとがなかったというRUTAさん。
大学進学を目指して、高校は学業に力を入れる志望校に進学をしました。
中学生までは写真部に所属し、ミラーレスの一眼レフで風景を写していましたが、高校では「新しいことに挑戦したい」と武道系の部活に入りました。
しかし、1年の間から部内の人間関係や勉強の部活との両立に悩み始めます。
部活に打ち込んでいると、同級生の部員から「こんなこともできないの」とからかわれ、部活終わりに行きたくもないのにカラオケに誘われ、断る間もなく連れて行かれたといいます。
「自分の本音を押し殺すことでしかあの場にはいられなかった。本音を言って人間関係が壊れるのも嫌だったから」
そう振り返ります。
高校1年生の10月頃から学校に行くどころか家から出られなくなりました。
夜は漠然とした不安や同級生から言われた言葉が脳裏から消えず、朝起きたときにはめまいや貧血でへとへとになってしまう。学校に行くどころではありませんでした。
朝、母親に体調の悪さを伝えると「今日も？」。
心配そうな母親に申し訳ない気持ちと、「自分がうまくやれなかったからこんなことに。自業自得だ」「失敗した。この世界からいなくなりたい」と悲観する気持ちから離れられない秋・冬でした。
心を軽くした言葉は
転機は2、3月。冬の終わりごろのことでした。出席日数が足りないことから今後の学校生活について先生と話し、通信制の高校に転校するという選択肢があると知りました。
通信制高校を調べ、ここならきっと落ち着いて勉強できると思ったそうです。
入学前、通信制高校の先生との面談のとき、それまでため込んでいた、誰にも言えなかった自分の目指したいこと、自分の嫌いなこと、克服したいもの……。次から次へと言葉になって出てきたといいます。
「自分の好きなものを見つけられるといいね」と先生から言葉をかけられました。
面談の後、「好きなものを見つけて、やって、生きていていいんだな」と心が軽くなった気がしたといいます。
「自分の好きなこと」動画にのせて
学校に行かなくなり家にいた期間と転校してからの時間、自分と向き合うことが増えたというRUTAさん。
季節は春。ふと思い出したのは、中学校のときに写真部に入るにあたって、両親に買ってもらった「宝物」だというミラーレスの一眼レフ。
高校入学以来、部屋の片隅に置いたままでしたが、自分の好きなものを見つけるなかで再び触るようになりました。
枝に花をつけた桜や、青空に浮かぶわた雲、オレンジ色の夕焼け。
夏祭りの夜に浮かぶ提灯や、太陽の下で咲くひまわり――。
春、夏の風景を撮りました。
動画にまとめたのはTikTok上で作品を募集していた不登校生動画選手権（不登校新聞社主催、応募期間は7月末に終了）に応募するためでもありました。
「きっと、学校や人間関係で悩む人は、一人で抱え込んじゃう頑張り屋さんなんだと思う。写真で学校の外にあるきれいなものや落ち着ける、和める風景を見せたかった」といいます。
@user.ruta 初めましてRUTAと申します！ 写真を撮る事などが好きな高校生です！よろしくお願いします〜！ ✧• ───── ✾ ───── •✧ 今回の不登校生動画選手権の動画で、少しでも不登校などで悩んでいる人達に元気を与えられる事が 出来たら嬉しいです！！また、そんな人達の力になりたいです！コメントでなんでも思いをぶつけてみてくだい！全力で受け止めます！！ #初投稿#不登校 #不登校生動画選手権 #悩み相談 #写真 #photo #雰囲気 #06 #fyp ♬ Orion - Kenshi Yonezu
「去年はカメラすら忘れちゃった秋と冬だったけど、今年はその時期の風景を撮ることが楽しみです」
今は通信制の高校で似た境遇や同じ趣味で会話が弾む友人と勉強し、リサイクルショップでの接客のアルバイトもしています。
カメラに関わりたいという思いから家電売り場に来る客の相談にこたえています。
学校に行けなかった時間について、自分の好きなものがなんだったかを思い出せた必要な時間だったと振り返ります。
「頑張り屋さんは自分の気持ちを我慢したり、好きなものを後回しにしたり譲っちゃったりしがちです。動画がそれを思い出すための一呼吸をつく時間になればいいな」
RUTAさんの他の作品はTikTokから視聴できます。
「それだけは言ってほしくなかった」不登校だった母の内面、漫画に
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