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#18 「健康にいい」の落とし穴

SNSで流行「身長マイナス体重」の注意点 標準体重の〝無理ゲー〟

SNSで「身長マイナス体重がXX以上ならセーフ」といった投稿がしばしば話題になるが……。※画像はイメージ
SNSで「身長マイナス体重がXX以上ならセーフ」といった投稿がしばしば話題になるが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

ネットで話題になる「身長マイナス体重」の値。かつて標準体重の計算に実際に用いられていた式ですが、現在は推奨されていません。そもそも標準体重とはどんな定義で、実態はどうなっているのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
 

「単純な引き算」ではわからない

SNSで「身長マイナス体重がXX以上ならセーフ」といった投稿がしばしば話題になります。特にTikTokやYouTubeなどで、音楽に乗せて「身長マイナス体重=110が標準体重らしい」と紹介するショート動画が流行しています。

しかし、これは現在の定義では間違いです。厚生労働省によれば、現在、成人の標準体重は「BMI(体格指数)=22になるときの体重」と定義されています。

BMIは、肥満を判定する基準の一つである体格指数です。国際的に用いられる肥満度を表す指標で、体重(kg)÷身長(m)の二乗で求められます。標準体重を計算するなら、身長(m)×身長(m)×22ということになります。単純な引き算ではありません。

日本肥満学会の定めた基準では、18.5未満が低体重(やせ)、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満で、肥満はその度合いによってさらに1から4までの段階に分類されます。

このうちBMIが22になる標準体重がもっとも病気になりにくい状態であるとされ、25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが倍以上になり、30を超えると高度な肥満として、より積極的な減量治療を要します。

若いユーザーが多いSNSであることから、子どもについてもみてみます。厚労省によれば、子どもの標準体重は、文部科学省の学校保健統計調査報告書のデータに基づく年齢・性・身長別標準体重を用いて求められます。

その場合の計算式は、a×身長(cm)−b(a、bは年齢と身長により変化する指数※)。これもやはり、単純な引き算ではありません。

※肥満の定義(子ども) - 厚生労働省eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html

“バズって”いる動画こそ注意を

ただし、過去に標準体重を単純な引き算で計算する方法が用いられていたのも事実です。こうした計算をした経験がある人、聞いたことがある人もいることでしょう。

有名なものがブローカ法(指数)で、この方法では身長(cm)から100を引いた値の単位をkgとしたものが標準体重とされます。しかし、この値は日本人にはあまり当てはまりませんでした。

そこで、身長から100を引き0.9をかけるブローカ式桂変法(かつらへんぽう)という、ブローカ法を日本の桂英輔が日本人用に修正した方法が開発されました。これらは簡単に肥満を判定できるので、特に1900年代後半の文献で盛んに用いられていることが確認できます。

その後も現在まで慣習的に用いられ続けており、例えば性風俗産業の求人に条件として記載されていたり、最近では前述したようにSNSで“バズって”いる投稿の中で紹介されたりしています。ただし、ブローカ法では「身長マイナス体重=100が標準体重」なので、冒頭で紹介した動画(110としている)はこれにも合致しません。

こうした引き算による方法が用いられなくなったのは、当然、それが実態と合わなくなってきたから。最近ではBMIでさえ、同様に実態と合わなくなっていることが指摘され、肥満の基準としての見直しが進んでいます。

例えば筆者は筋肉質な体型で、身長175cm・70kgですが、これでもBMIは約23で、標準体重はオーバーしています。しかし、見た目には無駄な脂肪はついておらず、体脂肪率も低いので、これ以上のダイエットは脂肪より重い筋肉を減らさなければならず、いわゆる“無理ゲー”です。

肥満はさまざまな病気のリスクになり、余分な脂肪がない方が望ましいのは事実です。しかし、そもそも、こうした計算は、たくさんの人間を集団で見たときの統計的な分布に基づいています。

引き算であっても、掛け算・割り算であっても、例えば個人の脂肪と筋肉の割合は考慮されません。シンプルであればあるほど限界が多いこと、単一の指標で肥満かどうかを判断することにあまり意味がないことは、知っておく必要があるでしょう。

キャッチーな音楽に乗せて、“バズっている”動画で言われていることに、動揺してしまう若いユーザーもいるはず。そんなときは、話はそう単純ではないことを確認して、落ち着いてほしいと強く願っています。
 
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【連載】「健康にいい」の落とし穴
世の中で「健康にいい」と言われていることや、イメージされることは、よく考え直してみたり、正しい知識を持ったりすると、実は“そうでもない”ばかりか、かえって健康から遠のいてしまうことも――。身近なトピックをフカボリします。

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