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IT・科学

「水兵リーベ僕の船…」下を向いて歩こう 理研の前の元素プレートは

現れた「ニホニウム」

理研の研究グループが、日本勢として初めて合成に成功した113番元素「ニホニウム」のプレート
理研の研究グループが、日本勢として初めて合成に成功した113番元素「ニホニウム」のプレート 出典: 朝日新聞

目次

東武東上線・有楽町線・副都心線が乗り入れる、和光市駅(埼玉県)。駅前の路上には、「H」の文字が刻印されたプレートが……これは元素記号だ! ここは日本で唯一の自然科学の総合研究機関、理化学研究所がある街です。元素記号プレートを追っていくと、現れた「ニホニウム」って? 理研の研究者が案内してくれました。(朝日新聞デジタル企画報道部・松村愛)

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「ニホニウム通り」 下を向いて歩こう

スイヘイリーベボクノフネ ナーニマガアルシップスグクラァ……。中学生の理科の授業で、そんな語呂合わせで元素(原子)記号を暗記したことのある方は多いのではないでしょうか。

和光市駅の南口の路上に埋め込まれた「H」の文字。もちろん「水素」です。

「水素」からスタートします
「水素」からスタートします 出典: 筆者撮影

2019年にこのプレートを設置したのは、和光市です。

2004年、理研の研究グループが日本勢として初めて合成に成功した113番元素。2016年にその名称が「ニホニウム」、元素記号がNhと認定されました。

これを記念して、市が和光市駅から理研までの道の名称を一般から公募し、投票で「ニホニウム通り」と命名したのです。

プレートをよく見ると、「113番元素ニホニウム発見のまち」と書いてあります。そしてこの道は「市道113号線」。徹底してる…!!

さて、元素記号を、原子番号1番「H」から順に、下向いて歩いて追っていきます。案内してくれたのは、理研の上級研究員、野村泰紀さん。

本職は米カリフォルニア大学バークレー(UCバークレー)の教授、世界的な理論物理学者です。昨年4月に出版した『なぜ宇宙は存在するのか』(講談社ブルーバックス)が好評で、6~8月まで、理研をベースに活動しています。

ヘリウム、リチウム、ベリリウム……

Hから1メートルほど先に、2番目の「He」、ヘリウム。はいはい、声が変になるあれね。次は「Li」リチウム、「Be」ベリリウム……、と懐かしい記憶をたどりながら歩きます。

元素記号は全部で118種類。この世にあるすべてのものは元素でできていますが、そのおおもとがたったの118、しかも天然に存在するのは90種類くらいしかないのです。

「その中でも、日本で発見された元素はニホニウムだけ。それ以前の発見国はすべて米欧で、アジアでも初めての快挙でした。『日本』を冠する気持ちは分かりますよね」と野村さん。

歩道橋をふたつ渡るうちに、プレートを見失いそうになりますが、無事にゴールの理研に到着。「Ni」ニホニウムのプレートは理研の西門の目の前にありました。特大のプレートもあります。

ゴールの理研に到着。ニホニウムの大きなプレートも。案内してくれた野村泰紀さん
ゴールの理研に到着。ニホニウムの大きなプレートも。案内してくれた野村泰紀さん 出典: 朝日新聞

「114番以降は?」と思って通りの向こうを見ると、プレートはまだ続いていました。

114「Fl」フレロビウム、115「Mc」モスコビウム、116「Lv」リバモリウム、117「Ts」テネシン」、そして118「Og」オガネソン。ニホニウム通りの旅は10分ほどで終了しました。

周期表ができて150年の節目に

プレートが設置された2019年は、周期表の原型がロシアで考案されてから150年の節目で、ユネスコが「国際周期表年」と位置づけた年でした。

周期表は陽子1個の水素から軽い順に並べられ、性質が似ている元素が縦の列に配置されています。横位置でみると、一番左には激しく反応する元素が、一番右にはほとんど反応しない元素が並んでいます。

元素記号はこれからも増えるのでしょうか? 野村さんの答えは「はい、これからもまだ増えますよ」とのことでした。

元素すべてが地球上の自然環境で見つけられたわけではなく、93番以降は加速器など人工的な環境の中で合成された人工元素なのだそうです。

「どう合成するか、次第。でも無限に増えることはないでしょう。130個を超えるくらいではないかと思います」と話していました。

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