連載
#18 小さく生まれた赤ちゃんたち
34~36週の後期早産児「早産では遅いし、正期産でもない」悩む親
20人に1人が早産児。その8割が「後期早産」です
日本ではおよそ10人に1人が、2500g未満の低出生体重児で生まれています。小さく生まれる背景の一つにあるのは早産です。朝日新聞のアンケートには、多くの親から体験談が寄せられました。今回は、妊娠34~36週で生まれた後期早産児についての意見をまとめます。
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
2022年末に朝日新聞が「小さく生まれた赤ちゃん」をテーマに体験や必要な支援を募ったところ、親を中心に1000件近い回答が寄せられました。
多くの母親は妊娠37~41週(正期産)で出産し、22~36週は早産となります。早産の8割ほどが34~36週の「後期早産」です。34~36週で生まれた赤ちゃんを育てる親からは、「後期早産」ならではの声が届きました。意見の一部を紹介します(年齢などの情報は2022年11〜12月当時)。
12年前に息子を34週2200gで出産。病院のフォローアップを2年受けていました。息子は2年かけて発達が追いつきましたが、後期早産児にも発達に影響が出るケースがあると、最近知りました。
超低出生体重児が注目されてきていることは良いのですが、後期早産児も一部の子どもで発達面に心配があることや、成長に時間を要する可能性があることなどを伝えてほしかったです。
息子は1歳5カ月ごろに歩行を開始しました。医師からはただただ「様子を見せてください」としか言われず、何があるのか私は不安で仕方がなかったです。(奈良県 女性 40代)
破水したため36週2200gで第1子を出産し、GCU(新生児回復室)で10日ほど入院しました。母子同室を楽しみにしていましたが結局1日もできず、とても寂しい思いをしました。
36週というと早産の子の中では遅いし、かといって正期産でもない。とても宙ぶらりんな時期だと感じました。
出産後はフォローアップ外来もなしでした。低出生体重児の親の会に参加するのも気が引けて……首すわりが遅く3カ月検診のフォローに2回通うことになり、とても不安でした。
当時は自分の親から「小さい」と言われるだけで苦痛でした。1ヶ月検診後も引き続き、正しい情報とメンタル面でのフォローがあれば楽になれたかなと思います。(大阪府 女性 30代)
息子を35週2456gで出産しました。産んだときは素直に喜べませんでした。
保育器の中で管につながれた我が子を見て、「私のせいでこんなに頑張らせてしまっている」と何度も涙しました。
世の中には500gで生まれるなど、もっと小さくて大変な思いをして生まれたお子さんがいるため、「自分はまだ恵まれている方だ」とつらい思いを押し殺してしまうことも少なくありません。
どんな早産児や家族でも、寄り添ってもらえる社会がいいなと思いました。(宮城県 女性 30代)
初産で、34週2100g台で出産しました。
切迫早産の知識がなく仕事を無理していました。34週、夜中に破水し病院へ。翌朝に分娩時間15分のスピード出産。気持ちが追いつきませんでした。
カンガルーケアもせず保育器に入り、生後数日は抱っこ不可。口にチューブを入れていたので直接授乳もできず、搾乳をしました。見聞きして想定していた赤ちゃんではなく落ち込み、毎日涙ばかりでメンタルが崩壊していました。
いまだに成長曲線下限ですが、現在5歳。食物アレルギー、喘息、発育など定期的に通院が続いています。(東京都 女性 30代)
原因不明の発育不全で34週に1200gの娘を出産しました。小学生の今でも定期検診に通っています。
妊娠中に異常がわかり、出産までは気が張っていましたが、産後気持ちがついていかなくなりました。
娘を残して1人退院し、マタニティブルーもあったのだと思いますが、周りの「無事に生まれてよかったじゃない」「小さく生まれた子なんていくらでもいる」などの明るい言葉に、笑顔で応えてはいても胸が苦しくなったのを覚えています。
夫も含め心配してくれていた人たちは生まれたことにホッとしていたのだと思いますが、どんどん不安が膨らんでいく私は孤独でした。この気持ちを誰かに話せたらどんなに楽だったかと、今では思います。(京都府 女性 30代)
35週1700gで長男を出産しました。小さい赤ちゃんを産むと「自分のせいで」と自分を責める母親が多いと思います。
私自身「小さい」と言う言葉がとてもつらい時期がありました。そのような中、市の定期検診時の保健師さんが「小さく」ではなく「かわいくうまれたんだね」という表現をしてくださったことはとてもうれしかったです。
発達に遅れがあり、現在支援学級に通っています。保育園や療育施設での訓練など多くの方の支援によりマイペースながらも成長していますが、自分から積極的に動かない限りどのような支援が受けられるのかさえわからない状態だと思います。
出産から就学まで継続してサポートを受けられる支援制度になるよう願っています。(愛知県 女性 40代)
2人目を34週1800gで出産しました。NICUに1カ月ほど入院し、また心房中隔欠損という心臓の病気もあったため退院後もしばらく通院しました。
私自身は数日で退院したので、上の子を預けて冷凍した母乳をバスと電車を乗り継いで、毎日病院に届けるのが大変でした。時々保健師さんが自宅へ訪ねてきてくれたのはよかったです。
どこへ行っても小さい娘でしたが、今では私の身長を追い越し、看護師としてNICUに勤めています。(大阪府 女性 50代)
私は妊娠35週2138gで生まれました。生後すぐから新生児黄疸がひどく、光線治療と交換輸血を受けたそうです。
母の日記には、予定日より1カ月も早い出産に加え、輸血による後遺症の可能性などを医師から説明され、パニックで泣き続けたと書かれていました。
NICUを経て、2カ月後に退院。その後は順調に成長し、現在31歳。今年7月には第1子を出産しました。
背の順ではいつも前の方。要領も悪く、「自分には何か足りない機能があるのでは?」「将来子どもを持てるだろうか?」と不安がありましたが、元気な我が子を抱き、忙しくも幸せな育児の日々を送っています。
現状を悲観しすぎず、小さく生まれても元気に日々を送る人もいると、安心してください。(大阪府 女性 30代)
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
低出生体重児の中でも、1500gに満たない赤ちゃんは「極(ごく)低出生体重児」、1000gに満たない赤ちゃんは「超低出生体重児」とされ、小さく生まれるほど病気や障害のリスクは高くなると言われています。
人口動態統計によると、2021年に生まれた日本人の子どもは81万1622人。そのうち、低出生体重児は7.6万人(9.4%)で、1975年の5.1%から増加しています。極低出生体重児は0.8%、超低出生体重児は0.3%でした。
小さく生まれる背景には、早産や、双子などの多胎児の増加、妊婦への体重制限(やせ)や病気などが関係していますが、はっきりとした原因が特定できないこともあります。
背景のひとつである早産は、年間およそ20人に1人と言われています。早産は予防できるものではなく、母親が何かをしたから早産になるということではないそうです。
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