連載
#162 ○○の世論
マイナンバー制度「信頼していない」6割 内閣支持率の低下に影響?
世論調査を分析
マイナンバー制度への不信感が、岸田文雄内閣を直撃しています。朝日新聞の電話世論調査(7月15、16日)で、マイナ制度を「どの程度信頼しているか」と4択で聞くと、6割が「信頼していない」と回答。そうしたマイナ不信派では、内閣支持は3割を切り、不支持が6割に達しているのです。(朝日新聞記者・磯田和昭)
マイナンバー制度の信頼度は、朝日新聞の電話世論調査としては今回初めて質問しました。相次ぐトラブルで、制度そのものへの信頼感が揺らいでいるのではないか、と考えたからです。
「信頼している」という人は、「大いに」4%、「ある程度」34%をあわせて38%。「信頼していない」人は「あまり」42%、「全く」19%をあわせ、61%に上りました。
「あまり」と「全く」をあわせた不信派は、男性の56%に対して、女性は65%と多くなっています。年代別では、50代以上の各年代で不信派が約7割に達しました。
日本に住む一人ひとりに12ケタの番号を振るマイナンバー制度は、2016年にスタートしました。
その前年9月の世論調査で、自分の個人情報が一つの番号で管理されることに抵抗感がどの程度あるか尋ねると、「大いにある」が33%、「ある程度ある」が38%いました。もともと抵抗感の強い制度だったのです。
そして、健康保険証を来年秋に原則廃止し、マイナカードと一体化することについての賛否を聞きました。
7月調査では「賛成」が36%、「反対」が58%で、5月の「賛成」40%、「反対」55%と比べると、反対傾向が強まり、賛否の差が大きくなりました。
一体化への賛否それぞれで、マイナ制度に対する信頼度を見ると、違いがくっきりしています。賛成の人は信頼派が計77%に上るのに対して、反対の人では不信派が86%に達しているのです。
これらのデータから想定されるのは、保険証一体化への反発が収まらないなら、マイナ制度そのものへの不信感もくすぶり続ける可能性です。
マイナンバー制度への信頼度の違いで、岸田内閣の支持・不支持がどう違うか見てみました。
マイナ不信派(「あまり」「全く」の合計)では内閣支持が26%と、回答者全体で見た場合の37%より低く、マイナンバー制度への不信感が支持の押し下げ要因となっている様子がうかがえます。
政府はマイナンバーとひもづけされている情報などの「総点検」に乗り出しています。
こうした中で、7月調査では、「マイナンバーをめぐる、これまでの岸田内閣の対応」を評価するかどうか質問してみました。結果は「評価しない」が68%と、「評価する」(25%)を大きく上回りました。
8月上旬とされる総点検の中間報告、そして秋の総点検とりまとめ……。おそらく、この質問は折りを見てしばらく継続して聞くことになります。
なぜなら保険証一体化を予定通り進めるかどうかも含め、マイナンバーをめぐる対応が政権の浮沈を左右しそうだからです。
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