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食欲がない、寝付きが悪い…子どもの「五月病」かも?親ができること

小児科医のアドバイスは

学校に行きづらくなったり、心身の不調が出たり……もしかしたら子どもの「五月病」でしょうか?
学校に行きづらくなったり、心身の不調が出たり……もしかしたら子どもの「五月病」でしょうか? 出典: Getty Images ※画像はイメージです

目次

登園や登校をしぶる、食欲がない、寝付きが悪い……。子どものそんな様子、もしかしたら「五月病」かもしれません。新年度の疲れがたまり、不調が出やすいこの時期。子どものどんな様子に気をつければよいのか、子どものこころに詳しい順天堂大医学部付属順天堂医院の小児科医の田中恭子さんに聞きました。(朝日新聞記者・野村杏実)

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自律神経のバランスを崩しやすくなり…

――「五月病」とよく言いますが、どんな病気ですか。

五月病という医学的な用語はありません。5月に入って、学校に行きづらくなったり、頭痛や腹痛、何となくやる気がでない、だるいなど心身の不調が出たりすることを、「五月病」と言うことが多いです。

――不調を総称して言うのですね。不調になる原因は何ですか。

自律神経のバランスで、体の色んな機能がコントロールされています。

日本では進学や進級など、4月に色々なことが変わります。不安や緊張がある中で、子どもたちは新しい生活に前向きに取り組もうとする。

頑張り屋さんの子どもほど、困難やストレスがあったとしても、交感神経を優位にして、新しい環境になじもうと体を奮い立たせます。

でも5月に入ると、暖かくなって血管が拡張しやすくなったり、疲れが出てきたりして、自律神経のバランスを崩しやすくなり、不調をきたしてしまうことがあります。
順天堂大医学部付属順天堂医院の小児科医・田中恭子さん=本人提供
順天堂大医学部付属順天堂医院の小児科医・田中恭子さん=本人提供
――具体的には、どんな症状が出ますか。

子どもの場合、だいたい症状が三つに分かれると言われています。

一つ目は、心の疲れが体に出るケース。胃腸炎ではないのに下痢や腹痛を繰り返す、便秘がひどいなどのおなかの症状。立ちくらみ、体温が高めになる、不眠。じんましんや湿疹が続けて出るなど、皮膚にも出やすいですね。

二つ目は、行動に出るケース。落ち着きのなさや、過食・拒食といった食行動、元々適応していた社会的場面に行きづらくなってしまうなどです。

三つ目は、情緒的なものです。不安や緊張が高まって人と会うのがとてもおっくうになってしまったり、新たなことにトライしようとする意欲がなくなったりします。

基本は「生活リズムを整えること」

――「子ども」と言っても、幼児や小学生、中高生と幅があります。年齢で出やすい症状は異なりますか。

小さな子は、落ち着きのなさなど行動に出ることが多いです。小学生だと、頭痛や腹痛など、より体に症状が出てきます。中高生は立ちくらみや頭痛、下痢・便秘を繰り返すなどの症状が増えてきます。

――子どもの場合、不調を自分で説明できないこともありそうです。親はどんな様子に気をつけたらいいですか。

学校に行きたくないと言い出す、言葉数が少なくなる、食事量が減る、成績が徐々に落ちる、ふさぎ込んだような様子がある時などは、心身に何らかの不調がある可能性があります。

逆に、明らかにストレスになるようなことがあったと周りから聞いているのに、子どもは元気いっぱいに振る舞っているというのも心配ですね。

――そういった症状が出てきた時に、大人はどう接したらいいですか。

基本は生活リズムを整えることです。

ご飯を食べられない時に無理やり食べさせてしまうと、それがまた子どもにとってストレスになってしまう。

強制はせず、消化の良さそうなものを用意したり、「お父さん、お母さんも心配しているから、これだけはちょっと食べようね」などと声をかけたりします。

また、十分な睡眠も取れるように。寝る時間、起きる時間をある程度一定にすることが大事です。

「大人も疲れた時は休息するんだよ」と、ロールモデルとして親が休むところを見せることも大切です。
出典: Getty Images ※画像はイメージです
「何か困っていないかな」「心配しているよ」「何かあったら一緒に考えるよ」などと声をかけましょう。

言ってはいけないのは、いつもと違う様子の子どもたちに「何でやっていないの」「何さぼっているの」と頭ごなしに決めつけるようなことです。

お子さんが嫌だったこと、つらかったことを口にした時は、「嫌だったね」「つらかったね」と共感してあげましょう。

園や学校の先生たちと情報共有も

――仕事や子育てなど、慌ただしい毎日の中で、子どものささいな変化に気づけるか心配です。

大人が思う以上に、子どもたちは新しい環境に自分の心や体を適応させようとして頑張っています。

頭ごなしに叱る前に、できていることがたくさんあると思うので、「これ、できていてすごいよ」と褒めてあげてください。

何げないことでいいんです。例えば、おかずは少し残したけれど、ご飯はたくさん食べられたなら、「ご飯いっぱい食べられてよかったね」と褒めます。

ついつい残している方に注目してしまいますが、できたところを褒めてあげましょう。

弟や妹のお世話をしていたら「お世話をしてくれてありがとう」、順番待ちができたら「待っていてくれてありがとう」、自分から進んでお風呂に入れたら「自分からお風呂に入ってくれて助かったよ」。

通常見逃していること、聞き逃していることの中に、子どもたちを褒めることって、実はたくさんあるんです。

――褒めるのは、日常のルーティンでいいんですね。

少しうまくいかなくなっている時は、子どもたちも「できていないかも」「うまくやれていないかも」とやっぱり不安に思っています。

不安な時にできていないことばかり責められたら、「またできなかった」「お父さん、お母さんに怒られちゃった」「心配させちゃった」と、どんどん自信をなくし、意欲も出なくなってしまう。

具体的にできていることを褒め、無理しないで休むことが大事だと伝えましょう。
――2歳半の娘は、4月に入ってから保育園帰りに「抱っこ」と言うようになりました。友人の4歳の子は、最近夜泣きをするようになったと言います。これも環境変化の影響でしょうか。

それもあるかもしれませんね。子どもたちは、大人が思っている以上に色々なことを感じ取っていて、予測していなかったストレスや不安を感じると、症状が出てきやすいです。

医療機関では、「次はこういう検査するよ」などと事前に情報提供して、子どもたちが予測したりイメージしたりできるようにしています。

ご家庭だったら、「週末はお父さん、お母さんとお出かけするよ」「明日は学校で遠足があるよ」など、事前に説明してあげるのもいいですね。

不調が長引く時は、体や心の病気があったり、いじめなどの原因があったりするかもしれません。

医療機関を受診したり、園や学校の先生たちと情報共有したりすることも必要です。

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