今回、話題になったのは、BMIの問題の歴史を評価し、代替案を検討するAMA科学公衆衛生評議会の報告書(※1)の一部。
※1. AMA adopts new policy clarifying role of BMI as a measure in medicine
https://www.ama-assn.org/press-center/press-releases/ama-adopts-new-policy-clarifying-role-bmi-measure-medicine
そこで指摘されたのは、BMIは「人種/民族グループ、性別、ジェンダー、年齢層間の違いを考慮していない」という点でした。
例えば、BMIはもともと「主に前世代の非ヒスパニック系白人集団から収集されたデータ」に基づいており、「平均的な男性の体格」を明らかにするためのもの。これを世界中のさまざまな人々に一律に適用して肥満かどうかを判定してきたため、BMIは「人種差別的である」とも批判されてきました。
今回の勧告で、AMAはBMIが人種差別的に使用されてきたことを、「認識している」と表明。
AMAは「BMIは一般集団の脂肪量と有意な相関があるが、個人レベルに適用すると予測可能性が失われる」「肥満の基準としてBMIを適用する際には、人種/民族グループ、性別、ジェンダー、年齢などによる相対的な体型と組成の違いを考慮しなければならない」としました。
その上でAMA は、BMIを内臓脂肪、体脂肪率、体組成の測定、腹囲、遺伝的/代謝的要因など、その他の有効なリスクの基準と組み合わせて使用することを提案しています。 AMAの勧告は強制力のあるものではありませんが、AMA自体は同国内で医師に対する影響力の大きい組織です。
AMA前会長のジャック・レスネック・ジュニアさんは今回の勧告の中で、その目的を「医師が臨床現場でBMIを使用するメリットと限界を理解して、患者に最適なケアを決定できるようにするため」とコメントしました。
BMIは身長と体重さえわかれば簡単に計算できるため、便利な基準として普及しました。一方で、アメリカなどでは、BMIが保険の支払いの基準になることがあり、今回の勧告でも「BMIは、適切な保険の支払いを拒否する唯一の基準として使用されるべきではありません」と強調されています。
日本でも最近、BMIの数値などにより、生命保険の保険料が割引されるサービスが始まっています。
2世紀前に開発された、男性の平均的体格を明らかにするための、非ヒスパニック系白人集団から収集されたデータに基づいた指数である、BMI。ここ日本でも未だに採用されているのは、それだけ便利な基準だったと言えるものの、考えてみると少し不思議なことです。