ネットの話題
経験者だから分かる、心揺さぶられるダイエット情報 学生たちが発信
日本摂食障害協会のInstagramアカウント開設
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日本摂食障害協会のInstagramアカウント開設
経験したからこそ、心揺さぶられる情報が分かる――。ふつうに食べられなくなる摂食障害に悩んだ学生たちが、日本摂食障害協会のInstagramのアカウントを担当し、当事者やその家族に役立つようにと投稿を始めました。苦しんでいた頃は、SNSの情報で「やせなきゃ」という思いが強まっていたという大学生たちに、活動を始めた理由を聞きました。(withnews編集部・水野梓)
大学生たちが「学生部」をつくったのは、日本摂食障害協会が2022年、学生向けに「活動に参加しませんか」とメールマガジンで呼びかけたことがきっかけでした。
日本では、特に若年女性の「やせ」が問題になっています。20代女性の5人に1人がBMI18.5未満の「やせ」状態。コロナ禍では、摂食障害の子どもの患者が男女問わず増えているというデータもあります。
協会の呼びかけに応じた全国の学生たちが、初めてオンラインミーティングで集ったのは昨年11月。関東や石川、愛媛などから8人が参加しました。
そのなかで、「学生運営のSNSを始めたらどうか」という提案がありました。「摂食障害を経験した学生目線で、正しい情報を発信したい」とメンバーは考えたそうです。
石川県在住の女性(23)は「SNSの情報はあいまいだったり、間違っていることもあったり、何が正しいか分からない状況でした。学生部で投稿するときは、協会の医師や専門家の人たちにチェックしてもらって、情報の確かさを保証しつつ発信できると思いました」と話します。
投稿内容は、協会の医療関係者たちに情報の根拠を確認しつつ、受け手が症状を悪化させないように、ルールにのっとって投稿しています。
「やせた写真」は自分の体型と比較してしまうし、食べ物のことで頭がいっぱいになっているときには「食事の画像」は見たくない――。ルールには、当事者が苦しんでいた思いが反映されています。
Instagramを選んだのは、メンバーたちが使い慣れていることと、若い世代にアプローチしたいから。過食した食べ物の排出方法や、ネガティブな思いを発信しがちなTwitterよりも向いていると考えたからだそうです。
6月に開かれたオンラインイベント「世界摂食障害アクションデイ」の前には、告知も兼ねたインスタライブも実施。
学生部メンバーのひとり、千葉に住む女性(22)は、「インスタライブのコメントで、普段見て下さっている方がどんなことを考えているか、人となりを少しでも知ることができて嬉しかったです」と話します。
愛媛に住む学生部のメンバーの女性(22)は、「SNSの情報に影響を受けてきた側でもあるし、やせ願望につながった経験もあります。吟味して慎重に投稿すると、ぽんぽんと発信はできませんが、自分たちのペースで発信していきたい」と話します。
軽い気持ちで「じゃあやってみるか」と始めると、「からだが小さくなった、すごい」と感じたそうです。いま振り返れば、筋肉や水分がなくなって「しぼんだ」状態でしたが、ますます「食べなければいいんだ」と感じるようになり、数カ月で数十キロもやせてしまったそうです。
一方で、お盆で実家に帰省し、親が用意した食事を口にしたときから、一転して「過食」に走りました。
実家で食べ過ぎたとしても、ひとり暮らしの家で絶食すればいい――。そんな風に食事をとらえるようになり、一番しんどかった頃は学校で笑うこともできなかったと振り返ります。
「病気かもしれない」と感じ始め、さまざまなクリニックを受診しましたが、体重だけを見れば「やせ」ではないため、医師から的外れなことを言われて病状が悪化したことも。「もう病院はいいや」と諦めてしまったそうです。
今は、協会のイベントに参加できるほどまで回復してきましたが、「ヘルス系のYouTubeは全く見ないようにしています」と話します。
「でも、インスタも含めて、SNSは『おすすめ』に勝手に情報が出てきます。なので、インスタはスマホからアプリを消して、学生部の活動のためにiPadやパソコンからしか見られないようにしています」と話します。
愛媛の女性はいま、小学校の教員になることを目指して学んでいるそうです。
「先生を志す上で、いかに子どもたちへ『情報に使われないようにするか』を教えていかないといけないと思っています」と語ります。
SNSを無くすことは難しい。だったら、SNSの情報を鵜呑みにするのではなく疑ったり、やせている人の画像が出てきても「加工しているかもしれない」と考えたり――。
「自分自身がSNSの情報に振り回されてきてしまった過去があるので、子どもたちには『振り回されないで』『情報は自分から使っていって』と伝えたいです」と話します。
「今のネット環境のことを大人も知らなければいけないですし、もし子どもが見てしまってつらい気持ちになった時に、すぐ相談できる場を作ることも大事だと思います」と提案します。
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