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摂食障害の子どもの患者高止まり…保護者や養護教諭が気づけるサイン

ふつうに食べられなくなったり、過度なダイエットを続けたりする摂食障害。どんなサインに注意すればいいのでしょうか
ふつうに食べられなくなったり、過度なダイエットを続けたりする摂食障害。どんなサインに注意すればいいのでしょうか 出典: Getty Images ※画像はイメージです

目次

コロナ禍から子どもの摂食障害の患者が増え、高止まりしているとの調査結果もあります。子どもの摂食障害に気づくには、どんなサインに気を配ればいいのでしょうか。保護者や学校の養護教諭が対応できるポイントも紹介します。

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コロナ禍の環境変化やストレスが影響か

摂食障害とは、ふつうに食べられなくなってしまう心の病気です。やせ願望や太ることに恐怖があり、自己評価に体重や体型への過剰な影響があります。

体重が極端に減る神経性やせ症(拒食症)と、神経性過食症(過食症)に大きく分けられます。

拒食症は、過食した後に吐いたり下剤を使ったりといった「排出行動」があるタイプと、ないタイプに分かれます。食事のコントロールができずにむちゃ食いしてしまう過食症でも、嘔吐や下剤の乱用が伴うケースもあります。

出典:摂食障害情報ポータルサイト:摂食障害はどんな病気?

コロナ禍になって、子どもの摂食障害の患者数が増えたという調査結果があります。環境変化によるストレスや不安が原因ではないかと考えられています。

国立成育医療研究センターが全国の医療機関に尋ねたところ、2019年度と比べて2020年度に1.6倍に増えた神経性やせ症の女児・男児の外来患者数(有効回答24医療機関)は、2021年度でも2019年度に比べて1.6倍で、高止まりしたままだと分かりました。

新規の入院患者数(有効回答19医療機関)も、2019年度と比べて2021年度も1.5倍で高止まりしたままです。

「受診先にたどりつけない」 施設リストを公開

2022年11月に、摂食障害治療施設リスト(https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20221109p.html)をウェブで発表した摂食障害全国支援センターの関口敦センター長、井野敬子・副センター長に、話を聞きました。
――なぜ今回、摂食障害を診療する施設リストを発表したのでしょうか?

関口さん:なかなか受診先にたどり着けないという患者さんの声も聞いており、医療機関も「どこに紹介したらよいのか分からない」といった現状があり、各施設に問い合わせ、公開可能な施設をリストとして発表しました。

「紹介先」としても使ってもらえるよう、対応可能年齢・外来で対応できるBMI(体格指数)といった情報もあわせて掲載しています。

――摂食障害で体重が減って生理も止まってしまったけれど、なかなか診療してくれるところに出会えなかったという10代のケースも聞きました。

【関連記事】減り続けた体重は34キロに、いよいよ「入院治療」でハッと気づいた

関口さん:摂食障害の専門性の高い治療を受けられる施設は多くはありません。また、研修システムが整備されていないため、個人で勉強している医師が多く、大きな病院でも、その先生が異動してしまうと摂食障害を診療する人がいなくなってしまう施設もあります。

子どもの場合は、まず「かかりつけ」の小児科に相談していただくか、お住まいの精神保健福祉センターへ受診先を相談することをおすすめします。

もしくは、摂食障害「相談ほっとライン」(https://sessyoku-hotline.jp/)もあります。
摂食障害「相談ほっとライン」火曜日から金曜日の9時~15時に受付。当事者のほかにも、家族・学校関係者・医療福祉専門職の相談にも対応。
宮城・千葉・石川・静岡・福岡県にお住まいの方は、それぞれの支援拠点病院が相談窓口になっています
――保護者が子どもの摂食障害に気づくのは、どんな時が多いですか。

関口さん:成長期の子どもの体重が増えないときですね。しかし、自分がやせていることがばれないように、ぶかぶかの服を着る子どももいますし、一緒に食事をとらないケースや、隠れて排出行動があることもあります。

学校の健康診断などで子どもの体重が増えていなかったら、「あれ?」と気づいてほしいですね。

――日常生活で、子どもの摂食障害に気づくにはどんなポイントがあるのでしょうか。

井野さん:摂食障害全国支援センターが運営するサイト「摂食障害情報ポータルサイト」の「一般の方へ」で、チェックポイントが確認できます(https://www.edportal.jp/about/about_sign.html)。
 
出典:摂食障害情報ポータルサイト
井野さん:「体重が増えることを極端に怖がる」「食事に関して、形式的でこだわりの強い行動がみられる」「生理がとまる、不順になる」といった、摂食障害が疑われるチェックポイントが、体重に関するサイン/食事に関するサイン/過活動のサイン/排出行動のサイン/その他のサインによって、確認できるようになっています。

摂食障害はさまざまな症状の組み合わせなどで診断します。このなかの一つに当てはまったからといって診断がつくわけではありませんが、参考にして頂ければと思います。

自身がセルフチェックできるページ(https://www.edportal.jp/about/about_check.html)もあります。
出典:摂食障害情報ポータルサイト
井野さん:また、子どもや若年層での摂食障害が増えていることから、「10代のあなたへ」というページ(https://www.edportal.jp/trouble/trouble_teen.html)も新設しました。

「みんなダイエットしているのになぜ自分だけが病気なの?」「相談できないと感じたら?」といった若い世代の疑問に答えています。

養護教諭への「ゲートキーパー研修」も

――学校関係者が気づくケースもあるのでしょうか。

関口さん:養護教諭といった学校関係者が気づいてくれるのも大事なポイントですね。

日本摂食障害学会がゲートキーパー研修を開いています。
日本摂食障害協会の公開している動画(https://www.jafed.jp/ondemand-gatekeeper/)もとても分かりやすいです。
井野さん:「運動会へ出ていいのか?」といった対応に迷うこともありますので、養護教諭向けの資料を専門職の方向けのページ(https://www.edportal.jp/pro/material.html)にまとめています。

関口さん:摂食障害は、亡くなるリスクの高い心の病気でもあり、「医療とのつながりが切れてしまう」のが一番のリスクになると思っています。

子どもが受診をいやがったら、まずは保護者や家族だけが訪れて相談するのでもかまいません。頼れる医療機関を持っておくことが大事です。

――子どもが摂食障害と分かったとき、保護者にはどんなことができるでしょうか。

関口さん:治療者のサポーターであるという姿勢が大切だと思います。

心配するのも分かりますが、すぐに解決させようとしても、回復までには本人のペースがあります。

「食べたくない気持ち」がどこから出てきているのか、それが内省的に出てくるのがお子さんだと難しい面はありますが、「食べれば治る」「甘えている」といったことは言わないでほしいと思いますね。

「やせ礼賛」文化の影響も

――子どもにも摂食障害が増えている背景には、メディアの影響もあると思いますが、お二人はどう考えていらっしゃいますか。

関口さん:やはりメディアの「やせ礼賛」文化は如実にあると思います。

SNS動画にも、身長や体重から割り出した「シンデレラ体重」「美容体重」といった数値がいまだに出回っています。
特に18歳が成人になってから、18,19歳に向けたダイエットや美容広告も増えたと感じています。

井野さん:特に広告などでは、自己管理ができていない、すごく暗い顔をしていたりといったアンハッピーな太った人が、やせてハッピーになるというケースが多いですよね。

「やせていることがとても良いことだ」というメッセージは、裏返すと「太っていることが良くないことだ」というメッセージになります。ここで自己否定してしまう人もいるんじゃないかと個人的には思います。

関口さん:やせすぎには、成長障害や月経不順といったリスクもあります。とはいえ、「食べなさい」「体重を増やそう」といっても摂食障害は治りません。なぜ食べられないのか、そのモヤモヤに向き合いながら、治療をしていくしかありません。

その人の「やせ願望」につながる、社会的なやせ礼賛や、人間関係の難しさ、コロナ禍での環境変化・ストレスといった「背景因子」にも目を向けていく必要があると思います。

<この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。>
◆体験談をお寄せ下さい
コロナ禍を経て、「太るのが嫌で食べるのが怖くなった」「食事量が減った」など、子どもの「食べる」にまつわる変化はありましたか。ご意見や体験談をこちら(https://forms.gle/LzT2fKs6wzgxdrMP9)までお寄せ下さい。

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