連載
#17 小さく生まれた赤ちゃんたち
「超低出生体重児」で生まれた双子 親の不安や成長【当事者の声】
「不安だらけ」「普通とは何?」「親世代への周知を」
日本ではおよそ10人に1人が、2500g未満の低出生体重児で生まれています。朝日新聞のアンケートには、多くの親から体験談が寄せられました。今回は、1000g未満(超低出生体重児)の双子について意見をまとめます。
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
2022年末に朝日新聞が「小さく生まれた赤ちゃん」をテーマに体験や必要な支援を募ったところ、親を中心に1000件近い回答が寄せられました。
1000g未満で生まれた双子の赤ちゃんを育てる親からも「不安だらけだった」「生まれてくれただけで幸せ」といった声が届きました。体験談の一部を紹介します(年齢などの情報は2022年11〜12月当時)。
私は26週で双子を出産しました。男の子は920g、女の子は850gでした。
あまりにも小さくて「とにかく無事なのか?」と申し訳ない気持ちでいっぱいでした。「この先この子たちはちゃんと生きていけるのだろうか」と不安だらけでした。
現在2人は6歳になり、来年4月からは小学校に入学します。まだできないことはありますし、体も小さいです。でも元気にここまで成長しました。
病院の先生や看護師さん、家族や友人、幼稚園の先生、子どもたちのお友達の支えもあって、みんなで育ててもらって今があるんだなと感謝の気持ちでいっぱいです。
(東京都 女性 40代)
約5年の不妊治療を経て、体外受精で双子を授かりました。
妊娠を継続すると胎児も母体も危険との医師の判断で、予定日より2ヶ月半早く、妊娠29週2日で長男654gと長女889gを出産しました。
長男は15週のときに無脳症と診断され、おなかの中では生きられるが外の世界では生きられないと宣告されました。
長女のほうも羊水が少なく発育遅延と言われて経過観察で、なんとか1000gに達するまでは……と粘っていましたが、すぐにでも取り出したほうが良いとのことで緊急帝王切開になりました。
コロナ禍で家族にも会えず不安ばかりが募る入院生活でした。
(佐賀県 女性 30代)
私自身が双子で、28週のときに1000g未満で生まれました。
30年近く前の当時、父は「母、双子みんな助からないと覚悟して」と医者から言われたそうです。結果としては、母、双子ともに助かり、元気に暮らしています。
医療技術が発達したとしても、2500g未満で生まれてきた子たちの予後がどうかは誰にも分かりません。「何gの子が助かっているから目の前の子も助かる」とは安易に口に出してはいけない。
11月に正期産(妊娠37~41週)で生まれてきた次男を見つめながら、妊娠出産は奇跡なのだと改めて思います。
(静岡県 女性 30代)
我が家の双子の娘たちが、在胎22週1日で生まれた超低出生体重児です。その当時の存命の一卵性双生児の中では日本一早産なのではないかといわれています。
「存命の」と言う言葉で、この週数で生まれた子どもの生存率がいかに低いかが分かると思います。
我が家の場合、在胎日数の割には体重があったこと(500g超)や、早産児対応に慣れている病院で出産できたことなど、さまざまな幸運が重なり72時間の壁を越えて無事に退院できました。本当に奇跡だと思っています。
先が見えず不安になることが数え切れないほどありました。早産児でも元気に成長した事例など、ポジティブな情報がもっとあれば希望になるのではないかと思います。
(東京都 女性 30代)
双子でしたが、1人が23週おなかの中で死産、その3日後に24週0日605gで男の子を産みました。
「普通は」「普通は」と子どもが小さい頃によく言われました。「普通とは何だろう?」と何度も悩んだのを思い出します。
NICUから退院してからは感染症にならないか不安で潔癖症になり、精神的に追い込まれました。
出産後の、周りの何気ない言葉に一喜一憂するママ。1人で頑張らなくていいよ。生まれてくれただけで幸せなんです。
そんな我が家も今では何もなく、家族思いの立派な青年に育っています。
(茨城県 女性 40代)
娘が1000g未満の双子でした。今は小学生です。普通学級に通い、何事もなく過ごしています。
出生時1番の悩みは、妻のことでした。小さく、早く産んでしまった気持ちがなかなかなものでした。NICUの看護師さんや皆さんが支えてくれましたが、妻のケアがさらに充実してくれると良いなと思います。
あとは、私の親世代に対して周知が進んでくれるとうれしいです。誤った情報で、妻に言った一言がきっかけで、私の両親と疎遠になりました。娘とはまったく会っていないので、寂しい気持ちですが、自分の家庭を優先するために、私の両親には会わせていません。
ぜひこの機会に、小さく生まれた赤ちゃんのことを周知してほしいです。
(神奈川県 男性 30代)
我が家の双子は23週で500g以下で生まれました。
文字通り生きるか死ぬかの瀬戸際をくぐり抜けて生まれてくれました。小さい赤ちゃんによくある数々の問題にも接し、とにかく生きていてくれればと祈るつらい日もありました。
しかし、現在4歳になった双子はそれぞれ発達障害児と重症心身障害児で、これから先の不安の方が遥かに大きくなりました。
今、目の前のことでいっぱいいっぱい。あの頃の気持ちは正直言って薄れてしまいました。小さく生まれたけど元気に育ちました、なんて気楽なことはとても言っていられないのです。
(群馬県 女性 40代)
うちは双子の女の子で、608gと466gの2人で1000グラムくらいの超低出生体重児でした。
生まれた我が子を見て「このまま育っていけるだろうか」「生きられるのか」と不安ばかりが頭をよぎりました。看護師さんや先生からたくさんお話ししていただき安心できるようになりました。
今は14歳になりました。1人は全盲です。2人とも障害がありますが、その子なりのペースで頑張っています。他の人にはできない子育てを経験できるので、前向きに頑張ってこれからも育てていきたいと思います。
1人じゃないんだよということは忘れないでくださいね。
(福島県 女性 40代)
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
双子の場合は半数が早産になり、出生時の平均体重はおよそ2200gです。
低出生体重児の中でも、1500gに満たない赤ちゃんは「極(ごく)低出生体重児」、1000gに満たない赤ちゃんは「超低出生体重児」とされ、小さく生まれるほど病気や障害のリスクは高くなると言われています。
人口動態統計によると、2021年に生まれた日本人の子どもは81万1622人。そのうち、低出生体重児は7.6万人(9.4%)で、1975年の5.1%から増加しています。極低出生体重児は0.8%、超低出生体重児は0.3%でした。
小さく生まれる背景には、早産や、双子などの多胎児の増加、妊婦への体重制限(やせ)や病気などが関係していますが、はっきりとした原因が特定できないこともあります。
背景のひとつである早産は、年間およそ20人に1人と言われています。早産は予防できるものではなく、母親が何かをしたから早産になるということではないそうです。
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