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おもちゃも「多様性」の時代、親の向き合い方は? 玩具研究者に聞く

「ダイバーシティトイ」を積極的に買い与えたほうがいい?

親は多様化するおもちゃにどう向き合えばいいのか。専門家に聞きました(画像はイメージです)
親は多様化するおもちゃにどう向き合えばいいのか。専門家に聞きました(画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

ダウン症の「バービー人形」が発表されるなど、おもちゃにも多様な表現が進んでいます。自分が子どもの頃にはなかった「多様性」のあるおもちゃに、親はどう向き合えばいいのでしょうか。玩具研究者で白百合女子大学教授の森下みさ子さん(児童文化・玩具文化)に聞きました。

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大切なのは「対話」や「体験」

ーー2023年4月、米おもちゃ大手のマテル社は、ダウン症のバービー人形を発表しました。これまでも義足や補聴器をつけた人形、車いすに乗った人形など、多様なバービー人形を製作しています。

「様々な見た目の人を表現するのは悪いことではありません。バービー人形は視覚優位のおもちゃで、女の子の〝モデルアイコン〟として人形のイメージを統一してしまったところがあります。そのバービー人形が、さまざまな見た目を採り入れることには意味があると思います」

「一方で、おもちゃに大事なのは『多様性』という言葉を貼り付けることではなく、遊び手とおもちゃがどのように『対話』をするか、どんなふうに遊びを通して多様性を体験するかということです」

「おもちゃ遊びは、人が生きていく上での基盤を作ると考えています。人間が生きていく上では、人や物とのかかわりが重要といえます。そのかかわり方の基盤を作っていくのが、おもちゃで遊ぶということです。自分と違う他者とどうつながるか、どう対話をするかが遊びを通して体験されると考えています」
 
ーー具体的にはどのようなことでしょうか。

「例えば、子どもと人形が出会ったばかりの頃は、まだ対話が成立していません。しかし、実際に触れて対話しながら遊ぶことで、かけがえのない『わたしの人形』になります。対話を通して物である人形との関係が生まれ、一緒に遊んですごく楽しいという体験が蓄積されていきます」

「また、『わたしの人形』と友達の人形を遊ばせることでも新たな関係が生まれます。最初はうまく話せなかったりぎこちなかったりした相手でも、人形を介した遊びを通して楽しい体験ができると、それが多様なかかわりを育むきっかけになります」
 
玩具研究者で白百合女子大学教授の森下みさ子さん
玩具研究者で白百合女子大学教授の森下みさ子さん

多様性のあるおもちゃ、買い与えたほうがいい?

ーーいまの親が子どもだった時代は、おもちゃの多様な選択肢が少なかったと思います。「多様性を学んでほしい」と子どもに買い与えたほうがいいのでしょうか。

「おもちゃ売り場では『ダイバーシティトイ』と名前をつけているところもありますが、親が『多様性を教えなければ』と買い与えるのでは本末転倒だと思います。それは『遊び』になりません。子どもの側から関心をもってかかわりたいと思うことが大事です」

「『多様性玩具』という言葉だけがひとり歩きすると、それ以外のおもちゃに本来ある多様な遊び方が見えにくくなってしまう危険性もあります。大切なのは、『多様性』という名詞ではなく、『多様性を遊ぶ』という動詞です。おもちゃは、もともと多様性を発揮するものだと思います」

ーーもともと、ですか?

「人形が商品化される前は、使わなくなったしゃもじやスプーンに目鼻をつけたり、トウモロコシのひげを髪の毛にしたり、身近な物を人形に見立てて遊ぶこともありました。子どもの想像力によって、さまざまな人形がありえるわけです」
 
「物から人に対してかかわり方の意味を提供することを『アフォーダンス』という言葉で表すことがありますが、子どもたちは遊び相手として『ものの声を聞く力』を持っていると思います。物が発している『遊ぶ』というアフォーダンスに応えて、子どもがおもちゃと対話することで、おもちゃは多様性を発揮するといえます」
 
画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images
ーー昔から「対話」があったのですね。

 「おもちゃに時代の変化は当然ありますが、根本にあるものは変わりません。ベーゴマがもとになっている『ベイブレード』で遊ぶときにも、パーツを選んだり、回し方を工夫したりすることで対話が生まれています」 

「ベイブレードを遊びつくした子が、ベーゴマに興味を持つこともあります。ベーゴマは手になじませて回せるようになるまで時間と労力がかかるため、その分対話が密に行われて、より貴重な相棒になっていきます。うまく回せなかったコマと対話できるようになるということは、うまく話せなかった人や自分と異なる人とでも関係が持てる可能性にもつながると思います」

「おもちゃという言葉は、『持ち遊び』がもとになっています。持って遊ぶということは『触れ合う』こと。ベイブレードにもベーゴマにも触れ合う要素はあります」
 
「コロナ禍で人と人との触れ合いは抑制されましたが、本来はとても大事な体験です。おもちゃを介して遊ぶことによって、コロナ禍で削(そ)がれてきた密に触れ合う関係を取り戻してほしいと思います」
 
バービー人形を手にする白百合女子大学教授の森下みさ子さん
バービー人形を手にする白百合女子大学教授の森下みさ子さん

親もおもちゃと対話を

――子どもに「このおもちゃで遊んでほしい」と考えてしまう保護者は多いと思います。

「親が子どもの遊びにかかわるとき、例えば『このおもちゃとも遊んでほしいな』と思うものがあったら、まず親が子どものころの感覚を思い出しておもちゃと対話をしてみてください。その上で『一緒に遊ぼう』と子どもを誘うのもよいのではないでしょうか」

「親がおもちゃを押し付けるのではなく、子どもと一緒に楽しく『遊ぶ』。遊ぶことの楽しさを見失わずに、おもちゃが発揮する多様性を体験するということが大事だと思います」

※この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

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