ネットの話題
筆メーカーが「#サヤダメゼッタイ」 書道思い出し反省の声続々
「『よかれ』と思ってつけているサヤが、筆の寿命を…」
創業1716年、伝統ある奈良の筆メーカーが先月 、「#サヤダメゼッタイ」の#タグをつけて発信した情報が、ツイッターで2万件以上の「いいね」を集めました。筆メーカーがつぶやく「サヤダメゼッタイ」とはなんなのか、話を聞きました。
「#サヤダメゼッタイ」をつぶやいたのは、奈良の筆メーカー「あかしや」です。
あかしやの問い合わせ窓口 には、昔から「不良品」として毛抜けの筆が送られてくることがありました。保管状態を聞き取ったりすると、そこにはある共通点が。
それが、「サヤ」の装着です。
サヤとは、筆の穂先にかぶせてある透明なキャップのようなもの。
あかしやでは、サヤは輸送時のショックから穂先を守るためにつけていますが、返品された毛抜けのある筆の保管状況を聞くと、筆の使用を始めてからも、鉛筆やペンの「キャップ」のように、サヤをはめ続けてしまっているケースがあるといいます。
ツイートではそれについての注意喚起をするため、「新しい筆をおろしたら付属のサヤはすぐにお捨てください」「ご使用後、サヤをして保管されますと、筆の穂が腐って使えなくなります」と記しています。
(聞こえますか…春からお習字を始めるお子様方…保護者の皆様…)
— 株式会社あかしや【公式】 (@AkashiyaFude) March 13, 2023
(新しい筆をおろしたら、付属のサヤはすぐにお捨てください…)
(ご使用後、サヤをして保管されますと、筆の穂が腐って使えなくなります…)
(サヤはすぐにお捨てください…筆屋からのお願いです…)#サヤダメゼッタイ pic.twitter.com/LR0hTKIsUN
このツイートについて「よかれと思ってやっていた」「初めて知った」など、驚きの声が寄せられました。
さらに、あかしやではツイッターの投票機能を使い、「筆の使用後、サヤはどうしていたか」を質問。すると、投票数1万1258件のうち、「穂先に付け直していた」と回答した人が約7割を占めました。
この反響について、あかしやで筆の製造を担当する中井慎也さんは、「『筆にフタしたら腐るだろう』と、(サヤをはずすことは)当たり前のことだろうと思っていたので、結果には驚きました」。
中井さんによると、あかしやに返品される筆のうち「腐り」が原因のものは、それを誘発しているのがサヤの装着である場合が「かなりの割合」だといいます 。
話題になったツイートを投稿した同メーカーの岡江結香さんは、「お客様からすると『腐った』という認識ではなく、『毛が抜けるな』『なんか変だな』という認識だと思います。原因を伝えることで、悲しい思いをする人が減るかなと思ったんです」と話します。
サヤには、筆が使用者の手元に届くまでの輸送や販売の間、穂先を「保護」する役割があります。
筆は、筆自体の製造が終わったあとも、軸に名前を入れるといった工程があります。「筆は穂先が命」(中井さん)であるため、工程の中で、穂先をどこかにあててしまうことはあってはなりません。
それは出荷し輸送される間も同じです。「我々としては、サヤは『梱包用の資材』という認識です」と中井さんは話します。
ツイッターでは「(サヤは)キャップだと思っていた」という声もありましたが、そう思ってしまうのも無理はないと、中井さんは感じています。
「筆ペンはキャップをしているし、普段使ってるペンにもキャップがついていることもあるでしょう。そのイメージで、はずさないのだろうと思います」
「そうやって、『よかれ』と思ってつけているサヤが、筆の寿命を縮めているのは悲しいことです」と話します。
岡江さんは「筆は扱いが面倒くさい道具だと思います。でも、お手入れをしながら大事に使うことが学べる道具でもあります。扱い方によって、書き味が変わっていくのを知ることも含めて、表現や創作だと思っているので、筆を好きに使い、楽しんでほしいです」と話しています。
1/2枚