連載
#156 ○○の世論
日韓関係「よい方向に進む」37% 年代で評価に差が出た理由は
首脳会談の評価、世論調査を分析
となり同士の国なのに、政治的なわだかまりが解けないままだった日本と韓国。久しぶりに韓国大統領が来日し、直後の朝日新聞社の世論調査で、首脳会談自体は「評価する」という回答が6割を超えました。ですが、今後の日韓関係については「よい方向に進む」という見方より、「いまと変わらない」という見方の方が多く、一気に関係改善に向かうのか、疑念も消えてはいないようです。(朝日新聞記者・磯田和昭)
調査は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し首脳会談が開かれた3月16日の直後、18、19の両日に電話で行いました。
日韓関係については3問と多めに割り当て、まず、首脳会談を評価するかどうか聞きました。
こうした質問は、会談の中身など、調査対象者に与える情報で回答が微妙に変わる可能性があります。今回は「岸田首相と韓国の尹錫悦大統領は、日本で首脳会談を行いました」と切り出したうえで、会談を評価するかどうか尋ねるシンプルな質問にしました。
結果は、「評価する」が63%で、「評価しない」(21%)を大きく上回りました。
「評価する」割合は、若年層から40代にかけてが5割台なのに対して、50代、60代ではほぼ7割と多く、70歳以上では、77%に達しました。
年代別のこうした違いの要因は、今回の調査だけでは判然としません。
ただ、岸田内閣への支持が年代が上がるほど、おおむね高くなる傾向があり、それが反映している可能性はあります。
2問目は、戦時中に朝鮮半島から労働力として動員された「徴用工(ちょうようこう)」の問題です。
日韓関係が「戦後最悪」と言われるようになったのは、元徴用工に対して日本企業の賠償を命じる韓国の判決が2018年に確定して以降のことでした。
これをきっかけに、半導体関係の貿易や安全保障をめぐっても、ぎくしゃくが続いてきました。
そこで、韓国側は今回の大統領訪日に先立ち、まず元徴用工への賠償支払いを韓国の財団が肩代わりする「解決策」を公表して、地ならしを一気に進めました。
この解決策を評価するかどうか、今回調査で聞くと、「評価する」が55%と半数を上回り、「評価しない」という回答は28%でした。
こうした歴史認識をめぐっては、日本側には、元慰安婦の問題で苦い記憶があります。
2015年に不可逆的、つまり蒸し返さないという合意が日韓の間で成立しましたが、その後の韓国の政権交代で事実上棚上げのような形になったのです。
徴用工問題の「解決策」があったからこそ、今回の首脳会談が実現するなど関係正常化の歯車が大きく回り始めたのですが、評価が半数をやや上回る程度になったのは、日本側として手放しでは評価できないというところなのでしょうか。
ちゃぶ台返しへの懸念は、自民党保守派の意見などとして報道されています。
ですが、自民支持層に絞って「解決策」を評価するかどうか見てみると、「評価する」が64%で、全体の55%より多くなっています。
北朝鮮の核・ミサイル開発などを考えれば、韓国との関係はよくすることが必要だという「割り切り」があるのかもしれません。
1問目(首脳会談の評価)、2問目(徴用工問題の解決策の評価)ときて、最後に今後の日韓関係がどうなると思うか聞きました。「よい方向に進む」が37%で、「今と変わらない」が57%。「悪い方向に進む」が3%でした。
首脳会談、徴用工問題の「解決策」いずれで見ても、「評価する」人は、日韓関係が「よい方向に進む」と見る割合が半数近くになっています。
「よい方向に進む」という回答は年代が上がるにつれ、多くなっています。
「今と変わらない」という答えは、若年層で目立ち、18~29歳では72%、30代では67%にのぼっています。
K-POPなどを通じて韓国文化に親しみのある世代には、ここ数年の「戦後最悪の日韓関係」も、そんな風には映っていなくて、今後も「今と変わらない」という答えの多さにつながっているのかもしれません。
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