今月2日、あるニュースが世界を沸かせました。エジプト当局が、首都カイロ近郊ギザにある世界最大の「クフ王のピラミッド」内部に「通路のような形状の空間」が見つかったことを発表したのです。
日本の名古屋大などが参加する国際プロジェクトチームが発見したもので、ピラミッド内部の構造を解明する手がかりになるとみられます。
クフ王のピラミッドは約4500年前に建造されました。底面の1辺が230mの正四角すいの形状をしており、高さ139m。この国際プロジェクトは2015年に始まり、宇宙放射線で建物を透視する特殊な技術を活用して調査をしていました。
さて、このニュースで、そんなピラミッドの“内部”の様子が気になった、という人もいるのではないでしょうか。実は昨年、ピラミッド内部を自由に探索できる3DバーチャルツアーがSNSなどで注目されていたのです。
それが米ハーバード大学が提供するウェブサービス「Inside the Great Pyramid」。同大学の学術プロジェクト「Giza Project」の一環として提供されています。
同サービスによれば、このプロジェクトの目的は“ボストン美術館とハーバード大学のエジプト・ギザ遠征隊(1904-1947年頃)の考古資料をすべてデジタル化し、オンラインで誰でも自由に利用できるようにすること”。
“バーチャル環境と100年以上にわたるギザの学術的研究を統合し、遠い過去を研究し、この重要な文化遺産に関する知識を未来に残すため”に、こうしたサービスを展開しているということです。アカウント作成をすれば無料で利用できます。
Inside the Great Pyramid - Giza Project
昨年秋にSNSで注目され、関心が集まっていました。名古屋大学高等研究院准教授・古代エジプト研究者の河江肖剰さんも
Twitterで紹介しています。
<ハーバード大学のギザ・プロジェクトが大ピラミッド内部の360度バーチャルツアーを公開。
Matterportによるものだと思われるが、私たちのレーザースキャンデータやSFMによる3Dデータと組み合わせると面白そう。>
同サービスの担当者ルーク・ホリスさんに話を聞きました。ルークさんは「クフ王のピラミッド」の未知の空間について「有望な発見であり、すばらしい」とコメント。
「(記者訳)もっともよく研究され、公開されたモニュメントからさえ、学ぶべきことがまだたくさんあることをこの分野で認識することが重要です。私たちの文化のデジタル化とデジタル記録は、かつてないほど重要になっています」
実際に利用してみると、クリックする度に深部へと進んでいける体験は、まさに「ツアー」。同サービスでは、普段は立ち入り禁止だという地下室への下降通路も見学することができます。
古代の雰囲気を残す石づくりの回廊から、人の手が入って整備された階段、映り込む最新機器など、ピラミッドの中のリアルな様子を知ることが可能です。
そんなサービスに、SNSでは「一人インディージョーンズ」「閉所恐怖症でもいける」などの感想が広がりました。ニュースで興味を持ったという方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。
※3月13日12:10 担当者のコメントを追記しました。