連載
#154 ○○の世論
児童手当の所得制限、続けるべき? 自民党幹部も「意外」な結果に
しかし、子育て世代の世論をみると…
「世論の反応は意外だった」――。自民党幹部が漏らしたのは、2月中旬、児童手当をめぐって「所得制限を続けるべきだ」という意見が多数になる調査結果が相次いだからです。いったんは、自民党も含めた各党が制限撤廃で足並みをそろえたかに見えましたが、政府が3月末に、少子化対策のたたき台を「パッケージ」として打ち出すまで、紆余曲折がありそうです。(朝日新聞記者・磯田和昭)
朝日新聞社は2月18、19の両日に実施した世論調査(電話)で、児童手当の所得制限について、「続けるべきか」「やめるべきか」と質問しました。
「続けるべきだ」が54%と半数をやや上回り、「やめるべきだ」は42%でした。
ただ、18~29歳で見ると、所得制限を「やめるべきだ」が63%と多く、30代でも「やめるべきだ」が51%でした。
自民党幹部が「意外だ」という反応を見せたのは、回答者全体の割合であって、子育て世代に限ってみた調査結果ではありません。
50代以上では「続けるべきだ」が6割以上を占めていて、これが全体として所得制限を「続けるべきだ」を増やす結果につながっています。
少子化対策は今年になって、にわかに政策課題の焦点に浮上しました。
昨年の出生数が初めて80万人を割り込む見通しになったことがあるのかもしれません。
政府は、3月末までに具体策のたたき台をまとめる方針で、岸田文雄首相は週末に、子育て支援の先進的な取り組みの視察を続けています。
こうした中で、2月調査では、岸田首相の少子化対策の取り組みに対する評価を4段階で聞いてみました。
すると、「評価しない」という回答が「あまり」(45%)、「全く」(15%)をあわせて、60%にのぼりました。「評価する」という人は、「大いに」(3%)、「ある程度」(33%)をあわせて36%にとどまっています。
とりわけ、評価が厳しいのが、子育て世代でもある30代です。
5人に1人が「全く評価しない」とダメ出ししていて、「あまり評価しない」とあわせると、7割ほどが「評価しない」と答えました。
調査の直前には、首相の掲げる「将来的な子ども予算の倍増」をめぐって、政府側が首相答弁を事実上修正する一幕もありました。
「倍増」などと勇ましいかけ声と裏腹に、いっこうに中身が見えてこないことに、世論の不満があるように見えます。
岸田内閣の支持率は2月調査で35%と、1月と同じ。不支持率は53%で、1月の52%から横ばいでした。
低空飛行ですが、何とか高度を保っている状態です。
支持率に少子化対策への取り組み評価が、どう関係しているのか見てみます。
4択で聞いた回答を、「評価する方」「評価しない方」にくくって内閣支持・不支持を見ると、「評価しない」方では不支持が68%と高くなっています。
まだ具体策の検討中ですら、こんな具合ですから、児童手当の拡充策など具体策がパッケージで打ち出されても、その評価次第では、支持底上げにつながらないことも十分予想されます。
児童手当の拡充については、限られた財源をあてるのだから、生活の苦しい子育て世帯向けの手当増額などに使うべきだという意見もあります。
自民党幹部の漏らしたように「意外」な結果かどうかはともかく、世論調査が政策論議に生かされるのは、大歓迎です。
ただ、生かしてもらえるのだとしたら、調査結果の大枠だけではなく、子育て世代に絞ってみた結果など、その内実までしっかり見てもらいたいものです。
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