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#150 ○○の世論

1月の「支持率」なぜ高くなる? 岸田内閣は負のジンクスを破れるか

衆院予算委員会で、答弁中に厳しい表情をする岸田文雄首相=2023年2月1日、国会内、上田幸一撮影
衆院予算委員会で、答弁中に厳しい表情をする岸田文雄首相=2023年2月1日、国会内、上田幸一撮影 出典: 朝日新聞

目次

1月の内閣支持率は例年高めに出る……そんな傾向が今回も見られました。1月21、22日に実施した朝日新聞の全国世論調査(電話)で、岸田文雄内閣の支持率は35%と、2021年10月の内閣発足以来最低となった昨年12月の31%と比べると、やや持ち直しました。

「お屠蘇(とそ)効果」との見方もあり、2月以降も続くのか、それとも寒波が厳しさを増すのかは見通せません。(朝日新聞記者・君島浩)

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11年間の世論調査、支持率上昇は半数超

民主党から自民党が政権を奪還したのは10年前の2012年12月でした。

直後に組閣した第2次安倍晋三内閣から今年1月まで、年末から春先にかけての内閣支持率を振り返ってみました。

 

今回を含め11年間の12月から1月にかけての調査をみると、支持率が同一だったのは2例。低下したのは3例で、上昇したのは6例と半数を超えました。

低下した例のうち、2012年12月の59%から2013年1月の54%への変化は、当然と言えます。

前述したように、12月の衆院選で自民党が大勝し、安倍内閣が誕生した直後なので、いわゆる「ご祝儀効果」で支持率が跳ね上がっていたのです。

翌年1月にその熱気が薄れたのでしょう。

同様に2014年12月も衆院選で自民党が大勝した直後で、支持率が12月の43%から2015年1月に42%と微減したのも理解できます。

菅義偉内閣時代の2021年12月から2022年1月にかけては、支持率が39%から33%に低下しました。

東京五輪で首都圏の会場を無観客にすると決めたことについて取材に応じる菅義偉首相=2021年7月9日、首相官邸、上田幸一撮影
東京五輪で首都圏の会場を無観客にすると決めたことについて取材に応じる菅義偉首相=2021年7月9日、首相官邸、上田幸一撮影

年末年始を挟み、菅氏の側近だった元法相の選挙買収事件や、やはり菅氏に近い元農水相の贈収賄事件など「政治とカネ」の問題がくすぶっていました。

さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大で、菅氏肝いりの「Go To トラベル」が停止に追い込まれ、緊急事態宣言の発出が後手に回ったことなどが批判されたことは、まだ記憶に新しいところです。

1月の内閣支持率が12月に比べて上がることが多いのは、1月調査が様々な議論を呼ぶ年末の予算編成が終わり、与野党の論戦が始まる通常国会の前に行われるからだという見方もできます。

波風が立っていない、嵐の前の静けさの中での調査とも言えます。

元旦で「リセット効果」があっても…

岸田首相は今年1月4日の年頭の記者会見をこう切り出しました。

「今年の干支は癸(みずのと)卯(う)。去年までの様々なことに区切りがつき、次の繁栄や成長につながっていくという意味がある」

岸田内閣の支持率は、昨年前半は上り調子だったものの、大勝した参院選後は、安倍元首相の国葬問題や、平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題、自民党政治家の「政治とカネ」の問題などが相次ぎ、下降の一途をたどりました。

首相としては、年末の不当寄付勧誘防止法(被害者救済新法)の成立、4閣僚の辞任や、首相の外相時代に外務副大臣を務めた衆院議員の辞職などで、一区切りをつけ、心機一転、新年に臨みたかったのでしょう。

衆院本会議で施政方針演説を行う岸田文雄首相=2023年1月23日、国会内、西岡臣撮影
衆院本会議で施政方針演説を行う岸田文雄首相=2023年1月23日、国会内、西岡臣撮影

元旦を迎えると、国民も気分が一新し、嫌なことは忘れるので支持率が上がる「リセット効果」があるとの見方もあります。1月の支持率が持ち直したことをみれば、今回もこうした効果があったのかもしれません。

しかし、物価高の問題に明るい兆しは見えません。

昨年12月に41年ぶりに消費者物価指数の上昇率が前年比4%台に達しました。1月の世論調査では、首相の経済政策に「期待できない」と答えた人は73%にのぼり、昨年10月の69%からさらに増えました。

また昨年12月、首相が打ち出した5年間の防衛費1.5倍増とそれに伴う1兆円増税問題も逆風となりそうです。

 

昨年12月と今年1月に実施した調査では、防衛費増税のため約1兆円を増税する方針の賛否を尋ねました。

質問文が少し異なるので、単純比較はできませんが、それでも、賛成が2割台、反対は7割前後で、反対が賛成を大きく上回るという傾向は変わりませんでした。

数字を子細にみると、変化がかい間見えたのは、自民支持層の心情です。

昨年12月は賛否とも47%で並んでいましたが、1月は賛成37%に対し、反対は58%と多数を占めました。

自民支持層の後押しが必要な防衛政策をめぐって、反発が強まっているのは、首相にとっては気がかりな点になるでしょう。

年明け3割台のジンクス 破れるか

岸田内閣の支持率は1月の35%から今後、V字回復をたどるのか。それともL字形で低迷し続けるのか。

これまでの例をもう一度見返したところ、年明けに支持率が3割台だった例は2020年1月の安倍内閣の38%、2021年1月の菅内閣の33%の2例だけでした。

 

20年の安倍内閣では、5月下旬には、政府の判断で検察幹部の定年を延長する検察庁法の改正や、賭けマージャンをめぐる問題などで支持率は29%に低下。

21年の菅内閣は、8月に東京五輪直後のコロナの感染拡大などで支持率は28%を記録しました。

2012年12月から今年1月まで、電話調査で計140回、内閣支持率を調査していますが、3割を切ったのは、この2回のみ。そして、両内閣とも、その年の秋に退陣しています。

岸田内閣がこのジンクスを破れるかどうか。重要政策課題への取り組みに加え、4月の統一地方選や衆参補選、5月の広島サミットなどが内閣のヤマ場となりそうです。

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