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「助けて」の声量は誰にも負けない 育児「幸せの中で格闘」マンガに

ダルダルのダル子さん提供
ダルダルのダル子さん提供

目次

育児の苦労をくすりと笑える4コママンガとして描き、SNSで人気を集めるダルダルのダル子さん。未経験からマンガを描き始めたダル子さんは、なぜ忙しい育児の合間を縫って毎日更新を続けるのでしょうか。大変なことがあっても「幸せの中で幸せのために格闘している」というダル子さんに話を聞きました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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親になることへの不安は今

InstagramTwitterに育児4コママンガを投稿、子どもを持つ親を中心に人気を集め、それぞれ5万人以上のフォロワーがいるダルダルのダル子さん(以下ダル子さん)。2022年12月にはマンガを掲載するブログが「ライブドアブログ OF THE YEAR 2022」の新人賞にも選ばれました。

「ボーヤ、寝ない」「私の鼓膜はおわり」「サメ人間vs乳首」といったタイトルからも伝わるように、育児の苦労を描きつつも、読者に悲壮感を抱かせることなく、明るく笑わせてくれる作風が印象的です。
ダルダルのダル子さん提供
ダルダルのダル子さん提供
1月17日に投稿された作品「今日も育児スッゾ!」では、平日ワンオペ開始から半月が経過した様子が描かれました。料理に使うキャベツを持ちながら住民票をぐしゃぐしゃにして持ったお子さん=ボーヤを追いかけたダル子さん。

「仕事ばかりだった妊娠前は想像できなかった姿。『親になれば自分の中の何かが変わってしまうかも』と闇雲に不安がってたんですが、ぼんやり危惧していたような怖い出来事は起こりませんでした」とコメントしました。

そんなダル子さんは2021年9月に未経験からマンガを描き始めました。もともとイラストなどが得意だったわけでもないとのこと。それにもかかわらず、この1年はほぼ毎日ブログを更新し、作品をネット上に発表し続けています。ただでさえ忙しい育児の傍ら、なぜマンガを描き続けるのか、ダル子さんに話を聞きました。

記録は記憶より精一杯で泥臭い

――マンガを描きたいと思う人はいても、実際にマンガを描いて、それを公開する人は多くありません。ダル子さんはどうやってそのハードルを越えたのでしょうか。

最初のマンガを描いた当時は妊婦で、つわりに苦しんでいて、“ヒステリーの塊”でした。だからこそ、逆にそれ以外のことに恥ずかしさなどを感じる余裕がなかったのだと思います。

もともと日記を書く習慣があるのですが、妊娠中は毎日、初めてのことが起こります。何がツラいかを文章で上手くまとめられずに悩み、マンガにたどり着きました。

追い詰められたゴキブリと同じ(記者注:ダル子さんは自宅に出現したゴキブリとの格闘もマンガにしている)で、「最期に一発」という気持ちがあった気がします。

当時を振り返ると、コロナで仕事もなくて、マンガがどう受け止められるかより、出産や今後のことの方が不安でした。その意味では怖いものなしだったので、投稿ボタンが押せたのだと思います。

――ダル子さんは一年以上、ほぼ毎日ブログを更新されています。たとえ強制されたとしても難しいことではと感じますが、ダル子さんが自ら、毎日マンガを描くのはなぜでしょうか。

「いま頑張っていることを忘れるのがもったいない」と感じるからです。

振り返れば一瞬で、「美しかった」としか覚えていないことも、具体的な記録が残っていると、記憶より精一杯で泥臭い、という場合もあるんじゃないかな、と。

私の毎日は、適当なことを言って怒られたり、感情的になったり、“壁に向かって全力疾走する”ようなことがほとんどです。

将来の私が、事実以上に過去を美化したり、蔑ろにして自信を失ったりすることがないように、記録を残してる感覚でしょうか。

ついでに無意識に我慢してる些細なストレスを炙り出せればお得だし、何より読者のみなさんが毎日すごく励ましてくれるので、元気が出ます。

「ボーヤ」が成長したら?

――育児をしていると大変なことが容赦なく次々に押し寄せてくるものですが、ダル子さんのマンガを読んでもツラい気持ちにはならず、温かい読後感があります。制作する上でどんなことを心がけていますか。

「父親」「母親」という言葉はあまり使わないようにしています。ただの呼称だけど、私にはズシッとくる響き。「らしさ」を無意識に背負う気がするし、今時、流行らないので。

あとは幸せの中で格闘してる構図から外れないように気をつけてます。「子どもがいて不幸そう」と読まれてしまうことが一番、怖い。幸せの中で幸せのために格闘しています。

――読者の感想を追っていると、ダル子さんが悩みながら、ダメなときはダメだとオープンにして、ボーヤに向き合う姿に励まされている人、肩の力が抜けたという人がたくさんいました。育児をする上で心がけていることはありますか。

自分の頭だけで考えるとロクなことにならないので、「わからない」と「助けて」の声量だけは誰にも負けない気持ちでいます。あとは育児に限らず、その時その瞬間に精一杯がんばるしかない。

ボーヤは「大人になるのは楽しい!」ってことを感じて育ってくれたら十分です。

――「仕事復帰」や「保育園見学」などのテーマも、当事者目線で描かれています。ダル子さんが育児をしていて「社会がもっとこうなったらいいのに」と思うことはありますか。

シンプルに、気軽な社会になってほしいですね。

子どもを持つこと、新しいチャレンジをすること、趣味を広げること。気軽に全部選択できる、誰も何も諦めることのない世の中ならいいと思います。

大勢の人が結構そう思ってると思うんですけど。未来は明るいと信じる姿勢を見せるのは、子育てで一番、大切だと思ってます。

――ダル子さんは身の回りに育児に悩む人がいたら、どんな言葉をかけたいですか。

「もうドーナツたべよ」。

――そのままタイトルになりそうです! ちなみに、将来ボーヤにこのマンガを読ませる日を想像することはありますか。

悩んでます! 積極的に読ませようとは思わないけど、自然に目に入るでしょうから。反応を見ながらやっていこうと思ってます。

あくまで親を主人公としてるので、ボーヤに手がかからなくなっていけば出番は減っていくかもしれません。想像しただけで寂しい!

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