「サンタに何もらった?」「もらってない」「サンタ来たことないの!?」。お散歩中の保育園児たちの会話を聞いて、男性が感じたことは……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、クリスマスプレゼントにまつわるエピソードです。

もらえるやつと、もらえないやつがいる
ある日、買い物帰りの男性が見かけたのは、保育園の子どもたちのお散歩でした。
「サンタに変身ベルトもらったんだー」「おれはすみっこハウス」「リナはプリキュアだった」
口々に子どもたちがクリスマスプレゼントを披露し合っています。
「みーくんは何もらった?」。そう聞かれた男の子は、「もらってない」と答えます。
男の子が「サンタ来たことない」と伝えると、子どもたちは「みーくんサンタ来たことないんだって」「え~!?ないの!一回も!?」と驚きます。
その様子を寂しそうに見守っていた男性。家に帰って、「クリスマスプレゼントも、学費も伴侶も、もらえるやつともらえないやつがいるんだよな……」とひとりごちます。
年末年始の夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵に、その経緯を話して「でも大丈夫だよ 全ての問題は年を取れば相対的に小さくなる」と語りかけた男性。
遠藤は「きっといい大人になる」と笑顔で答えたのでした。
子どもは全員、プレゼントをもらえてほしい
作者の深谷かほるさんは、「よく『良い子のところには、サンタが来るよ』と、親が子どもに諭すといいますよね。近頃では、『何歳まで子どもにサンタを信じさせておくべきか』といった議論もあるようです」と話します。
しかし深谷さんは、自身の子どもにサンタを信じさせようとはしなかったそうです。
「クリスマスプレゼントをもらえない子どももいるのに、はしゃいでいいのか。そんな気持ちがありました」と振り返ります。
「でも、歳をとった今になると、人間の不平等ポイントは無限にあり、ひっくり返すチャンスも無限にあるので、はしゃげる時には、はしゃいでいいんだという気もします」と言います。
「でもやっぱり、子どもは全員、プレゼントをもらえてほしいです」

猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、単行本9巻(講談社)を2022年11月22日に発売。講談社「コミックDAYS 編集部ブログ」で月・金曜夜に「夜廻り猫」を、講談社「コクリコ」で木曜に夜廻り猫スピンオフ「居酒屋ワカル」を連載中。