ネットの話題
かわいすぎる!動物の和菓子 悩んだ末に伝統の枠を超えた職人の思い
木箱のふたを開けると、和菓子でできたインコがずらり。まるいフォルムとパステルカラーがかわいらしい、上生菓子を撮影した動画が注目を集めました。ツイッターに投稿したのは、栃木県の和菓子職人です。伝統の枠を超えて、新しい動物モチーフの和菓子を作る思いを聞きました。
いいインコの日なので木箱いっぱいに鳥の和菓子を詰め込みました🍡 pic.twitter.com/r2Nv0B32oE
— 和菓子職人 三宅 正晃 (@beniyamiyake) November 14, 2022
動画を投稿したのは、栃木県真岡市の和菓子店「御菓子司 紅谷三宅」の三宅正晃さん(31)です。30万回以上再生され、「かわいすぎて食べられない」というコメントも寄せられました。
インコは、白餡(しろあん)につなぎの山芋を加えて練った「練り切り」を手で成形して作っています。ほかにも、犬やネコ、ハリネズミ、ペンギンなどを作ってきました。丸く上品なフォルムを基本にしつつ、動物の特徴を残すよう、デザインを考えます。
三宅さんは高校卒業後に東京都青梅市にある和菓子店で修業し、23歳のときに父が創業した実家の和菓子店に戻りました。両親と店の菓子を作る一方で、職人の技術向上を目指す団体のコンテストでグランプリに選ばれるなど、技を磨いてきました。
店に立って感じたのは、一般消費者にとって和菓子が縁遠いものになってしまっている現実でした。「茶道をたしなむ人は和菓子を買ってくださるのですが、一般の方はあまり手を伸ばさないんです」
和菓子には、生クリームやバターをたくさん使った濃厚な洋菓子とは違う、和菓子ならではのよさがある、と三宅さんは言います。
その日の気温や湿度にあわせて丹念に炊いた餡のなめらかさ。くどく感じさせない甘さ。そして、季節感。「和菓子のよさを知ってもらうには、食べてもらわないといけない。それにはまず、親しみを感じられるような見た目にしよう」
それから、かわいい動物モチーフを作り始めました。当初は伝統的な花鳥風月のモチーフ以外を作ることをためらう気持ちもあったと言います。
ですが、2018年から始めたツイッターやインスタグラムに画像を投稿すると、どんどんフォロワーが増え、いまは両方で9万人以上に。見た人や買ってくれた人が喜ぶ声が直接届き、「これでよかったんだ」と思うようになりました。
現在、オンラインと店舗の両方で販売していますが、店舗を訪れる人の半分以上が県外からです。
「和菓子は生活必需品じゃないかもしれないけれど、疲れたときに食べるとほっとする。ささいだけれど、生活を豊かにしてくれるものなんです。和菓子がこれからも受け継がれるように、伝統の技を大事にしながら新しい表現を探っていきたいです」
1/18枚