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連載

#3 親になる

1カ月健診で指摘〝おへその異常〟 治療は医師が「糸でくくって…」

1カ月健診で聞き慣れない「おへそ」の異常を指摘され……。※画像はイメージ
1カ月健診で聞き慣れない「おへそ」の異常を指摘され……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

生後2週目、自宅に帰った直後、ミルクの吐き戻しに鮮血が混じるも、かかりつけ医の診察と経過観察で事なきを得た子ども。今度は1カ月健診で「おへその異常」を指摘され――。当時の出来事を振り返りつつ、あらためて専門学会を取材しました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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「ご時世」だからこその気づき

我が子のミルクの吐き戻しに鮮血が混じってから1週間。頻ぱんだった吐き戻し自体が少なくなり、「茶色のカス」も見られなくなりました。

【参考】生後2週間の赤ちゃん、吐き戻しに「茶色いカス」 後に血も混じり…病院か様子見か 専門医に聞くポイント

ホッとすると共に、いよいよ本格的に始まったのが、「赤ちゃんのいる」生活です。

長引くコロナ禍で、私は今も、なるべく在宅勤務を続けています。そこで痛感しているのが、育児“参加”という言葉は生温く、率先して育児に取り組まないと、かえって仕事にならないということ。

例えば隣の部屋で子どもがふえふえと泣き出したとき。ギャン泣きになってしまえば、しばらく作業に手が着きません。まずは手を止めて現場に急行します。

おしゃぶりが落ちていないか、おむつが汚れていないかなど、原因があるものならひと通りチェックして対応。わからなければしばらく抱っこして、妻が起きていればバトンタッチも……。

コロナ禍以前、基本的に日中はいつも外に出ており、夜は会食や飲み会も多くありました。もし自分がライフスタイルを変えられていなかったら――育児には当事者として取り組まないとわからない苦労が多くあり、産褥期の妻にかかる負担を想像するとゾッとします。

その中でも大変なのが「沐浴」でした。うちの子どもはベビーバスの中で、あるいは出るときに突然、大きく身をよじったり手足をバタつかせることがあり、ワンオペだと溺れそう、落ちてしまいそうになって危険な場面も。

基本的に妻と二人で沐浴させていますが、これも在宅勤務中だから柔軟に対応できていることだとも言えます。

近年、首掛け式の浮輪を使用した際の赤ちゃんの事故が問題になっています。ワンオペ育児の便利グッズとして広がっていた面もあるようで、あらためて気をつけなければと思うと同時に、複数の目がある環境を保つことの難しさも身にしみます。

沐浴後はへその緒の周りの消毒。へその緒自体は帰宅から2週間ほど、生後3週の時期に気づいたら取れていました。その後も順調に経過し、問題なし……のつもりだったのですが、1カ月健診で思わぬ“異常”を指摘されることになりました。

「糸でくくって待つ」という治療

途中、徒歩圏内のかかりつけのクリニックへの通院があったものの、基本的には家から出ずに、それぞれ回復と成長に努めていた妻子。

そんな私たちにとって、1カ月健診は、初めて家族でする「おでかけ」になりました。というのも、母(妻)の健診時には産婦人科では子どもを預かれないとのことで、私の付き添いが事実上、必須だったのです。

仕事は休みを取って、子どもが生まれた病院に向かいます。ここでも「仕事が休めなかったらどうするんだろう」という疑問が生じました。

ベビーカーの取り回しもまだハラハラ。今回はタクシーではなく、移動に慣れるためにも、電車に乗ることにしました。最寄駅では「優先席にたどり着きやすいのはX番ドアからX号車」、乗換駅では「エレベーターはホームのあのあたり」と、今後必要になりそうなことをメモ。インフラを見る目も変わります。

苦労しながらも病院に到着。緊急帝王切開になった妻の経過は順調でした。そして、子どもの方を診察してくれたのは、出産後、分娩室に子どもと二人になったときに、診察に来てくれた小児科のお医者さんでした。

【参考】「お産は安全」と思い込み 一人になった分娩室 予防難しいトラブル 緊急帝王切開「10人に1人」の実際

まず問診、次に反射の検査。反射の検査は、自然な反射を得るために仕方のないことであるものの、やや勢いよく急に頭を下げるなどするため、親としてはちょっとドキドキします。

そして最後、体のチェックのときにお医者さんの手が止まったのが、「おへそ」のところでした。「あ、ここ」と指さします。

「ぷっくり盛り上がっていますよね。ここは本当は要らない部分で、取らないといけないんです。ほら、周りに血がにじんでいるでしょう。このあと処置しますから」

お医者さんによれば、これはへその緒の一部が赤ちゃん側に残ってしまう臍肉芽腫(さいにくげしゅ)という病気。うちの子の場合、治療は「糸でくくって自然と脱落するのを待つ」というものでした。

手先が器用でないと難しいそうで、若手のお医者さんたちも見学に訪れ、衆人環視の中で糸を操ります。一発で糸がかかると、「おお」と小さく歓声が。やや盛り上がったのがちょっと面白くもありました。

ただし、糸が外れてしまうこともあるので、このまま様子を見て、翌週にもう一度、通院とのこと。生まれた病院はやや遠く、電車の乗り換えもまだ大変なので、次も同席を申し出ましたが、「また仕事を休むのか」と、ややウッとはなりました。

小さな“異常”見つける心強い仕組み

この臍肉芽腫についてもっと知るために、日本小児外科学会に話を聞きました。同学会は公式サイトで、わかりやすく臍肉芽腫についての情報発信をしています。

【参考】小児外科で治療する病気​​ - 日本小児外科学会

同学会によれば、臍肉芽腫とは「へその緒が取れたあと、おへそが赤く盛り上がってじくじくしたり出血したりすること」。一般的には切除したり、硝酸銀で焼灼したりして治療するということです。

関連する病気に臍炎があります。臍炎とは「新生児期にへその緒が取れたあと、その傷口が感染し、おへそとその周りが赤くなって腫れる」赤ちゃんの病気。

この臍炎が悪化すると、炎症がお腹の中に拡がったり、菌が全身に回ったりして危険な状態になることもあり得ます。同学会は「早いうちに小児科や小児外科を受診してください」と発信しています。

ここで、新生児以降、乳幼児になっても臍肉芽腫や臍炎がなかなか治らないことがあります。この場合、単純な炎症ではなく、「尿膜管(出生前にあったおへそと膀胱とのつながり)遺残」、「卵黄のう管(おへそと腸のつながり)遺残」など深いところに原因があることもあり、手術が必要になるということです。

同学会は「おへそのじくじくや肉の盛り上がりがなかなか良くならないときは小児外科医にご相談ください」とも呼びかけています。

うちの子の場合、「しばらく様子見」ということでしたが、帰宅した日のうちに、もう糸ごと肉芽が脱落していました。その後は数日で跡が乾き、見知ったおへそに。翌週には問題なしと診断され、晴れて母子ともに健康に、新生児期を終えることができました。

聞き慣れない「臍肉芽腫」という病気。あらかじめ備えるといった類のものではないからこそ、「1カ月健診」のような仕組みでしっかり見つかるようになっているのは、心強い限りです。

子どもができて初めて知った、母子を守るこうしたシステムを当たり前と思わず、感謝しなければいけないと、今風にデザインされた「へその緒ケース」を選びながら考えたのでした。

【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。

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