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#143 ○○の世論

賛否分かれた「国葬」問題 岸田首相の説明、どれだけ納得できた?

「森友・加計」問題、「桜を見る会」では…世論調査を分析

日本武道館で行われた安倍晋三元首相の国葬=2022年9月27日、東京都千代田区、代表撮影
日本武道館で行われた安倍晋三元首相の国葬=2022年9月27日、東京都千代田区、代表撮影

目次

9月27日、安倍晋三元首相の国葬が実施されました。9月の朝日新聞社世論調査(電話)で反対が56%にのぼるなど、賛否が分かれるなかでの開催でした。岸田文雄首相は国会で実施理由を説明しましたが、どれだけ国民の「納得」を得られたのでしょうか。またこれまで世論調査部では、その時々の問題について首相の説明に納得したかどうか聞いています。歴代首相の説明はどのような人に響いたのか分析してみました。(朝日新聞記者・北見英城)

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岸田首相の説明「納得できない」64%

9月10日から11日に実施した朝日新聞社の世論調査で、安倍氏の国葬の賛否について尋ねました。

賛成38%に対して反対56%で、前回8月調査(27、28日実施)の賛成41%、反対50%と比べて反対が増えました。

 

岸田氏は国会などで、安倍氏の国葬の意義について、

① 首相在任期間が憲政史上最長の8年8カ月
② 経済や外交で実績を残した
③ 各国が弔意を表明
④ 選挙運動中の非業の死

といった4点を強調してきました。

そうした岸田氏の説明について納得できるか聞いたところ、「納得できる」23%に対して、「納得できない」64%でした。岸田氏の説明が十分に国民の納得を得られたとは言えなさそうです。

安倍氏の「説明」については…?

では、岸田氏以外の最近の首相の説明についてはどうでしょう。まず当の安倍氏の「説明」について。8年8カ月に及んだ政権のなかで、問題視されたものの一つが森友・加計問題です。

森友学園をめぐる国有地の売却問題、加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、国会などで連日、安倍氏が説明を繰り返しました。

それらの問題をまとめて聞いたのが2018年9月調査でした。安倍氏の「これまでの説明」について納得しているかどうかを聞いています。

結果は「納得している」14%、「納得していない」76%でした。

男女別でみると、「納得している」男性16%、女性11%、「納得していない」男性76%、女性77%と、特に「納得している」と答えた男女で差がみられました。

年代別でみると、「納得していない」では18~29歳で低く、50~60代で高い傾向がみられました。

 

20年2月の調査では、桜を見る会をめぐる問題についても聞きました。

「国会での安倍首相の説明」(当時)について尋ねたところ、「納得できる」12%、「納得できない」71%でした。

男女別では、「納得できる」について男性15%、女性9%と、森友・加計問題と同様、差がみられました。年代別では、「納得できない」は30代以下で低く、60代で高い傾向がみられました。

 

若い世代で「納得できない」低い傾向

これまでの傾向をまとめると、

① 男女別でみると全体に比べて男性が「納得」する傾向が強く、女性が弱い傾向にある
② 「納得していない」あるいは「納得できない」は若い世代で弱く、50代、60代を中心に強い傾向がある

と言えます。

こうした傾向は菅義偉首相に代わってからも続きました。日本学術会議が推薦した学者の一部を任命しなかった問題について20年11月に聞きました。

結果は「納得できる」22%、「納得できない」49%です。

これまでの傾向と同様に、「納得できる」と答えた男性は25%に対し、女性は18%と差がみられました。また、「納得できない」についても、30代以下で低く、50代以上で高い傾向にあります。

 

「国葬」では男女差がほとんどなし

これまでのこうした傾向は、今回の「国葬」にまつわる岸田氏の説明でも同様だったのでしょうか。冒頭で紹介した9月調査の詳細をみてみましょう。

男女別でみると、「納得できる」は男性25%、女性22%。「納得できない」男性62%、女性66%と、あまり大きな差はみられませんでした。
少なくとも、これまでの森友・加計、桜などの問題ではなかった傾向です。

衆院の議院運営委員会で、立憲民主党の泉健太代表の質問に答弁する岸田文雄首相=2022年9月8日、国会内、上田幸一撮影
衆院の議院運営委員会で、立憲民主党の泉健太代表の質問に答弁する岸田文雄首相=2022年9月8日、国会内、上田幸一撮影

なお、「国葬」をめぐる賛否では「賛成」の男性は43%に対して、女性は32%。「反対」は男性51%に対して、女性60%と差がでています。あくまで首相の説明に対する「納得」について、男女で差がみられなくなっていると言えそうです。

「納得」について年代別でも比べてみましょう。ここでも「納得できない」が40代以下で低く、60代以上で高い傾向がみられました。これまでの傾向と一致しています。

 

自民支持層と全体との「乖離」

加えて、今回の調査結果で特徴的なのが自民支持層の数字の表れ方です。

これまでの問題については、全体よりも「納得」が強く、「納得していない」「納得できない」が弱いものの、「納得していない」「納得できない」が「納得」を大きく上回っていました。

 

森友・加計(18年9月調査)では「納得している」自民支持層は23%、「納得していない」は66%。
桜を見る会(20年2月)では「納得」23%、「納得できない」58%。
日本学術会議(20年11月)では「納得」32%、「納得できない」42%です。

ただ、「国葬」(今年9月)は異なりました。「納得」42%、「納得できない」49%で、これまでに比べて最も差が小さかったのです。

今回の国葬が日本社会の分断を表しているという見方がありますが、全体と自民支持層との「乖離」はその一つの表れなのかもしれません。

国葬を終えてもなお、求められる「説明」

9月の調査で、岸田政権の支持率は41%で、不支持率47%が政権発足後初めて上回りました。物価高や旧統一教会を巡る問題への対応に加えて、この「国葬」も押し下げ要因になったことは間違いありません。

10月3日に召集される予定の臨時国会でも、改めて国民の納得が得られる説明をできるかどうかが支持率回復のカギを握ると言えそうです。

私事ですが、9月末をもって世論調査部を離れることとなりました。ロシアによるウクライナ侵攻、参院選、そして安倍元首相の銃撃事件に端を発する旧統一教会問題……。
そのときどきの問題を、世論がどのようにとらえているのか毎回興味深く拝見していました。調査にご協力をいただいた皆様、誠にありがとうございました。

今後も、政権が支持率回復に向けてどのような手を打ってくるのか、それをどう世論が受け止めるのか。担当からは離れますが、そのときどきの調査結果に注目し続けたいと思います。

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