連載
#142 ○○の世論
岸田内閣の支持率、急落47% 国葬・旧統一教会やコロナ対応が響く
不支持率は39%に急増、世論調査を分析
8月末の朝日新聞の全国世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は47%(前回7月調査は57%)に急落しました。不支持率は39%(同25%)に跳ね上がり、内閣発足以来最高だった2月の回答の30%を超えました。
内閣を直撃したのは、賛否が割れる国葬、後手後手にまわった宗教団体への対応。国民生活に直結する新型コロナウイルスや物価高への対応も、ボディーブローのように効いています。
そして夏の終わりに表明した原発新増設はどう受け止められたのでしょうか。世論調査をじっくり読み解きます。(朝日新聞記者・君島浩)
8月27、28日に実施した朝日新聞の全国世論調査(電話)で、9月27日に実施される安倍晋三元首相の国葬について尋ねると、「賛成」は41%で、「反対」は50%でした。
男性は賛成45%、反対47%とほぼ並んだのに対し、女性は賛成37%、反対53%と差がありました。
年代別でも違いがあり、18~29歳は64%:30%と賛成が倍以上だったのに対し、60代以上では逆に3割:6割と反対が倍になりました。
各メディアの調査は方法も質問文も異なるので、単純な比較はできないものの、岸田首相が国葬の実施を表明した7月の賛否の割合は、おおむね5割:4割という報道もありました。
しかし、8月に入ると、次第に反対が増える傾向がみられます。
朝日新聞の調査でも反対が多かったものの、圧倒的多数というわけではありません。
ただ、「国葬に反対」と答えた人の内閣支持率は29%と3割を切り、不支持率は60%に達しています。支持率低下に影響したのは間違いありません。
政治家と宗教団体の「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」を巡る問題への岸田首相の対応も政権に打撃を与えました。
対応を「評価する」人は21%で、「評価しない」は3倍以上の65%を占めました。「評価しない」人の内閣支持率は35%で、不支持率は53%にのぼります。
複数の政治家が、旧統一教会の関連団体のイベントに出席したり、選挙の支援を受けたりしていたことが連日メディアをにぎわせています。
特に自民党は、萩生田光一政調会長や閣僚らと教団との接点が問題になり、岸田首相は「自民党は、社会的に問題が指摘されている団体との関係を持たない」と表明せざるを得なくなりました。
今回の世論調査で、「政治家は旧統一教会との関係を断ち切るべきかどうか」を尋ねたところ、「断ち切るべきだ」は82%に達し、「その必要はない」の12%を引き離しました。
それでは、「自民党の政治家が、旧統一教会との関係を断ち切れると思うかどうか」と聞いたところ、「断ち切れる」は16%にとどまり、「断ち切れない」は76%を占めました。
岸田首相は、党として国会議員と教団との関係を調査する考えは持っていませんでしたが、批判に耐えきれず、急きょ8月26日になって方針を転換。
党として実態を把握するための通知を出しました。しかし、こうした後手後手の対応は国民にすっかり見透かされているようです。
朝日新聞の世論調査では、新型コロナウイルスが蔓延してからの2年半、ほとんど毎回、政府の対応の評価を問う質問をしています。
今回の調査では「評価する」は45%(前回7月調査は57%)で、「評価しない」は49%(同34%)でした。
「評価しない」は岸田内閣では過去最高だった2月の44%を上回りました。「評価しない」が「評価する」を上回ったのも初めてです。
第7波への対応に不満を抱く人たちの岸田内閣への批判は強く、「評価しない」人の内閣支持率は30%で、不支持率は倍近い58%でした。
これまで内閣支持率の動向は、政府のコロナ対応評価とリンクしていると見られてきましたが、今回もその通りになりました。
一方、ロシアのウクライナ侵攻などを受けた物価高も収まる気配がありません。
物価高に対する岸田首相の対応については、「評価する」は21%で、「評価しない」は67%にのぼりました。
5月の調査でも、評価する23%・評価しない66%で、3人に2人が「評価しない」と答える状況は定着しつつあります。
さらに調査を詳しく見ると、内閣を見る目は明らかに厳しくなっています。
5月に「評価しない」と回答した人の内閣支持率は52%と5割を超え、不支持率は35%だったのに、8月に「評価しない」と述べた人の支持率は38%に低下、不支持率は50%に上昇しています。
野党から「無策無敵」と揶揄されることもある岸田首相が、前のめりになったのは、最近では安倍元首相の国葬の実施と原子力政策転換の決断でした。
首相は8月24日に突然、原発の新増設や建て替え(リプレース)について検討を進める考えを明らかにしました。
今回の調査では、原発を新設したり、増設したりすることに「賛成」と答えた人は34%で、「反対」の58%が上回りました。
電気料金が値上がりし、節電要請も出された今夏なら国民の理解を得やすい、と首相が思ったのかどうか分かりませんが、もしそうだとしたら、裏目に出た形になりました。
ただし、「反対」と答えた人の内閣支持率は46%で、不支持率は45%。今回の調査では内閣支持率に大きな影響を与えたとは言えません。
しかし、この問題を巡っては、男女差があり、男性は賛成が44%、反対が50%と賛否が接近しているのに対し、女性は賛成が24%で、反対は66%と倍以上を占めました。
岸田内閣の特徴の一つは、女性の支持率が比較的高めなことです。今回の調査でも男性の支持率は46%で、女性の支持率は48%でした。
その女性の支持が離れていくようだと、岸田政権にも黄信号がともり始めます。
物価高への首相の対応を「評価しない」と答えた人の内閣支持率が低下したのと同じような変化が、原発新増設を巡って生じる可能性もないわけではありません。
今回の調査後の8月31日、岸田首相は各メディアが報じた支持率低下について「旧統一教会、国葬の問題などがあり、政治の信頼が揺らぎつつある、こうしたことが大きい」と言及。
国葬については「初心に帰って、丁寧な説明に全力を尽くす」、旧統一教会問題では「過去を反省し、しがらみを捨て、関係を断つよう徹底する」と述べました。
政権を再浮上させられるかどうかは、まず、この約束を果たせるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
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