話題
「運転見合わせ」って通じる?「やさしい日本語」車内放送始めました
常磐線快速電車(品川~取手)間
事故や悪天候で突然止まる電車。「ただいま、運転を見合わせています」。この車内放送に、誰でも分かりやすい「やさしい日本語」を導入する、と宣言した電車が話題です。
こんな駅のポスターが、SNSで話題になりました。
ポスターが掲示されていたのは、常磐線快速電車(品川~取手)間の駅です。
そして、「やさしい日本語への言い換え」の例として、二つの文言が並びました。
確かに、やさしい日本語の方がシンプルに、状況が伝わる気がします。
「強風」や「見合わせる」という日常会話ではあまり使わない言葉を言い換えるようです。
「やさしい日本語」を導入したJR東日本東京支社の我孫子運輸区に問い合わせました。
回答してくれたのは車掌の伊藤暉(ひかり)さんです。
車内放送を始めたのは、7月のこと。「やさしい日本語」の車内放送を発案したのは、常磐(快速)線を担当している乗務員だったそうです。
「輸送障害が発生したときに、1人でも多くのお客様に、正確で分かりやすい情報を提供したいと、取り組みました」
「やさしい日本語」が生まれたのは、外国人も多く被災した1995年の阪神・淡路大震災でした。緊急時に日本語や英語だけでは十分に情報が伝わりにくい人がいることが分かり、簡潔に情報を伝えることの必要性が認識されるようになりました。
伝えるには、中国語や韓国語など多言語に訳すことも考えられますが、日本で暮らす外国人の国籍は多様化していて、対応できない言語の方が多くなってしまいます。常磐(快速)線の利用者に多いのはアジア系の方々だそうです。
そこでJR側は実際に外国人留学生に話を聞いてみたといいます。
「留学生にインタビューすると、『日本語が少しわかる』人であれば、『英語よりも簡単な日本語の方が伝わる』ということがわかりました」
さっそく車内放送の「文案」を作りました。
文案を留学生にも見てもらい、より分かりやすい表現を探っていったと言います。
留学生たちの意見を踏まえて作った「言い換え」は、ほかにこんなものがあるそうです。
【ホーム上の非常停止ボタンが扱われた時】
通常の放送「お客さまにお知らせいたします。只今、○○駅にて駅の非常ボタンが押されているため、現在安全の確認を行っています。安全の確認が取れるまで今しばらくお待ちください。」「お待たせいたしました。安全の確認が取れましたため、まもなく運転を再開します。」
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やさしい日本語「急に止まって申し訳ございません。お客さまにお知らせします」
「誰かが駅の SOS ボタンを押したので、止まっています。ストップしています」
「電車の外は危ないです。電車から出ないでください」
「まもなく電車が動きます」
やさしい日本語では、シンプルに、何をすべきか(してはいけないか)が伝わりやすくなっているようです。「安全の確認が取れましたため」というのも、聞き慣れていてスルーしていましたが、よくよく考えれば、「安全だから動く」んだから、あえて入れる必要がないのかもしれません。
車掌さんは、対応できるのでしょうか?
「やさしい日本語」の放送は、事前に我孫子運輸区の車掌が録音しているそうです。遅れや運転見合わせなどの「輸送障害」が発生したときに、その録音が放送されます。
車掌からも「お客さまのサービス向上につながる取り組み」とポジティブな意見が多いそうです。
やさしい日本語というと、「外国人向け」の日本語のように思われがちですが、端的に分かりやすく情報を伝えるのは、誰にとっても大切なことです。
「お客様の反響を見て、今後は他の路線への展開も検討します。放送内容もお客様のご意見を踏まえて修正していきたいと思います」
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