連載
#72 夜廻り猫
動物の犠牲の上で…「あとは好きにさせてやりたい」 マンガ夜廻り猫
飼い猫2匹が、あちこちでツメを研ぎ、トイレをするのでぼろぼろの部屋。でも、そこに住む男性は「あとは好きにさせてやりたい」と話します。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、研究に使われた動物を引き取った男性のエピソードです。
きょうも夜の街を夜周り中の、猫の遠藤平蔵。心の涙の匂いと、悪臭を感じ取ります。「むっ……あの家か……」
カーテンやソファはぼろぼろ。あちこち猫の排泄物だらけの部屋を、男性が掃除をしながら「うち猫2匹いるんで」と苦笑します。
遠藤が「10匹いたってこうはならないものですぞ」と聞くと、男性はこう言いました。
「この2匹は10年前、僕が院生だったときに実験に使ったんだ その後、助けて引き取った」
「今の人間の生活は、たくさんの動物の犠牲のおかげ」「この2匹には、あとは好きにさせてやりたい」と語ります。
とはいえ、2匹の気ままさに、男性はかなり苦労しているようです。遠藤は猫たちに「せめてトイレは覚えてくれんか」「飼い主殿が命まで縮めたらどうする あんな人そうそういないぞ」と諭します。
後日、男性宅を訪れた遠藤たち。見違えるようにきれいになった部屋に、遠藤は「おっ!」と喜びの声をあげます。
男性は「トイレもツメ研ぎも覚えてくれたんだ…!」と喜びつつも「気をつかいすぎて命を縮めないといいんだけど……」と心配します。遠藤はすかさず「いや、それ普通だから」と笑うのでした。
作者の深谷さんは「この話は知人の、ほぼ実話です」と話します。
猫たちを甘やかし、家がボロボロになっても不平も言わないお兄さん。
「話を聞いたときは笑ったのですが、よく考えると笑いごとではない気がします」と振り返ります。
「社会には、薬や洗剤、化粧品など、動物実験なしには成り立ってこなかったものがたくさんあり、人のために働き通す役割を負う動物もいます。
軍馬や軍用犬といった、人間が起こす戦争のために使われる動物もいますよね。ウクライナで表彰された爆発物探知犬のパトロン君は、生きて除隊できるでしょうか」
近頃、イルカショーを問題視した記事も見たという深谷さん。
「私自身、何度も楽しんだイルカショーです。しかしそれも、従来のやり方で良いかどうか、再考し変えていく責任が、人間にはあると思います」
1/162枚