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#139 ○○の世論

参院選1人区、勝敗を分けたのは…対照的な結果の2選挙区を分析

改選前から議席数を減らした立憲民主党。参院選投開票日の夜、会見する泉健太代表=2022年7月10日、東京都千代田区、諫山卓弥撮影
改選前から議席数を減らした立憲民主党。参院選投開票日の夜、会見する泉健太代表=2022年7月10日、東京都千代田区、諫山卓弥撮影 出典: 朝日新聞

目次

10日に投開票された参院選で、立憲民主党は改選前から議席数を減らしました。勝敗のカギを握ったのが、全国32の1人区です。今回改選を迎えた現職が当選した2016年は、野党系が11勝したのに対し、今回はわずか4勝。野党間で候補者の一本化が十分にできなかったことも大きいですが、出口調査をひもとくと「他力」に左右されがちな選挙区事情も透けてきます。対照的な結果となった山梨と、お隣の長野を比べて分析してみました。(朝日新聞記者・北見英城)

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一本化でも分かれた明暗

「このような結果になってしまい心からおわび申し上げます」

山梨選挙区から立候補した立憲現職の宮沢由佳氏の敗戦を報じる朝日新聞山梨県版の記事を、筆者は感慨深く読みました。

6年前、宮沢氏が民進党から参院選に初めて挑戦した際、甲府総局員として取材に臨んでいたためです。

宮沢氏は、輿石東・元参院副議長の後継として立候補しました。共産党も候補予定者をおろし、野党統一候補として選挙戦を争った結果、自民党新顔の元県議に2万票余りの差をつけて勝利しました。

自民新顔の永井学氏の当選確実の知らせに「全て私の責任」と語る宮沢由佳氏=甲府市高畑2丁目
自民新顔の永井学氏の当選確実の知らせに「全て私の責任」と語る宮沢由佳氏=甲府市高畑2丁目 出典: 朝日新聞

そんな選挙戦の取材をする中で、何かと意識したのが隣県・長野選挙区の情勢です。

立憲現職の杉尾秀哉氏は、16年に北沢俊美・元防衛相の後継として初めて立候補しました。定数が減り、1人区となったことから自民現職との戦いを強いられましたが、7万4千票差で勝ち抜きました。

両県とも民主党政権で要職を務めた大物議員の「後継」候補であることに加え、教職員組合の組織が厚い山梨、羽田孜元首相を誕生させ「民主王国」と言われた長野と、何かと共通点があったからです。

当選確実の一報を受けて支援者らと万歳をする杉尾秀哉氏(中央)=長野市
当選確実の一報を受けて支援者らと万歳をする杉尾秀哉氏(中央)=長野市 出典: 朝日新聞

今回、宮沢、杉尾両氏とも「2期目」をかけて選挙戦に臨みました。しかも、両県とも16年に続き、立憲と共産が候補者調整して「一本化」した県です。

しかし、結果は宮沢氏が自民新顔に2万票差をつけられて敗退。一方、杉尾氏は5万7千票差をつけて勝利しました。二人の勝敗を分けたものはなんだったのでしょうか。

自民支持層からも票を集めた杉尾氏

朝日新聞社などが10日、行った出口調査の結果をみてみましょう。

野党支持層については、16年は民進支持層、今回は立憲支持層を比べています。

 

杉尾氏は今回、立憲支持層の93%をまとめました。これは16年に民進支持層を固めたのと同じ割合です。

無党派層は61%から51%に減らしていますが、これは16年と異なり、維新新顔が立候補していたことなどが影響しているとみられます。

ここで注目すべきは自民支持層の動きです。自民候補は16年、87%を固めていますが、今回は68%にとどまっています。

対して、杉尾氏は16年よりも自民支持層に食い込む形となっています。従来の支持基盤を押さえつつ、自民支持層に支持を広げたことが勝利につながったと言えそうです。

宮沢氏は「他力」働かずに敗北?

対して、山梨選挙区はどうでしょう。

 

宮沢氏は16年、民進支持層の88%を固めていました。今回、立憲支持層の95%を固め、より支持基盤を厚くしたと言えます。

共産支持層も16年の78%から今回82%と浸透しました。無党派層も57%で、16年の45%よりも増やしました。数字を一見するだけだと、どうして敗れたのか分かりません。

そこで、自民候補の伸びに注目しました。自民候補は16年、自民支持層からの得票が71%にとどまっているのに対し、今回は80%です。宮沢氏は16年の14%に対して、今回も16%とほとんど変わりはありません。

山梨の保守層は、2005年の「郵政選挙」以来、郵政民営化に反対して自民を離党した故堀内光雄・元総務会長に近い議員と、「刺客」として擁立された長崎幸太郎氏(現・山梨県知事)に近い勢力とで覇権争いを続けてきました。

16年に立候補した元県議は、長崎氏に近いとされてきました。反対勢力の「受け皿」となったのではないかと言われていたのが、元参院議員の無所属候補でした。

16年の出口をみてみると、自民支持層の13%がその無所属候補に投票しています。宮沢氏は前回、自民の分裂によって「漁夫の利」を得たと言えそうです。

今回も、自民県連の候補者擁立過程で争いがありました。ただ、結果をみると「受け皿」となる候補は出馬せず、自民支持層の8割が自民候補に投票しています。宮沢氏はいわば、16年に「他力」で当選したものの、今回までに、「自力」を十分にはつけられなかったと言えそうです。

杉尾氏、次回は……

それでは、杉尾氏は今回、「自力」で勝利したのでしょうか。

もちろん、自民支持層に16年よりも浸透しており、その成果があらわれていると言えそうです。

山梨も長野も、野党勢力に地盤はあるとはいえ、出口調査の結果をみると、投票に行った人のうち4~5割は自民支持層。ここに一定程度、浸透しない限り、勝利はみえてこないためです。

ただ、気をつけなくてはいけないのは16年と異なり、今回は長野選挙区に維新新顔が擁立されていたことです。出口調査をみると、自民支持層の9%から得票しています。

また、投開票日の直前には自民新顔のスキャンダルも週刊誌で報じられました。16年の宮沢氏と同様に「他力」、あるいは自民新顔の「敵失」が働いた可能性も完全には否定できません。

次につなげられるかは、杉尾氏が今後、自民支持層にさらに浸透できるかにかかっていそうです。

今回、野党は1人区の選挙区で4勝にとどまるという厳しい結果となりました。事前の与野党関係者の感触では野党に「有利」とされていた地域でも、接戦となったり、現職が落選したりしています。

支持基盤を固めつつ、自民支持層にも浸透する。そんな「自力」をそれぞれの候補者がつけることが、野党には求められていると言えそうです。

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