連載
#71 夜廻り猫
「親に叩かれてしつけられていないと…」教師の一言 マンガ夜廻り猫
「親に叩かれたことが無いやつ、いるか? いたら手を挙げろ」。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、50年ほど前の自身の体験を描きました。あのとき「なんてことを言うんだ」と怒れなかった……と振り返ります。
1976年の中学校の授業中、先生が、唐突に言い出しました。
「この中で、親に叩かれたことが無いやつ、いるか? いたら手を挙げろ」
二人ほどが手を挙げましたが、すると先生が言ったのです。
「……それは、ろくな人間に、ならない」
「親にたたかれてしつけられていないようでは、ろくな人間にならないから覚えとけ」
マンガの作者の深谷さんは、「そんなこと言っちゃいけないと思います!」と心で叫びながら、言えなかったといいます。
それから約50年後。ニュースでも「しつけのためにたたいた」という言葉を見かけ、子どもへの暴力はなくなっていません。
夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵は、子猫の重郎をやさしく抱き留めながら、「小さい者はなめるほどかわいがりたい」と言います。深谷さんも「それがいい それがいい」と応じるのでした。
作者の深谷さんは、「私が子どもの頃は、親や夫、教師による暴力が普通にあった気がします」と振り返ります。
「内閣総理大臣の佐藤栄作氏の妻が「殴られた」と語ったことが、海外で大問題になったこともありました」
そんなことを見聞きして育ち、「暴力」は大嫌いになったといいます。
「暴力で勝ってもいい関係は生まれません。児童虐待の事件の報道からは、加害者も虐待されて育った、子どものかわいがり方を知らない人なのだろうと想像します」
そして、いまだに「しつけのために殴った」というコメントも報道されますが、「しつけに暴力は逆効果」と指摘します。
「元バレーボール全日本代表の益子直美さんが「監督が怒ってはいけない」大会を始めたそうですね。すばらしいことです。
殴る、怒鳴る、脅す……。そんなことで人を動かさなくとも、先達は〝楽しさ〟を教えてやれるはず。生きること自体、そうできたらいいなぁと思います」
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