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〝道場破りの猛者〟の藝大生、入学式に看板持参した「その後」も斬新

藝大の入学式に看板を持参し〝道場破りの猛者〟〝天才性か!〟と話題を集めた新入生が、この春に登場しました。その後を取材すると、本物の看板(右)を前に日比野克彦学長(右)からインタビューを受けるなど「公式」とも共演。梅雨の時期にぴったりの雨と傘をテーマにした斬新な新作も発表するなど、活躍を続けていました
藝大の入学式に看板を持参し〝道場破りの猛者〟〝天才性か!〟と話題を集めた新入生が、この春に登場しました。その後を取材すると、本物の看板(右)を前に日比野克彦学長(右)からインタビューを受けるなど「公式」とも共演。梅雨の時期にぴったりの雨と傘をテーマにした斬新な新作も発表するなど、活躍を続けていました 出典: 菅野湧己さんのツイッター

目次

藝大の入学式に看板を持参し〝道場破りの猛者〟〝天才性か!〟と話題を集めた新入生が、この春に登場しました。その後を取材すると、本物の看板を前に学長からインタビューを受けるなど「公式」とも共演。梅雨の時期にぴったりの雨と傘をテーマにした斬新な新作も発表するなど、活躍を続けていました。

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「これが天才性か」

〝道場破りの猛者〟は、菅野湧己さん @wakumiiii_。この春に東京藝術大学美術学部に入学し、「先端芸術表現科」に所属しています。

注目を浴びたのは、4月5日のツイートです。「東京藝術大学 入学式」「入学式の看板作って持って行きました」という文言とともに、3枚の写真を投稿しました。

アイデアやうりふたつの看板に、「これが天才性か」「入学式でやるの猛者すぎる」「道場破り感……ハンパねぇ!」といったコメントが並びました。「いいね」は22万件を超えています。

すべてが絶賛

「門の前には、入学式の看板が1つだけ置いてあります。そのため、毎年長蛇の列ができて、写真を撮るのを諦める人もいます」と菅野さんは看板制作の理由を説明します。過去の入学式などの写真を調べた上で実際に藝大に行き、柱のレンガの数を参考に数値を割り出しています。

そうした意図や制作背景も称賛されました。

看板は、電車での持ち運びを考えて三つ折りにできる仕様に。行き届いた設計に「三つ折りにしてるあたりが優しさ指数高めで好き」とツイッターで絶賛されました。

「藝大に入ったらやりたいことリスト」

〝道場破りの猛者〟の存在は複数のメディアが報道。日比野克彦学長の耳にも入ります。

大学では、YouTubeの「東京藝術大学公式チャンネル」で日比野学長のインタビュー動画をアップしています。「今気になるアートや社会、藝大のトピックをユニークに紹介」(大学広報)するチャンネルです。ここで菅野さんが取り上げられました。

大学を取材すると、「YouTube撮影の打ち合わせの際、菅野さんの入学式での看板のツイッターが話題となり、学長が以前、教授として所属していた美術学部先端芸術表現科の入学生だったこともあって興味を持ち、お話を伺うことになりました」と回答しました。

動画では、実際に菅野さんの看板を門に掲げるシーンがあります。そこで日比野学長もおもわず「おぉ」とうなっています。

看板の構想は1年以上前のこと。菅野さんは1浪して藝大に合格していますが、現役時代から考えていました。学長インタビューでは、看板制作も含めた「藝大に入ったらやりたいことリスト」をしたためていたことが明らかにされました。

リストについて聞くと、菅野さんは「受験のモチベーションアップにも繋がっていたと思います。具体的な作品プランを書き留めたり、個展を開きたい、とか藝大の中を探索したいとか、本当に軽い思いつきのようなことだったりが無数に書いてあります」と答えてくれました。

蛇口から雨水がでる傘

そんな菅野さんは5月17日、ツイッターの動画で「新作」を公表しました。

投稿文は「傘の持ち手を蛇口に変えてみました。降った雨水は傘の中を通って蛇口からでてきます」。動画では、蛇口をひねると、雨水が出てくる様子が見られます。

制作した意図について、菅野さんは「日本に住む私のように、水道の蛇口をひねると水が出てくるということが、どれほど恵まれた環境なのか。水道の蛇口をひねると飲み水が出てくる環境もあれば、雨水を蓄えなければ生活をすることができない人たちも世の中にはいます」と説明します。

そして、次のように続けます。「一方で普段私は、水を大量に使い捨てて、そして雨の日は傘で雨を避けようとしています」

水のありがたさと、使い捨て、避けてもいる事実。作品から、二律背反の現実が見て取れます。哲学の詰まった新作です。

校内で使い捨てられていた傘を材料にしたそう。着想を得た後、すぐに完成させました。制作期間は1日です。

アーティストとして

「幼い頃からものを作ることが好きで、将来はアートに携わって生きていきたいとぼんやりと思っていました」と菅野さんは話します。

所属の「先端芸術表現科」では、現代アートを学んでいます。

菅野さんは、現代アートを通じた感動があったと振り返ります。

「『これがアートなの?』と疑問に思ってしまうような作品が現代アートの中には多いように思いました。それと同時に、自分の中でのアートに触れるというハードルが下がっていくような気がしました。美術館に展示されているものだけが美術作品だと思っていた幼い頃の考え方が変わっていったんです」

看板も蛇口付きの傘も、身近な気づきを形にしています。

「卒業後は、アーティストとして活動していきたいです。というよりも、今も私はアーティストとして活動していると思っています。藝大は私がアーティストとして活動する上で深みを出すための場所だと思っています。多くの術や知識、考え方などをこの藝大で学んでいきたいと思います」

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