ネットの話題
味ぽんじゃない方のぽん酢、想定外の使われ方でブレーク
ミツカン社員もびっくりの活用法 きっかけは「誤発注」

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ミツカン社員もびっくりの活用法 きっかけは「誤発注」
ぽん酢といえば、ミツカンの「味ぽん」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、ミツカンには味ぽんではない「ぽん酢」という商品があります。味ぽんより先輩なのに、知名度も人気も味ぽんに抜かれてしまいました。一時は、売り上げで200倍もの差をつけられていたといいます。しかし今、想定外の使われ方でブレークしています。
ぽん酢が生まれたのは1960年。1964年発売の味ぽんの先輩にあたります。
ぽん酢は、かんきつ果汁に醸造酢を加えたシンプルな味わいです。鍋料理、湯豆腐、フライ、ギョーザなどに使います。ぽん酢にしょうゆを好みの量だけ加えるなどして自分好みのアレンジができる利点もあります。
味ぽんは、味付けぽん酢という位置づけで、ぽん酢にしょうゆや塩を加え、味を調えた商品です。
ぽん酢の後輩ながら、味がついていてそのまま使える味ぽんの手軽さが消費者の心をつかみました。売り上げは味ぽんがぽん酢を圧倒。味ぽんの売り上げは「ぽん酢の200倍」という時期もあったといいます。
ぽん酢のPRに、ミツカンの公式SNSが自ら「味ぽんじゃない方のぽん酢です」というフレーズを使っているほどです。
ただ、根強いファンがいる商品でもあったといいます。
ミツカンコミュニケーション本部の森田浩正さんは、「店頭からなくなると、必ずお問い合わせをいただく商品でした。約20年前の入社当初、『絶対に店頭から消してはならない』と先輩から言われていました」と振り返ります。
根強いファンを持ちながらも、スポットライトが当たることがなかったぽん酢がブレークしたきっかけは、「誤発注」でした。
2012年ごろ、都内の串カツ店の店長が、味ぽんを注文しようと思って、間違ってぽん酢を注文してしまいました。店長は届いたぽん酢の扱いに困って、試しにアルコールドリンクの割り材に使ってみたところ、これが当たりました。お酒をぽん酢と炭酸水で割る「ぽん酢サワー」が誕生しました。
誕生してからしばらくはミツカンの社員もぽん酢サワーの存在を知らなかったといいます。その店のお客さんが、自分が営んでいる飲食店でもぽん酢サワーを出すなど、人気はじわじわと広がっていました。
5年ほど前、評判を聞きつけたミツカンの若手社員がぽん酢サワーを出すお店に行って飲んでみて、そのおいしさに心を打たれたことをきっかけに、ぽん酢をお酒の割り材として売り出すプロジェクトが発足しました。
ぽん酢を長年扱ってきた社員の間でも、ぽん酢をお酒の割り材として使うという発想はなかったといいます。森田さんは「社内でもこんな使い方があるんだ、という受け止めでした。本当においしいの?そんな飲み方ってあるの?という声が圧倒的でした」。
ただ、実際に飲んでみると、かんきつ果汁と醸造酢のさわやかな味と香りがお酒と絶妙にマッチしていました。
プロジェクトのメンバーはSNSをチェックし、ぽん酢サワー関係の投稿にこまめに「いいね」を押しました。
飲食店への営業活動に加え、営業以外の社員がプライベートで行きつけのお店にグッズを配り、ぽん酢サワーをメニューに加えてもらうことを試みる草の根活動も展開しました。
さらに、Xでぽん酢サワーのアカウントを立ち上げ、「ぽん酢サワー広め隊」を結成。SNSでぽん酢サワーを広める同志を募り、参加してくれた人には抽選で広め隊の名刺などぽん酢サワーグッズをプレゼントしました。
グッズには、丸に「ぽ」の通称「まるぽ」の素朴なデザインをあしらいましたが、この素朴さが評判を呼び、いまではこのデザインのグラスやTシャツを通信販売しているほどです。
ぽん酢サワーのアカウントのフォロワーは7万人に達し、味ぽんの9.2万人に迫る勢いです。
ミツカンマーケティング本部の西井佳音さんは、ぽん酢サワーの魅力を、「自然な味わいをそのまま残していること」と語ります。
「塩を加えてもいないし、甘みも入っていません。すごくさっぱりした味わいで、どんな料理にも合います。唐揚げやフライドポテトなどの居酒屋メニューには特に合うと思います」
ぽん酢サワーの作り方は簡単です。基本的なレシピは、氷をいれたグラスに、ぽん酢とお酒と炭酸水を1対2対7で注ぎ、軽く混ぜるだけ。
焼酎をはじめ、ウォッカ、ジンなど多様なお酒と相性がいいのも強みです。
ウイスキーを割ったぽん酢サワーハイボール、ビールを割ったぽん酢サワービアカクテル、ラムを割ったぽん酢サワーモヒートなどメニューは無限に広がっていきます。もちろんノンアルコール飲料の割り材としても使えます。
現在は、日本全国で約2千件の飲食店がぽん酢サワーをメニューに加えているといいます。
ぽん酢サワーの登場以来、ぽん酢の売り上げは右肩上がりで、史上最高の売り上げを記録しているということです。
ぽん酢と味ぽんの売り上げ差は、当初の約200倍から約150倍に縮まってきています。
森田さんは最近、ぽん酢の人気に驚いたことがあったといいます。「個人のお客様が業務用の1.8リットルのぽん酢を買って下さっているとうかがい、とてもびっくりしました」
5月には三菱食品とコラボしたぽん酢サワー缶チューハイが発売され、人気はますます広がる勢いです。
西井さんはぽん酢サワーのおいしさを、もっと多くの人に知ってもらいたいと話します。「ぽん酢サワーのすっきりした味わいは無限大の可能性を持っていると思いますので、もっともっとたくさんの方にぽん酢サワーを味わっていただきたいし、たくさんのお店でメニューとしておいて頂けるよう頑張っていきたいです」
森田さんは、ぽん酢サワーの人気をぽん酢の魅力を知るきっかけにして欲しいと考えています。「ぽん酢サワーを飲みながら、ぽん酢をギョーザにかけて召し上がっていただいたというお話も聞きます。ぽん酢サワーの人気が、改めてぽん酢の魅力に気づいて頂けるきっかけになればとも思っています」
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