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#155 鈴木旭の芸人WATCH

「地下芸人」No1は誰?TOKYO MXが〝お笑い賞レース〟の理由

立ち上げの経緯や賞レース番組の強みなどについて聞きました

「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」のメインMC・ケンドーコバヤシさん=東京メトロポリタンテレビジョン「MXグランプリ」の公式サイトより
「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」のメインMC・ケンドーコバヤシさん=東京メトロポリタンテレビジョン「MXグランプリ」の公式サイトより

目次

TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン株式会社)が開局30周年を記念し、初の「お笑い賞レース」を開催している。出場するのは、普段メディアでほとんど見ることのない「地下芸人」たちだ。異色の賞レースはいかにして立ち上がったのか、番組のプロデューサーたちに、立ち上げの経緯や賞レース番組の強みなどについて聞いた。(ライター・鈴木旭)

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<『MXグランプリ~異端芸人決定戦~』>
TOKYO MXの開局30周年を記念し、2025年4月から7月まで月1回予選が放送されるお笑いコンテスト。出場資格は「先輩芸人または事務所マネージャーなどに推薦された芸人」で、月ごとに勝者を選出し、9月の決勝大会で異端芸人ナンバーワンを決定する。ケンドーコバヤシさんをMCに据え、審査員4名が出場芸人のネタを採点(各持ち点100点の400点満点)することに加えて、フリータイムで人間力も評価する。
 
【関連記事】テレビ慣れしてない・イジり方も不明…お笑いMXグランプリの魅力は

「MXっぽい」地下芸人賞レースに可能性

――開局30周年にあたり、お笑いコンテスト『MXグランプリ~異端芸人決定戦~』を立ち上げた経緯を教えてください。

番組総合プロデューサーの山本雅士さん(山本):1年ぐらい前、お笑いのコンテストを観に行くことになりました。

「お笑いJACKPOT」(出場条件は「芸人としての年収が100万円以下」のみ。優勝賞金100万円という異色の賞レース)という表参道のライブハウスで行われる大会で、内容はいわゆる“地下芸人(テレビなどのメディア露出がほとんどなく、小規模ライブをメインに活動する芸人)グランプリ”みたいなものです。

その主催者が、ずっとTOKYO MXと付き合いのあるスポンサーさんでした。

少し前には、マヂカルラブリーの野田クリスタルさんやチャンス大城さんのような“地下芸人ブーム”もありましたよね。実力はあるけどチャンスがない人や何かがかみ合わなくて表に出られない人って、たぶんたくさんいるじゃないですか。

そのコンテストを観ていたら、方向性がMXっぽいし、「これテレビでできるな」と思って。1週間後ぐらいにそのスポンサーさんに提案したら、「いいですね」とすぐに乗ってくれたんですよ。

たまたま同時期に開局30周年の企画募集があって、出してみたら会社としてもフィットしたんです。
 
「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」の6月ラウンドの審査員たち
「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」の6月ラウンドの審査員たち 出典: 東京メトロポリタンテレビジョン提供

「地下芸人」に変わる名称を

――番組の立ち上げにあたって話し合いが難航することはありませんでしたか?

山本:“地下芸人”に代わる表現を考えたことですかね。やっぱり芸能事務所にとっては「うちに地下の芸人なんかいない」って思いがあるじゃないですか。

当初は地下闘技場っぽい「THE UNDERGROUND」というタイトルにしたんですけど、売れっ子である1%以外の99%の芸人をどう総称するのかでずっと引っ掛かっていて。

去年の秋ぐらいから番組スタッフで週1回の定例会をやっているんですけど、タイトルだけで1、2カ月は進まない状況が続いたと思います。

最終的に『MXグランプリ』で落ち着いた感じです。そもそも「MX」に半地下っぽいニュアンスが包括されているということで(笑)、そこに「異端芸人決定戦」というわかりやすいサブタイトルをつけました。
 
番組総合プロデューサーの山本雅士さん=筆者撮影
番組総合プロデューサーの山本雅士さん=筆者撮影

キー局・準キー局のイメージだったが

――昨今、キー局が新たな賞レースを立ち上げています。『MXグランプリ』はそうした動きを見て開催したところもありますか?

プロデューサー・北澤史隆さん(以下、北澤):お笑いの賞レースって、キー局や準キー局しかやらないイメージだったんですけど、実は地方局でも開催しているのを見て「できるんだ」と思ってはいました。ただ、もういろんなジャンルの大会があるから、「なぜやるのか」「大会の意義をどこに持っていくか」というところは一番話し合った部分ではありますね。

山本:僕の中ではできるものなら参入したい気持ちがありました。漫才、コント、ピン芸人、女性芸人。その中の一流中の一流を決める大会はあったけど、地下芸人のナンバーワンはまだない。深夜番組とかではあったかもしれないけど、賞レースとしては空いていたんです。

シンプルに知らない芸人がずっと出る番組では、「そもそも視聴率とれるか?」となってやらなかっただけかもしれない(笑)。けど、「実は僕もやりたかったんです」という声をよく聞くんですよ。だから、「この方向で間違っていない」と思えたし、立ち上げにあたって協力はすごく得やすかったですね。
 
「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」4月ラウンドの審査員たち
「MXグランプリ~異端芸人決定戦~」4月ラウンドの審査員たち 出典: 東京メトロポリタンテレビジョン提供

賞レースは「視聴率がいい」

――そもそも、なぜテレビ局主催の賞レースが増えていると思いますか?

北澤:基本は視聴率がいいってことですよね。視聴者も生放送とか一番を決める番組が見たいのだと思います。あとは、予選や決勝後にYouTubeに上げている1個1個のネタがすごく再生される。ネタだったら、配信にも向いているってところがあるのではないでしょうか。

山本:「今の視聴者はライブ感を求めている」とよく言いますが、実際にライブやコンサートは人気なんですよ。「じゃあテレビ局に何ができる?」と考えると、スポーツは版権があって基本は中継だけになるし、音楽イベントもセットリストを作るだけになりつつある。そんな中で、やりやすいのがお笑いコンテストだったんじゃないかな。

北澤:自分たちでスターを発掘する意味合いもありますよね。あと、賞レースって回を重ねるごとに出場芸人も増えて、視聴率も安定して、規模も大きくなっていくじゃないですか。テレビって継続性があるほど広がって、宣伝にお金をかけなくても知ってもらえるようになる。

その意味で、賞レースは強いコンテンツになりやすいんだと思います。うまく育てていければスポンサーもつきやすくなるし、配信の再生も伸びるし、舞台裏に密着したドキュメンタリーも含めて広がっていきますからね。
 
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